
Xで”中国が日本へのビザ無し渡航を今後一切禁止にする”との発言が投稿され拡散した。しかしそもそも訪日ビザを発給するのは中国政府ではなく日本政府だ。また、日本政府は現状でも中国人のビザ無しでの訪日を認めておらず、その対応に変化は無く、この発信は誤りである可能性が高い。
対象言説

2025年12月3日のXの投稿は、2026年1月28日時点で9.6万いいね、1.4万リツイート、80.9万インプレッションという反響がある。
結論
渡航に際してのビザの必要性の有無は出国側と受入国側との双方の政府の調整事項だが、ビザ無し渡航を認めるか否かはこの場合は受入国の日本政府が決めるものだ。そして、日本政府は、中国人に関して日本へのビザ無し渡航を現段階では認めていない。このため、中国政府が中国人の日本へのビザ無し渡航を一切認めないとする発信は、誤りである可能性が高い。
ファクトチェックの詳細
在中国日本大使館の「査証申請関連情報」によると、中国は、査証=ビザの免除の対象ではないため、中国籍の人の日本訪問には、日数にかかわらず事前のビザ取得が必要と書かれている。以下の文言がそれだ。

(在中国日本国大使館「査証(ビザ)申請関連情報」より)
つまり、中国人の訪日にはビザの取得が必須となる。基本的な話だが、ビザとは、渡航先の政府が発行するものだ。つまり中国人が日本に行く場合は、ビザを発行するのは日本政府となる。勿論、両政府間の話し合いによってビザが免除される国もある。
中国は、短期滞在(観光、商用、知人・親族訪問等90日以内の滞在)として訪日する際にビザが必要な国・地域に該当している。ビザは互恵が原則で、日本人も原則では中国への渡航についてはビザが必要となるが、これについては、観光客などの中国短期滞在に係る査証免除措置、つまりビザの免除措置を中国政府が実施しているということだ。(駐日中国大使館HPより)
では、このXでの発信はどういう意味なのか。それを確認するために、1月28日、外務省の外国人課に電話で確認すると、以下の様に説明した。
Q:中国人がビザを発行せずに来日することは可能ですか?
A:中国人が日本に渡航する場合は、日本側がビザを発行するため、ビザを発行せずに来日することはできません。ビザがなければ、中国の空港で搭乗手続きを拒否されます。
そもそも、中国政府からビザ無しでの来日を認めるよう働きかけていた経緯は有るのだろうか?これについても問うてみた。
Q:中国がビザ無しで来日できるように、日本政府に要請したという事実はありますか?
A:中国側から日本政府にビザ無しで来日できるように働きかけたという事実はありません。
勿論、ビザの要件も含めて外交問題に関わること故、外務省が中国政府との交渉内容を赤裸々に明かすことはないだろう。しかし少なくとも、中国人が日本に来る際には日本政府が発行するビザが必要な状況に変化は無いということは言える。
日中間のビザの扱いについては2025年11月7日の茂木外務大臣の記者会見でも取り上げられている。記者が、「中国のビザに関して伺います。中国政府は、日本人向け短期滞在ビザの免除措置を1年延長すると発表しています。受け止めを伺います。併せて、昨年12月に日本政府が発表した中国人観光ビザの一部緩和・新設措置は、約1年経っても実施されていませんが、目処があれば伺います。」と質問したもので、これに対する茂木外務大臣の回答は以下だ。
「11月3日に、中国の外交部が、日本を含みます、かなり多くの国でありますけれど、中国短期滞在に係る査証免除措置、これ を、来年末まで延長する旨の発表したと、そのことと承知をいたしております。今般発表された査証免除措置の延長が、日中間の交流の促進につながることを期待をいたしております。一方、日本のですね、中国人観光客に対する短期滞在査証緩和措置の実施時期につきましては、諸情勢を見極めながら、慎重に、今検討しているところであります。」
茂木大臣も、中国人に対するビザの緩和は慎重に検討しているもので、今の段階で実施しているものではないことを明言している。つまり、中国がビザ無しで日本へ渡航することは現状では不可能である。また、ビザ無しで渡航ができるように中国政府が日本政府に働きかけたという事実も、日本政府が規制を緩和したという事実もない。従って、中国政府が日本へのビザ無し渡航を今後一切禁止にする模様という言説は意味不明だが、その前提となっている状況が存在しないため誤りだと思われる。
(久米彩稀、椹木純奈、山尾侃生)

