WHO=国連世界保健機関のテドロス事務局長が会見で、一部の国がコロナワクチンのブースターショットを利用して子供を殺していると発言したとする内容がツイッター上で拡散した。しかし、このツイートの内容は誤りで、既に削除されている。(浅香玲菜・小島遥花)
チェック対象
「WHO テドロス失言 ”コロナ(ワクチン)は重症・死亡リスクが高い高齢者に集中させるべきだ。一部の国は子供にコロナ(ワクチン)して【殺している】が、それはよくないことだ”」
(Twitter、2021年12月23日投稿→現在は削除)
結論 誤り
【誤り】
そのような発言はしていない。WHOも否定。
このツイートは2021年12月20日にスイス・ジュネーブのWHO本部で行われた、テドロス・アダノム事務局長の記者会見を一部切り取ったもので、2021年12月26日時点で約2,000RTと約4,000いいねを獲得している。しかし、現在はツイートは削除されている。
テドロス事務局長の実際の会見
会見はWHOの公式webサイトで公開されている。それによると、ツイートされた動画部分に値するテドロス事務局長の実際の発言は以下の通りだ。(参考:“Who Director-General’s Opening Remarks at the Media Briefing for Geneva-Based Journalists.” World Health Organization, 20 Dec. 2021, https://www.who.int/multi-media/details/who-director-general-s-opening-remarks-at-the-media-briefing-for-geneva-based-journalists—20-december-2021. 2021年12月26日閲覧)
会見26:44より~
” So, if it’s going to be used, it’s better to focus on those groups who have the risk of severe disease and death, rather than, as we see, some countries are using to give boosters to children, which is not right. “
「ですから、もし(ワクチンが)使われるのであれば、重症化や死亡のリスクのあるグループに焦点を当てた方がいいのです。むしろ、一部の国は(ワクチンを)子供たちにブースターショットを与えるために使っていますが、これは正しいことではありません。」
つまり、WHOの会見記録では、テドロス事務局長は “give boosters to kill children”ではなく “give boosters to children” と発言したこととしている。
WHOが説明
なぜ、聞き用によっては”kill children”とも聞き間違えられてしまう音が発せられたかについては、WHOの広報官が、英国の公共放送BBCに対して以下のように答えている。
” got stuck on the first syllable ‘chil’ and it came out sounding like ‘cil/kil”
((テドロス事務局長は、Childrenの)最初の音節、 ‘chil’の部分で引っかかって、’cil/kil’のような発音になった)
つまり、テドロス事務局長には「子供を殺す」と述べる意図はなく、たまたま発音がクリアではなかったため、そう聞こえてしまったかもしれないが、そう言っていない、というのがWHOの説明である。
結論
WHOのテドロス事務局長は記者会見で、一部の国がブースターショットによって子供を殺している、とは発言していなかった。WHOは、発音には聞き取りにくい部分があったことは認めたが、「子供を殺す」との発言を明確に否定している。よって、チェック対象のツイートは「誤り」である。
3エンマ大王
InFactはレーティングをエンマ大王で示している。問題のツイートは「誤り」であり、これは3エンマ大王となる。
エンマ大王のレーティングは以下の通り。
- 4エンマ大王 「虚偽」
- 3エンマ大王 「誤り」
- 2エンマ大王 「ミスリード」「不正確」「根拠不明」
- 1エンマ大王 「ほぼ正確」
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