ベラルーシの医療アカデミー内分泌研究所所長で、欧州甲状腺疾患協会所属のラリサ・ダニロヴァ氏は、「甲状腺の炎症(がんに限らず)はまちがいなく放射能によるもの。ばらばらなデータや不十分な統計のために放射線の影響を証明できなかったベラルーシの教訓を、日本で生かしてほしい」と訴えた。
しかし、「疫学的に使える統計を系統立てて長期にわたりデータバンクに集め、データ分析を続けることが重要」というダニロヴァ医師からの助言は、今なお日本では生かされていない。
●国際学会が認めた異常多発の学術論文
環境疫学者の津田敏秀氏(岡山大学大学院教授)も、早くから小児甲状腺がんの異常多発を警告し続けてきた医師の1人だ。津田氏は、福島県のデータを解析してまとめた論文を、国際環境疫学学会誌電子版(2015年10月)に発表した。
前編で述べた「チェルノブイリでも翌年から多発」について、津田氏も指摘し続けてきたが、解析には「検討委員会」が主張する「4年後」を潜伏期間として用いたという。