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国際調査報道会議報告① ジャーナリストへの危害防止宣言

国際調査報道会議が10月8日からノルウェーのリレハンメルで開かれ、ジャーナリストの保護を訴える宣言が採択された。宣言は各国の政府に発送される。紛争地帯で命を失うジャーナリストや権力の不正を暴いて不当に逮捕されるジャーナリストが世界で後を絶たない。出席者の1人は、「enough is enough」と言った。これ以上、こういう状況を看過できないということだ。それは、一方でジャーナリストが権力と対峙しているという証でもある。日本のジャーナリストには耳の痛いところかもしれない。世界のジャーナリズムはどうなっているのか。会議の模様を伝える。
(アイ・アジア編集部)

宣言が採択された瞬間

宣言が採択された瞬間

「ジャーナリストへの危害を防ぐよう我々は各国の当局に要請する。この宣言に賛同する人は立ってください」
冒頭、主催者が宣言文を読み上げ、会場を埋め尽くしたジャーナリストや研究者らが立ち上がって採択を承認した。ノルウェーのリレハンメルで開かれている国際調査報道会議の開会セレモニー。世界121カ国から集まった900人のジャーナリストが連帯を示した。
会議は10月8日から11日まで開かれ、合わせて160セッションが開催された。9回目を迎える会議だが、年々参加国数が増え、今回の参加国数は過去最多になる。
会議の主役は、新聞、テレビ、通信社といった主要メディアではない。広く寄付金を集めて調査報道を行う、私たちアイ・アジアのような非営利の報道機関(以下、非営利報道)だ。それはなぜか?多くの国で、主要メディアが権力と向かい合うことを避け、あるいは、権力と一体になった報道を行っており、権力と対峙することをいとわずに不正を暴く報道の主役が、非営利報道などの新興メディアに移っているからだ。
主催したGlobal Investigative Journalism Networkのデビッド・カプラン(David Kaplan)は次の様に話した。

国際調査報道会議報告① ジャーナリストへの危害防止宣言

「もちろん、主要メディアを否定しているわけではなく、会議には世界的に著名な新聞やテレビのジャーナリストも来ている。しかし、幸か不幸か、世界で本当に困っている人のために戦っているのは、そういう守られたジャーナリストではなく、自分たちで資金を集めて自分の志をまっとうするために戦っているnonprofit journalism(非営利報道)の人たちだ。それはこれからも変わらないだろう。だから我々は非営利報道を支援するために結束しているんだ」
セッションの1つをのぞいた。「Cross Border Investigation」と題した内容は、アフリカで国境を越える不正を調査報道で暴いてきたジャーナリストの話だ。アフリカには「FAIR(アフリカ調査報道協会)」という非営利団体が設立され、多くのジャーナリストが連携して調査報道を行っているという。
アナス・アレメヤウ・アナス(Anas Aremeyaw Anas)は非営利報道「タイガー・アイ(Tiger Eye)」の代表だ。http://gijc2015.org/program-gijc15/
ガーナを拠点に、カカオ農場での不当な児童労働の実態や、欧米の企業と現地政府との癒着の実態を暴いてきた。顔が隠れる帽子を手放さない。写真ではわからないが、サングラスもしている。「身の安全を守るためには仕方ない」と話した。脅迫は日常茶飯事だという。
「児童労働も、極めてわかりにくくなっており、欧米の人権団体が入ってきて『農場で児童が働いているから児童虐待だ』と叫んで終わるような状況ではない。何日も地元にへばりついてその状況をしっかり調べ、どの部分がどういう問題があるのか、そこに地元政府や有力企業のどういう思惑があるのか、明らかにする必要がある。それが我々の役割だと思っている」

向かって右側の顔を隠している方がアマスさん

向かって右側の顔を隠している方がアマスさん

会場に集まった欧米の記者からは、「私の国からの不正があれば是非、情報を共有したい」との申し出が相次いだ。日本人の記者からも、「日本政府は中国との競争の中で、しきりにアフリカにお金をばらまいているとされる。そうした動きがわかれば是非連絡してほしい。我々も一緒に取材をしたい」という話が出た。

司会をしたルイスさん

司会をしたルイスさん

司会を務めたのは、非営利報道を最初に米国で始めたチャールズ・ルイス(Charles Lewis)。ルイスは、「各国のジャーナリストが連携する場というのがこの会議の大きな意味だろう。特に、非営利報道は互いが協力して取材を進めるという文化を作っており、それが国境を越えて展開されるのは極めて意味がある」と話した。(続く)

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