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【FactCheck】れいわ・山本太郎議員「イギリスは(消費税減税を)7日でやってます」は本当か?

【FactCheck】れいわ・山本太郎議員「イギリスは(消費税減税を)7日でやってます」は本当か?

24年の総選挙時の党首討論で、れいわ新選組代表の山本太郎議員は「消費税減税には時間がかかる」をテーマに、海外で短期間に減税された例を挙げた。その際の山本議員の発言をファクトチェックした。

対象言説

世界を見てみたら消費税、これ付加価値税とも呼ばれますけれども、そんなものをどんどん減税しているんですね、景気が悪い時。 イギリスは7日でやってます。20%から 5%への減税を。ドイツ28日。19%から16%への減税を。マレーシアは16日。これ、0%に消費税をしました。
(発信者:山本太郎、2024年10月12日_日本記者クラブ主催_7党党首討論会)

結論  山本議員の海外の言及は正しいが、日本の税制改正に「時間がかかる」のも事実

参考にすべき情報

InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。

ファクトチェックの詳細

山本太郎議員の発言は2024年10月12日、第50回衆議院議員選挙を前に行われた7党首討論でのものだ。山本議員が挙げた「付加価値税」はVAT(Value Added Tax)のことで、EU加盟国やアジアなどで物やサービスの購入時に課せられる間接税で日本の消費税にあたる。
財務省の「欧州における付加価値税変更の経済効果」によると、VAT変動時は実施計画のアナウンスから実施までの期間は平均6カ月程度を要する。しかし、リーマンショックやコロナウイルスなど経済ショック時は、アナウンスから実施までの期間が短期間になっている。以下の表は、新型コロナウイルスによる欧州の税率変更や、アナウンスから実施までの期間を示している。

この表によると、イギリスでのVAT変更アナウンスから実施での期間は7日間。ドイツでは27日間であり、山本議員の発言と大きな齟齬はない。

マレーシアについては、国立国会図書館調査及び立法考査局の「諸外国の事例にみる付加価値税の減税」と、アジア経済研究所の谷口友季子氏の「2018年のマレーシア 史上初の政権交代とマハティールの2度目の首相就任」によると、マレーシアの付加価値税はGST(Goods and Service Tax)で、日本の消費税と同様に個人消費全体を対象にしており2015年に導入された。しかし、2018年のマハティール・ビン・モハマッド政権発足とともに、GSTの標準税率は0%となり、2015年以前に課せられていたSST(Sales and Service Tax)が再導入されている。山本議員の指摘は、このGSTの廃止を指していると考えられる。
以下がGSTが廃止になるまでのスケジュールだ。


2018.5.9 下院議員選挙
2018.5.16 GST廃止決定
2018.5.21 マハティール・ビン・モハマッド内閣発足
2018.6.1 GSTの標準税率0%に変更


GST廃止決定の5月16日をアナウンス日とすると、実施日の6月1日は16日後である。この点においても、山本議員の発言は正しい。

ここまでが山本議員の発言に関するファクトチェックだが、一方で、日本は諸外国と異なるのか疑問は沸く。異なるとしたらその点が問題とも考えらえる。その点について財務省に確認を求めみた。

財務省調査課の担当者は質問に対して以下のように回答した。


質問① 税金を変更する際にはどのような手続きが必要ですか?
「税制改正の流れとしては、夏ごろに各省庁から税制改正要望が出ます。それらを与党税制調査会が検討し大綱として取りまとめ、次に政府が検討し毎年12月頃に大綱にします。国会に提出された後は衆議院・参議院で審議され、通過した際は4月1日から法律として公表されるという流れです。」
質問② 通常の税制改正より早く変更された事例は過去にありますか?
「基本的にはこの流れですね」

日本の税制改正は各省庁から要望が出てから法案が成立するまで、半年以上もの時間がかかっている。山本議員が取り上げた海外の事例は誤りではないが、日本の税制改正の流れと単純に比較できるものか明確ではない。ただし、山本議員の指摘を日本に適用できないとも断言できない。財務省の説明は従来の日本の制度変更の説明でしかないからだ。よってファクトチェックの結論としては、「山本議員の海外の言及は正しいが、日本の税制改正に『時間がかかる』のも事実」ということになる。

(馬場 玲妃)

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