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《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.12/2019.12.25)

《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.12/2019.12.25)

インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜ネット上の情報検証まとめ管理人)

(1)「ゆずを柚子湯に、とオススメすると軽減税率の対象外」

日付
12/16
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
3.8万RT
内容

「今日近隣のスーパー(うちではない)に税務署の査察が入って大騒ぎ。しかもターゲットは青果。なんで? と思ってたら、ゆず(わかります?みかんの親戚で鍋物にいい香りのアレ)を冬至の柚子湯に、とオススメすると食品じゃないので軽減税率の対象外になるんですって。うわーめんどくさい!」という投稿。(削除済み)

【検証】国税庁は軽減税率適用と回答

消費税が10%に値上げされた後、食品などの税率を8%に据え置く軽減税率が導入された。果物の柚子であっても宣伝文句によっては食品としての軽減税率が認められないというのが投稿の内容だが、国税庁の担当者は税理士ドットコムの取材に対し「事業者が食品としてユズを譲渡する目的で、スーパーの青果コーナーに置いた場合、『ユズ湯に』と表示したとしても軽減税率が適用されます」と否定している。

査察はあくまでも調査行為であり、査察が入ったからといって必ずしも不正とみなされたとは限らない。したがって、投稿にあるスーパーに査察が入ったこと自体は事実の可能性もある(ただし「税務署」は国税局の誤りと思われる)。とはいえ、このように店の宣伝文句だけで実際に軽減税率から除外される可能性は低いと言えるだろう。


(2)「グレタとスタッフは最初から最後までファーストクラスの席」

日付
12/16
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
2900RT
内容
16歳の環境活動家として注目されているグレタ・トゥーンベリさんのツイートを引用しつつ、「グレタとスタッフは最初から最後までファーストクラスの席に座っていました。床に座ったのは自分は苦労しているというアピール用の写真とるためです」とコメントした投稿。
引用
アカウント名等モザイク処理は筆者による(以下同様)
【検証】一部区間で席が無かったのは事実

AFP通信は、グレタさんとドイツ鉄道のやり取りを以下のように詳報している。

 グレタさんは列車の床にスーツケースに囲まれて座る自らの写真とともに、「超満員列車でドイツを移動中。やっと家に帰るところです!」と投稿した。

このグレタさんの投稿に対し、ドイツ鉄道はドイツ語版のツイッター公式アカウントでいら立ち気味に反応。「親愛なるグレタさん、気候変動と闘うわれわれ鉄道労働者を支援してくれてありがとう」「ファーストクラス(1等車)であなたをおもてなししたフレンドリーで有能な弊社スタッフについても触れていただけたら良かったです」と投稿した。

ドイツ鉄道はさらにプレスリリースで、グレタさんら一行は「フランクフルト以降はファーストクラスに座っていた」と補足した。グレタさんはこれに対し再びツイッターで、フランクフルト駅以降は席が見つかったと述べ「問題はなかった」と投稿した。

グレタさんは「(スイスの)バーゼル(Basel)からの私たちの列車は運行中止だった。そのため2本の列車を乗り継ぐ間、私たちは床に座っていた。(ドイツの)ゲッティンゲン(Goettingen)から後は席に座れた」「何も問題はないし、もちろん問題があったとは全然言っていない。列車が超満員ということは、鉄道の旅の需要が高いという素晴らしいしるしだ!」と記した。

つまり、グレタさんが「最初から最後までファーストクラス」に座っていたとはドイツ鉄道も述べていないし、グレタさんも全行程でずっと床に座っていたという主張はしていない。同行取材していたスウェーデン紙「Dagens Nyheter」の記者もこれを裏付ける証言をし、満席の車内と床に座るグレタさんを映した動画も公開している。

このほかにも、別のユーザーが

グレダさんが満員電車で床に座る健気な少女だと言わんばかりの投稿をインスタでした直後にドイツ鉄道に『ファーストクラスに座ってましたよね?』とバラされてて草。もう16歳とか関係なく全て嘘で演出だらけじゃん。一事が万事というか全部信用できなくなるんだよ

と述べたツイートが約2.7万もRTされていた。ここでの「全て嘘で演出だらけ」という表現の意図には解釈の余地もあるが、上述同様「最初から最後までファーストクラス」と理解していると思われる反応はこのツイートに対しても多い。

なお、J-CASTニュースが指摘するように、ファーストクラスに座れるようになったのがどの駅からかは、グレタさんや同行記者とドイツ鉄道との主張にやや食い違いがある。


