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【FactCheck】「コレステロールの血中濃度を下げる薬はアルツハイマー病への一番の近道」は根拠不明

【FactCheck】「コレステロールの血中濃度を下げる薬はアルツハイマー病への一番の近道」は根拠不明

高齢化社会でその症状、治療に注目が集まるアルツハイマー病だが、根拠不明な言説が拡散されるケースが散見される。その内容をファクトチェックした。

対象言説

「アルツハイマーは医師が引き起こした病気だ! 40年以上前には発症しなかった病気だ! そして今、アメリカでは65歳以上の人を殺す4番目の病気になっている! アルツハイマー病とは?脳の絶縁体であるミエリンがなくなる病気です! ミエリンは何でできているのか?コレステロールからできている! 低コレステロールダイエットやコレステロールの薬を飲むと、アルツハイマー病への一番の近道です。」

これを以下の2点に絞ってファクトチェックする。

①アルツハイマー病は40年以上前には発症しなかった。

②コレステロールの血中濃度を下げると神経細胞の一部であるミエリンが作られず、アルツハイマー病への一番の近道になる。

結論

①は誤り

②は根拠不明

InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。

ファクトチェックの詳細

①について。

世界各国の認知症に関係する団体の連合組織である「Alzheimer’s Disease International」によると、1906年、アロイス・アルツハイマー博士は学会で、アウグスト・Dという女性の「大脳皮質の珍しい病気」を発表したことが分かった。また、当初は重要視されず、1910年にアルツハイマー博士の師匠であるエミール・クレペリン医師がこの病気を「アルツハイマー病」と命名した。よって、アルツハイマー病が初めて発表されたのは1906年であり、約120年前には症例があったことがわかる。

②について。

薬でコレステロールの血中濃度を下げると神経細胞の一部であるミエリンが作られず、アルツハイマー病になるリスクが高まるのかについて調べた。

国立長寿医療研究センターの「認知症予防マニュアル」の説明によると、体の構成成分であるタンパク質のうち、アミロイドβと呼ばれる異常なタンパク質が蓄積することがアルツハイマー病の原因としている。これが現在最も有力な説だ。発信された対象言説にある、薬でコレステロールの血中濃度を下げると神経細胞の一部であるミエリンが作られずアルツハイマー病になるという指摘とは異なる。つまり、対象言説は有力な説ではないということだ。加えて、下記のような懸念を指摘できる。

高コレステロール血症の患者がアルツハイマー病になることを恐れて薬を服用せず、コレステロール値を下げなかったらどうなるのかを考えてみる。

高コレステロール血症の患者は動脈硬化を引き起こすリスクが高いことは知られている。厚生労働省の「認知症を理解する」によると、動脈硬化によって脳の血流量が低下すると、血管性認知症になる。同省のまとめでは、血管性認知症は、認知症の原因となる病気として知られ、アルツハイマー型に次いで2位である(下の図参照)。したがって、血中のコレステロール値が高いまま放置することは、かえって認知症のリスクを高める可能性がある。

上記の図は「知っておきたい認知症の基本 政府広報オンライン」で確認できる。

以上のことから対象言説を次のように判定する。

  • アルツハイマー病の発見時期については誤り。
  • コレステロール値とミエリン、アルツハイマー病の関係性については、誤りとは言えないものの、現段階では確定したものではなく、言説は根拠不明。

(馬場玲妃

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