「GoTo事務局の日当7万円」と10月19日に報じたテレビ朝日の記事がSNSで話題となり、「異常なまでに高い」「税金の無駄遣いだ」などと炎上した。本当に「1日7万円が給料として貰える」のであれば高いように思えるが、この見出しのニュースはミスリードだ。(篠原修司)
GoTo事務局で日当7万円 「国民の理解得られぬ」
(テレビ朝日News、10月19日)
【ミスリード】 7万円は最高額で、平均額は4万5千円。しかも「日当」ではなく、事業主負担額なども含めた「人件費」で、職員に支払われる金額ではない。
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— テレ朝news (@tv_asahi_news) October 19, 2020
このテレビ朝日のニュースの影響で「日当7万円」は一時、Twitterのトレンドになった。だが、結論から言えば、7万円は最高額で、平均額は約4万5千円(*)。しかも、それぞれに支払われる「日当」ではなく、出向元の会社に支払われる「人件費」だ。この問題を最初に報じた週刊文春の記事(10月14日)は平均の方をとって「日当4万円」と報じていたが、テレ朝は「7万円」を見出しにとって報じた。
「7万円」の人件費が支払われるのは、職種としては最上位にあたる「システムプロジェクトマネージャー」と「事務局長・事務所長」だ。金額は正確には69,800円となる。
Go To トラベル事業の事務局への出向社員の人件費(日額)は、10月19日行われた野党合同ヒアリングで明らかにされた政府側の資料で示されたが、国土交通省が定めている「設計業務委託等技術者単価」の基準額(別表資料参照)と同じだ。
「実際の支払いに当たっての単価のあてはめは別途精査中」とも書かれ、この金額の通り確定しているわけではない。
- システムプロジェクトマネージャー:69,800円
- 事務局長・事務所長:69,800円
- 部長級:55,300円
- 課長級:48,700円
- 係長級:40,600円
- 係員級:32,700円
- 派遣・契約社員:27,900円
「日当」という言葉も、そのまま働いている人に支払われる金額であるかのような誤解を与える表現だ。正しくは、観光庁の事務局から出向元の旅行会社などに支払われる「人件費」であり、実際に職員に給与等を支払うのはそれぞれの会社だ。
また、野党合同ヒアリングで配られた資料にも、国土交通省の資料にも、「人件費」には、「基本給相当額」「諸手当」「賞与相当額」「事業主負担額」が含まれる、と記されている。
野党合同国対ヒアリングでも、「ひとりあたり単価が約4万円は高すぎるのではないか?」という野党からの質問に対して、担当者の女性が「半額近くが実際の基本給にあたる部分なのではないかという風に考えておりますので、それほど高いものではないと思っています」と回答している(動画)。
(*)一人当たり「人件費」平均額は、野党合同ヒアリングで配られた政府側資料をもとに算出すると、12,684,372,800円÷6937人÷(20日×2ヶ月)=約45,712円となる。
結論
直接人件費の平均は約4万円で、この金額には諸手当や社会保障の事業主負担分なども含まれ、出向元の会社に支払われるものだ。テレビ朝日ニュースの見出しは、あたかもGo To トラベル事業の職員にそれぞれ日当として7万円が支払われるかのような誤解を与える可能性が高く、「ミスリード」と判定した。
(冒頭写真:テレビ朝日ニュースサイトより。初出のYahoo!ニュース個人を元に作成)