(3)「グレタは『中国は途上国なのでノーカン』と答えてる」

日付
12/8
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
5100RT
内容

同じくグレタさんについて、「グレタ氏に対する批判で一番多いのは、『中国に言えよ』なんだけど、彼女は『中国は途上国なのでノーカン』って答えてるんだよな。」などと書かれた投稿。

【検証】発言確認できず 別人と混同か

東京都・豊島区議のくつざわ亮治氏も、「『中国は途上国だからセーフ』と言い放ったグレタ氏」などとツイートし、約1400RTされていた(削除済み・キャッシュ)。

しかし、グレタさんが「中国は途上国なのでノーカン(=例外扱い)」やそれに類するような内容の発言をしたというソースは確認できない。

似た内容としては、9月に「今話題のグレタさんの環境問題だけど 『グレタさん、中国とインドに言わないと』のリプに対して 『中国は発展途上国です』って返してる時点でお察しなんだよねこれ」というツイートが約1800RTされているが、添付のスクリーンショットや投稿者自身の補足からも分かるように、これはグレタさん本人ではなく彼女を支持する別人の弁(削除済み)である。


(4)「女児10人レイプしたおじさんがAbemaTVに出演」

日付
12/17
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
2.7万RT
内容

「女児10人レイプしたおじさんが実名顔出しでAbemaTVに出演」などと書かれた投稿。(削除済み)

【検証】正しくは「10人近い男児に性的行為」

社会活動家の仁藤夢乃氏も、投稿を引用し約1800RTされている。

16日、AbemaTVの番組AbemaPrimeに小児性犯罪の元加害者の加藤孝氏が実名・顔出しで出演した。投稿はこの番組のスクリーンショットを使い、加藤氏のことを「女児10人レイプしたおじさん」としているが、これは番組で説明された彼の犯行内容とは異なる。

番組によれば加藤氏は男児を性の対象とし、過去10人近い子供に性的行為をしたとされる。具体的には性器を見る・触るなどの行為で、さらにガムテープで男児の口をふさごうとして抵抗されたことで自首。強制わいせつ未遂で起訴、執行猶予判決を受けた。これらの行為はもちろん犯罪であるが、一般に「レイプ」という言葉が指す強姦・強制性交ではない(加藤氏の犯行当時は強制性交等罪の成立前で、男性への強制性交は強姦罪にならなかったが、それにも該当しない)。「女児」や「10人」も不正確だ。

加藤氏本人もTwitterで「私が女児10人をレイプした、とTwitterに流れていたとある方が教えてくださいました。 これは事実ではありません。」と否定。上掲の投稿をした人物は既に誤りを認め、投稿を削除している。


(5)「中3生徒成績偽造で10000000点」

日付
12/18
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
2.7万RT
内容

新潟県長岡市の中学3年の生徒が学校のサーバーに不正アクセスし書類送検された件に関して、「男子生徒は、校内のタブレット端末を自宅からスマートフォンを使い遠隔操作していて、男性生徒の成績がすべて10000000点でその他の生徒が-9000000000000点になっていることから不正アクセスに気づいた学校が警察に相談し、犯行が発覚。」などとする投稿。

【検証】点数は架空のもの

投稿ではNST新潟総合テレビ(Yahoo!ニュース配信版)の記事のURLが紹介されていたが、記事では「男子生徒は、校内のタブレット端末を自宅からスマートフォンを使い遠隔操作していて、不正アクセスに気づいた学校が警察に相談し、犯行が発覚。」とあり、点数に関する記述は存在しない。NHK報道によれば、生徒は5段階評価の成績を「3」から「4」に書き換えるなどしていたという。

上掲投稿の数時間前にはネット掲示板「5ちゃんねる」でこれと同じ文章を使った書き込みがされており、直後から記事内容との食い違いが指摘されていた。


(6)「インドのデモで射殺の動画」

日付
12/16
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
2000RT
内容

声を上げる群衆に向け制服を着た複数の人物が銃を撃ち人が倒れたように見える動画を添付した、「インドのデモらしい。射殺。」などとする投稿。

引用
【検証】無関係の訓練の様子

インドでは市民権法の改正をきっかけに各地でデモが発生、警官隊との衝突で多数の死者が出ているのは事実だ。

しかし、投稿にある動画はこのデモとは関係の無い、2017年に行われた警察の訓練の様子だ。拡散された動画は後半がカットされているが、長いバージョンでは現地語で「これは訓練です」と放送されていると、インドのファクトチェックサイト「Fact Hunt」は解説している。

同じくインドの「Alt News」は動画に映る店に取材し、実際に2017年当時に訓練が行われていたことを確認。同じ動画は過去何度も誤った説明とともに拡散されているという。

(過去の回をまとめて見たい方はこちらから。大船怜が担当する次回は来年1月8日の予定です)

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