予想をはるかに上回る小児甲状腺がんのリスク増加に対して懸念を表明し、住民の健康リスクを減らすための調査活動を学会として支援できるが、見解を聞かせてほしいという内容だ。
しかし、学会関係者によると、これまでに環境省も福島県も返信していないという。
●多発は「過剰診断」のせいという説明
「スクリーニング効果」だけでは説明できないほど多くなった「小児甲状腺がん多発」の理由として、生涯進行しない、あるいはいずれ小さくなるがんも見つけた「過剰診断」という説がある。
国立がん研究センターがん予防・検診研究センター長で、福島県の検討委員でもある津金昌一郎氏が、「放射線の影響ではなく、過剰診断による多発とみるのが合理的だ」と述べている(朝日新聞2015年11月19日付)。
「子どもの甲状腺がんについてのデータはこれまでほとんどないが、大人の甲状腺がんや他の小児がんの観察から、小さくなるがんもある」という理由からだという。
しかし、津金氏はチェルノブイリ原発事故被災地に数千人の子どもの甲状腺がんデータがあり、進行が早く転移が多いことには言及していなかった。
「甲状腺がんは子どもにはほとんどなく、進行が遅く、転移しない」という、チェルノブイリ以前の常識は覆されたのだ。詳しくみてみよう。
●「進行が早く転移が多い」共通点をなぜ議論しない?
IPPNWドイツ支部副議長で小児科医のアレックス・ローゼン氏は、「早期転移を伴った悪性度の高い進行性がん、腫瘍の浸潤性増殖および急速な成長が高い確率で発生していることについて、福島の医大は何の説明もしない」と指摘した。