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《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.4/2019.10.30)

《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.4/2019.10.30)

インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜ネット上の情報検証まとめ管理人)

(1)「二子玉川の堤防反対の会がホームページ閉鎖」

日付
10/13
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
6900RT
内容
二子玉川の洪水は、多摩川築堤を阻んできた「二子玉川の環境と安全を考える会」の方々の輝かしい業績なのにどうしてホームページ閉じちゃったんだろう?」と書かれた投稿。
【検証】閉鎖は2015年

「二子玉川の環境と安全を考える会」がかつて多摩川沿いの堤防建設計画に異論を唱えていたことと、会のものと思われるホームページが現在閲覧できなくなっていることは事実。ホームページは2008年に取得されたアーカイブのみが今に残る。上掲のツイートは閉鎖の時期や理由についてははっきり述べていないが、今回の台風19号による多摩川氾濫被害を受けたものと憶測する反応が相次いだ。

しかし、ホームページは氾濫被害のずっと前、2015年には既に消滅していたと思われる。「考える会」を含むホームページのサーバーを提供していたOCNのサービス「Page ON」が2015年2月に終了しているからだ(閲覧は同年7月ごろまで可能だったと思われる)。「考える会」と同じ「http://www4.ocn.ne.jp」から始まるURLのホームページは、現在軒並み閉鎖か移転になっている。

詳しくはITジャーナリスト篠原修司氏による解説記事も参照のこと。


(2)「NHKが被災地取材で駅前タクシー3台貸し切り」

日付
10/11
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
1.4万RT
内容

「鋸南町へ取材に向かうNHKが、大原駅の勝浦タクシーを3台も貸し切ってしまった為、その間、電車が着いてもタクシーが全然居ない状態。日頃からタクシーしか移動手段の無い病院帰りのお年寄りが駅で待ちぼうけ。」などと書かれた投稿。

【検証】使ったのは1台のみ

投稿は台風19号襲来の前日なので、千葉県を中心に大きな被害をもたらした台風15号についての話と思われる。BuzzFeedが勝浦タクシーやNHKに確認したところによれば、NHKが取材に使ったタクシーは1台のみだったという。

なお、BuzzFeedは「事前に予約を必要とする『貸し切り』ではなく、その場での利用だった」という指摘もしているが、投稿内容は予約かその場かに関わらず駅にあったタクシーを全て占有したという意味にも解釈できる。投稿者の意図がどちらだったかは不明だ。


(3)「あいちトリエンナーレに『ドザえもん』展示」

日付
10/15
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
2800RT
内容
ハフポストの記事を引用し、あいとトリエンナーレに岡本光博氏の作品「ドザえもん」が展示されたなどとする投稿。
引用
アカウント名モザイク処理は筆者による(以下同様)
【検証】トリエンナーレの出品作ではない

ハフポスト記事は2017年12月に都内で行われた岡本光博氏の個展『THE ドザえもん展 TOKYO 2017』を紹介したもので、上掲のサムネイル画像は同年に横浜で展示された作品「ドザえもん」の写真である。

岡本氏は物議をかもした「あいちトリエンナーレ2019」内の企画展「表現の不自由展・その後」に参加した作家だが、出品したのは「落米のおそれあり」という別の作品。「ドザえもん」はトリエンナーレに展示されていなかった。


(4)「ティッシュが200組から130組に減った」

日付
10/19
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
6800RT
内容
ティッシュの組数が昔は200組だったのに130組に減っているという写真付きの投稿。
引用
【検証】130組は非売品、200組の商品も健在

投稿写真にある130組のスコッティティッシュは景品用などに使われる販促専用商品で、「非売品」と表示されたものである。一般の店頭販売用商品は最も組数が少ないものでも160組で、130組は無い。また200組の店頭用は今も存在している

上掲のツイートで投稿者は写真のティッシュが市販品かどうか特に述べておらず、その後のツイートを見るとどうやらガソリンスタンドの景品として受け取ったもののようである。以前は200組のティッシュを配っていたスタンドが160組を配るようになったという意味のツイートだったと推測されるが、ちょうど増税後、値段は据え置きつつ容量やサイズを小さくするシュリンクフレーションが話題になっていた時期だけに、市販のティッシュの内容量が減少したという勘違いで拡散されたようだ。


(5)「安倍首相の万歳が正しいやり方」

日付
10/22
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
5600RT
内容

即位礼正殿の儀において安倍首相が行った万歳について、「正しい万歳のやり方」とする投稿。投稿者は別のツイートで「よく見かける掌を相手に向けての万歳は『降参』なんだよね。正しくは安部総理のように掌を内側にしての万歳。」などと説明し、こちらも約1000RTされている。

引用
【検証】正式な決まりは無いが一部非公式に流通か

BuzzFeedJ-CASTが検証しているように、儀式で求められる「正しい」万歳として、国が定めていたり古来から正統とされていたりするやり方が存在するわけではない。したがって安倍首相がやったような掌を内側にする万歳は、少なくとも公式には正解でも間違いでもない。

この“内側式”の万歳を「正しい」とする説について、BuzzFeedは1990年代に流布した創作文書「万歳三唱令」が起源と推測している。一方でJ-CASTが指摘するように、90年代以前からも“内側式”万歳は一部国会議員らによって行われていたようで、「三唱令」とは無関係に“内側式”を奨励する非公式のしきたりが存在していた可能性も伺える。安倍首相が創作文書の影響を受けているという根拠があるわけではないことに注意が必要だ。

「三唱令」の起源を追う一連の記事を2018年に掲載した熊本日日新聞も、今回の首相の万歳についての記事で「安倍首相が万歳三唱令に影響されたかどうかは不明」としている。

(過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2019年11月6日の予定です)

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