安倍首相が昨年10月の台風19号の被災地の避難所を訪れたときの写真が、スタジオで撮影されたものであるかのような捏造された画像が、フェイスブック(Facebook)で拡散した。台湾でも同様の画像が出回っており、現地のファクトチェック団体に協力して調査した。(楊井人文、池雅蓉)
チェック対象 安倍首相が昨年10月の台風19号の被災地の避難所を訪れたときの写真がスタジオで撮影されたものであるかのような画像とともに、「しかし安倍さんって本当に手が込んでるよね スタッフも良心の呵責に苛まれないのかな?」というコメントとともに投稿 (Facebookの3月14日投稿され、拡散) |
結論 【虚偽】安倍首相が実際に被災地の避難所で慰問して撮影された写真を使い、スタジオでヤラセの撮影をしたかのように加工、捏造された画像だった。 |
検証
この画像はフェイスブックに3月14日ごろ投稿され、1100件以上シェアされて拡散していた。画像には2枚の写真が貼られている。1つ目は、安倍首相が台風19号の被災地の避難所を訪れたことを報じたニュース記事と写真、2つ目は、安倍首相が被災者を慰問している様子をスタジオで撮影しているかのような写真だ。つまり、安倍首相の被災者慰問の写真はヤラセだという指摘である。
調べたところ、1つ目の写真は、産経新聞ニュースサイトに2019年11月7日掲載されたものと同じ写真だとわかった。その写真には、「避難所を訪れ被災者の手を握る安倍首相=17日午前、福島県郡山市」というキャプションが記されている。
産経新聞だけでなく、朝日新聞も別の角度から、避難所を訪れた安倍首相の写真を掲載していた。テレビ朝日が当日、安倍首相が避難所を訪れた時の一部始終を撮影したニュース映像で、産経新聞の写真に映っている被災者を安倍首相が慰問している様子も確認できた。
時事通信の首相動静によれば、同日、安倍首相は午前9時4分に福島空港に到着し、避難所を3箇所を訪れて被災者と面会している(他社も同様。NHKの首相動静。首相官邸のホームページの記録)。したがって、産経新聞のニュース写真が、安倍首相が実際に被災地の避難所で慰問した様子を撮ったものであることは明らかで、スタジオで撮影したことを示唆するフェイスブック画像とそのような主張は全くのデタラメだと言える。
台湾でも新型コロナウイルスと関連させて拡散
台湾でも全く同じ画像が、「安倍首相がスタジオで、新型コロナウイルスの患者を訪問するふりをして写真を撮った」ものだとしてフェイスブックやライン(LINE)で拡散した。台湾のファクトチェック団体MyGoPenの要請を受け、FIJが調査協力を行った。
その結果、MyGoPenは、産経新聞の写真と同じであるほか、「写真家王創緯によれば、この写真に写っている被写体は同じ距離に見えるものの、解像度が違う。加工された写真だとわかった」として、虚偽の画像だとする調査結果を3月22日発表した。翌日、中華テレビでも、MyGoPenのファクトチェック結果が放送された。
結論
安倍首相が実際に被災地の避難所で慰問した様子を撮った写真を使って、スタジオでヤラセの撮影をしたかのように示唆する加工、捏造された画像であるから、虚偽と判定した。
(冒頭写真:MyGoPenより)