(写真:一般職国家公務員の給与改定について発表する菅義偉官房長官=2019年10月11日、首相官邸サイトより)
チェック対象 この台風騒動の最中 国会議員の給料アップが閣議決定した模様です。省庁・検察・裁判官・特別職も軒並みアップ!(2019年10月11日のTwitter投稿) |
結論 【不正確】閣議決定されたのは「国会議員」の歳費ではなく、「国家公務員」の給与。ただし、同時に、首相や閣僚ら「特別職国家公務員」のボーナス引き上げ(0.05月分)も決定されている。 |
10月11日ごろ、国会議員の給与アップが閣議決定されたとの情報がツイッター上で拡散した。しかし、国家公務員の給与アップではという指摘もあり、調査した。
検証
結論からいうと、10月11日に閣議決定されたのは、国会議員の給与のアップではない。国家公務員の給与やボーナスの引き上げのための法改正案である。菅偉義官房長官が同日の記者会見で発表した(首相官邸サイト)。
これは8月の人事院勧告に基づくもので、一般職の国家公務員の給与のうち、初任給や若年層の月給を引き上げる内容となっている(内閣官房のサイト「一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案」参照)。
月例給
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初任給、若年層の俸給月額を引上げ(平均改定率0.1%) |
特別給(ボーナス)
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一般の職員:年間4.45月分→4.50月分(0.05月分引上げ) 指定職職員:年間3.35月分→3.40月分(0.05月分引上げ) |
住居手当
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家賃額の下限を引上げ(12,000円→16,000円) 手当額の上限を引上げ(27,000円→28,000円) |
一般職の国家公務員は労働基本権が制約されているため、人事院勧告制度が設けられている。人事院は民間の賃金と比較して毎年8月に勧告を行っており、今年も民間給与とのバランスを是正するため引き上げを勧告した(人事院サイト)。対象となるのは一般職国家公務員27.7万人で、一般行政職員、外交官、税務署職員、刑務官、海上保安官、医師、看護師など。国会議員はこれに含まれない(国家公務員の給与を所管する内閣官房内閣人事局に確認)。
他方、国会議員の給料は「歳費」と呼ばれ、「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」で定められている。月額は129万4000円で、期末手当を含めると1人約2000万円。国会議員の歳費の引き上げを内容とする閣議決定や法改正案の提出は行われていない(今年の通常国会では、歳費を削減する法案が野党から提出されたが、否決されている)。
国会議員の歳費は変わらないが、首相や大臣等のボーナスはアップ
ただ、10月11日の閣議決定では、一般職だけでなく、特別職の国家公務員の給与も改定する内容が含まれていた。秘書官の月給の引き上げのほか、「首相や大臣等のボーナスを0.05ヵ月分引き上げる」という内容が含まれている。
公務員の給与改定に関する取扱いについて令和元年10月11日 閣議決定1 一般職の職員の給与に関する法律の適用を受ける国家公務員の給与については、去る8月7日の人事院勧告どおり改定を行うものとする。
2 特別職の国家公務員の給与については、おおむね1の趣旨に沿って取り扱うものとする。
3 (略)
ー内閣官房サイト掲載のPDFファイルより一部抜粋
特別職国家公務員とは、国家公務員法第2条第3項に列挙されている。内閣総理大臣、国務大臣、特命全権大使、裁判官、防衛省職員、国会職員など、一般職を上回る29.8万人いる。
国会議員の歳費が引き上げられるわけではないが、首相や内閣の構成員である大臣らに「特別職国家公務員」として支給されるボーナスが引き上げられることになる。対象となる国会議員が現政権(第4次安倍第2次改造内閣)下で何人いるのか、カウントしてみたところ、少なくとも計76人いることがわかった。国会議員(衆参あわせて708人、欠員を除く)の約1割に当たる。
20人 | |
2人(非議員の1人を除く) | |
25人 | |
27人 | |
2人(非議員の3人を除く) | |
合計
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76人 |
一般職国家公務員の給与の引き上げは6年連続。人事院の勧告対象はあくまで一般職だが、これまでも一般職に準じて特別職も改定するとして、首相ら特別職のボーナスも引き上げが行われてきた。
ただ、10月11日、国家公務員の給与改定にあたって発表した菅官房長官の談話では、一般職国家公務員の給与改定に言及しただけで、自身を含む特別職国家公務員のボーナス引き上げについては触れていなかった。
今回の閣議決定を伝えたメディアの報道でも、首相や大臣らのボーナス引き上げには言及していなかった(共同通信、時事通信など)。
なお、ツイッター投稿で指摘されていた「省庁・検察・裁判官・特別職も軒並みアップ」のうち、裁判官と検察官については別の法律で定められているが、法務省が引き上げの法案を提出している。
結論
閣議決定されたのは「国会議員」の歳費の引き上げではなく、「国家公務員」の給与の引き上げであるから、その点では誤りだ。ただ同時に、首相や閣僚ら「特別職国家公務員」のボーナス引き上げ(0.05月分)も決定され、国会議員の約1割が含まれることも事実である。よって、「不正確」と判定した。
(この記事は、ファクトチェック基本方針、レーティング基準に基づいて作成しました)
(楊井人文)