
来月に投開票が行われるとされる参議院選挙。政権選択選挙とも言われる衆議院選挙とは異なり、3年毎に行われる参議院選挙は今一つ盛り上がりに欠けるということは昔から言われてきた。それは実際はどうなのか、衆議院との投票率の比較からファクトチェックした。
対象言説
「参議院選挙は衆議院選挙と比べて盛り上がりに欠ける。」との俗説。
結果
全般的には正しいが、近年その差は縮まっている。
ファクトチェックの詳細
衆議院選挙に比べて参議院選挙は盛り上がりに欠けるというのは広く認識されていると言って良い。ただし、それは一種の俗説であり、人々の認識を細かく調べたものではない。それは不可能だろう。ただし、投票率は有権者の関心を示す指標と考えられる。そこで総務省が公表している衆議院、参議院の選挙の投票率を比較してみた。
衆議院(%) | 参議院(%) | |
1946 | 72.08 | 61.12 |
1947 | 67.95 | |
1949 | 74.04 | |
1950 | 72.19 | |
1952 | 76.43 | |
1953 | 74.22 | 63.18 |
1955 | 75.84 | |
1956 | 62.11 | |
1958 | 76.99 | |
1959 | 58.75 | |
1960 | 73.51 | |
1962 | 68.22 | |
1963 | 73.99 | |
1965 | 67.02 | |
1967 | 68.51 | |
1969 | 71.76 | 68.94 |
1971 | 59.24 | |
1972 | 73.45 | |
1974 | 73.2 | |
1977 | 68.49 | |
1979 | 68.01 | |
1980 | 74.57 | 74.54 |
1983 | 67.94 | 57 |
1986 | 71.4 | 71.36 |
1989 | 65.02 | |
1990 | 73.31 | |
1992 | 50.72 | |
1993 | 67.26 | |
1995 | 44.52 | |
1996 | 59.65 | |
1998 | 58.84 | |
2000 | 62.49 | |
2001 | 56.44 | |
2003 | 59.86 | |
2004 | 56.57 | |
2005 | 67.51 | |
2007 | 58.64 | |
2009 | 69.28 | |
2010 | 57.92 | |
2012 | 59.32 | |
2013 | 52.61 | |
2014 | 52.66 | |
2016 | 54.7 | |
2017 | 53.68 | |
2019 | 48.8 | |
2021 | 55.93 | |
2022 | 52.05 | |
2024 | 53.85 |
これを衆議院、参議院の各選挙時の投票率を示したのが以下の図だ。オレンジで示したのが参議院選挙の投票率で、青で示したのが衆議院選挙の投票率だ。基本的にオレンジで示した参議院選挙の投票率が下に分布しており、衆議院選挙と比べて投票率が低いことがわかる。

選挙制度の違いも関係しているのかもしれない。衆議院の小選挙区の区割りが細かい。一方で、参議院の選挙区は一つの都道府県で1選挙区となっている。一方、衆議院の小選挙区では、東京都は30区、大阪府は19区、面積の広い北海道は12区ある。面積が広いものの人口比で選挙区の数が少ない岩手県は3区、福島県は4区となっている。各都道府県によって選挙区の数は異なるものの、何れにせよ衆議院の選挙区は、都道府県単位で一つの選挙区とする参議院の選挙区よりも細かく分かれている。
衆議院が中選挙区だった時も含めて、各陣営とも衆議院選挙に比べて参議院選挙ではきめの細かい選挙運動を展開することは難しいと言える。結果として選挙戦が盛り上がらないということも有るのかもしれない。加えて参議院では、島根県・鳥取県が1つの選挙区となる他、徳島県と高知県も1つの選挙区となっている。
ただし、2000年以降だけをとらえると、衆議院選挙と参議院選挙の投票率の差は縮まる。全体の平均では7ポイントの差が、2000年以降だけ見ると4ポイントに縮まっている(小数点以下を四捨五入)。データから明らかなのは、衆議院選挙の投票率が落ちたためで、参議院選挙の投票率が上がっているわけではない。
全ての平均 | 68%(衆議院) | 61%(参議院) |
2000年以降の平均 | 59%(衆議院) | 55%(参議院) |
(立岩陽一郎)