7年8か月にわたる安倍政権が終わり、菅義偉総理が誕生した。秋田県のいちご農家の出で世襲議員ではなく、横浜市議から国政に出た「たたき上げ議員」とされる。派閥に属さないということも取り上げられる。この菅義偉とはどういう政治家なのか?どのように総理の座を手にしたのか?インファクトでは菅氏の政治資金の流れからその姿に迫る。(立岩陽一郎)
「横浜政経懇話会」という政治団体がある。代表は「菅義偉」となっている。菅総理の団体だ。「横浜」と名乗っているが菅総理のお膝元である神奈川県にあるわけではない。
「東京都千代田区永田町2-1-2 衆議院第2議員会館1113」。
議員会館だ。この団体は、菅総理の事務所にある。当然、そこで「横浜政経懇話会」の会合が開かれるということもないだろう。総務省の資料を見ると、これは資金管理団体、つまり、菅総理が政治活動を行う際の資金を管理する団体だ。
では、菅総理はどのように政治資金を集め、それを利用してきたのだろうか。それを確認すするため、公益財団法人「政治資金センター」のデータでこの団体の政治資金収支報告書(以後、報告書)を確認した。先ずは直近の5年間を見てみたい。
現在公開されている最も新しい報告書は2018年のものだ。その総収入は3983万642円となっている。その収入の内訳をみると、個人の寄付は15万円。その他の事業が3968万円。その他の細かい収入が642円。以上だ。では、その他の事業とは何か?
「新しい国創りセミナー」5回の収入となっている。正確には前の年の収入196万円が遅れて計上されているので、この年のパーティー収入だけだと3772万円となる。総額からも196万円を引いて計算しても、99.6%。つまり、総収入のほとんどはパーティー収入ということになる。
安倍前総理とは異なる。世襲議員の持つ地盤、看板ということだろうが、安倍総理はパーティー収入もあるが個人からの寄付も集めている。いわゆる叩き上げとされる菅総理の様な場合は、個人からの寄付を集めるのは難しいということなのかもしれない。
では、そのパーティーの内容を見てみたい。
4月16日は914万円の収入を得ている。以下、書き出してみる。
6月25日は714万円の収入。
8月30日は794万円の収入。
10月15日は754万円の収入。
12月10日は596万円の収入。
何れも国会近くのザ・キャピトルホテル東急での開催だ。この収入にはいくつか意味が有る。先ず2で割り切れる点は、パーティーの1人の支払いが2万円だったことをうかがわせる。通常、パーティーは1人2万円だからだ。それと、全てが1000万円に届いていない点も。1000万円以上の収入については、出席者数などを出さなければならない。総額で3900万円以上の収入だが、個々のパーティーを1000万円に満たない収入にしているので、その状況がわからない。
ただ、その状況を垣間見ることは可能だ。パーティーにいくら支出したかを見れば良い。主に招待状の印刷代と会場費だ。すると以下の様になる。
4月16日は104万9856円。
6月25日は66万136円。
8月30日は160万4915円。
12月10日は81万2152円。
これをそれぞれの利益率で見てみる。小数点1の位は四捨五入している。
4月16日は88.5%。
6月25日は90.1%。
8月30日は79.8%。
10月15日は86.8%。
12月10日は86.4%。
一度のパーティーで8割から9割の収益を得ていることになる。勿論、政治家の誰もがこうしたパーティーを頻繁に開けるわけではないが、菅総理ほどの有力政治家となるとパーティーを開催すればその8割から9割が収入になるということだ。
他の年についてもパーティーの内容をまとめてみた。
14年はANAインターコンチネンタルホテルで開催しているが、15年以降はザ・キャピトルホテル東急での開催。15年は4回、16年も4回だが、17年は5回、そして前述した18年も5回となっている。収入が別途入金されているものもある。15年の12月14日は追加の収入が有ったということだろう。
何れの年の何れのパーティーも高い利益率となっている。パーティー収入が菅総理の政治活動を支えていると言って良い。
もっとも、パーティーが高い利益率にある状況は、菅総理だけではない。安倍前総理も麻生財務大臣も、他の有力政治家も状況は同じだ。これはどう見たら良いのか。政治資金センターの阪口徳雄代表は、これはパーティーの形式をとった規制されている企業献金の疑いが有るとして次の様に話している。
「パーティー収入の利益率が高いのは出席をしないのに多数のパーティー券を購入している企業等があるからだと、私たちは見ている。その上でだが、資金管理団体等の政治団体のパーティーに参加しないことについて、お互いが了解している企業、団体の購入は、政治資金規正法で禁止されている寄付に該当する疑いがある」
企業献金は政党や、政党が指定した特定の団体への献金は認められているが、個々の政治家の団体への献金は認められていない。
阪口代表は、「パーティー収入とは、多くの企業・団体による事実上の寄付によって多額の収益が出る仕組みなのではないか。つまり、これは実質的な寄付ではないかとの疑いを、少なくとも政治資金を調べてきた我々は持っている。あまりにも不透明な収入だ」と指摘した。
その内容は報告書からは読み解けない。しかし、素朴な疑問は生じる。1000万円近い収入を得られるパーティーが100万円前後の経費で賄えるものだろうか?実は、それを読み解く鍵が報告書に記載されていた。
(続く)