●冀だけではない
実は、今、中国で、個人が極端な手段を用いる犯罪が頻発している。去年9月には広西チワン族自治区桂林市の小中一貫学校の前で三輪車が爆発、容疑者1人を含む2人が死亡、44人が怪我をした。11月には、山西省太原市の共産党委員会のビルの周囲で連続して爆発がおき1人が死亡、8人が負傷した。警察は手製爆弾をしかけたとしてタクシー運転手の男を逮捕した。
中国の警察がこれらの事件の動機や背景などを、詳らかにすることはまずない。犯行の背景に、制度の矛盾や体制への不満があった場合は、なおさらだ。その矛盾や不満が伝播し、現体制に対する不安定要素となるのを恐れるからだ。
しかし、断片的な手がかりから見るだけでも、過激犯罪に走った者たちが、社会的に不当な扱いを受けたと感じながらも、その窮状を訴え解決する術を見出せなかった、という共通の背景が見えてくる。
例えば、6月に南部の経済都市、廈門市でおきた快速バス放火事件。市内中心部を走るバスが放火され、47人が死亡、34人が負傷する惨事となった。警察は、現場で死亡した59歳の男を容疑者と特定。動機は「生活への不満のはけ口」と発表した。
しかし、容疑者の男が記したと見られる中国版ツイッターには、警察発表では触れられていない事情があった。そこには、男が「60歳になり年金を受け取ろうと申請したが、警察側のミスで年齢が1歳少なく記入されていた。地元の役所に何度も行き、訂正をお願いしたが、たらい回しにされた挙げ句、訂正してもらえず、保険の申請を受け付けてもらえなかった」という経緯が記されていた。