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《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.63/2020.12.17)

《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.63/2020.12.17)

インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜ネット上の情報検証まとめ管理人)

(1)「ミシガン州で不正投票の証人が民主党員に射殺された」

日付
12/7
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
2100RT
内容
 海外ユーザーの動画付き投稿を引用し、「ミシガン州で不正投票の宣誓した証人が民主党員に射殺されたそうです」とする投稿。
引用
※アカウント名等モザイク処理は筆者による(以下同様)
【検証】被害者は存命 背後関係の発表無し

この動画はミシガン州で11月28日に起きた発砲事件を捉えた防犯カメラ映像で、現地ケーブルTVチャンネルFOX 2 Detroitなどが詳報している(参考12)。それによれば、発砲された被害者は負傷したものの命に別状は無く(傷が撃たれたことによるものかも不明)、撃った犯人もまだ見つかっていない。

被害者の身元や犯行動機など、詳しい情報は現地警察から発表されておらず、報道でも明らかにされていない。従って、「不正選挙の証人」や「民主党員」といった情報には全く裏付けが存在していない。

なお、引用された中国語投稿の「リンカーン、ケネディ、マーティン・ルーサー・キング、レーガンを殺したのは全員民主党員だった」という記述も誤りか根拠不明で、うちリンカーン、ケネディ、レーガンに関してはSnopesで検証されている(レーガンは銃撃されたことはあるが殺されてはいない)。キング牧師の暗殺犯についても民主党員だったという話は無い。


(2)「ペンシルベニア州 郵送した投票用紙より70万以上回収票が多い」

日付
12/11
発信者
門田隆将(ジャーナリスト)
媒体
Twitter
拡散数
1600RT
内容
米大統領選の選挙結果無効を求める訴訟に対しペンシルベニア州司法長官が反発している旨の記事を引用し、「郵送した投票用紙より“70万票以上”回収票が多くても根拠なし?」などとする投稿
【検証】予備選の数字と混同

門田氏の投稿は、共和党のダグラス・マストリアーノ上院議員らの投稿により海外で拡散されている「郵送された投票用紙が180万枚、うち140万枚が返送されたのに、郵便投票の総数が250万票」とする主張を参照していると思われる。しかし、これは予備選と本選の数値を混同しており誤りだ。

大統領選本選における郵送投票申請数は、ペンシルベニア州の発表によれば300万以上。選挙情報サイトU.S. Elections Projectの集計では申請数が約309万票、実際に投票された数は約263万票となっている。

180万余りという数は、6月に行われた予備選(本選に出馬する各党の候補者を決定する選挙)での郵便投票申請数と一致する(参照)。また、ペンシルベニア州州務局のレポート(p.4参照)によれば、実際投じられた郵便投票・不在者投票の数は150万弱だという。

詳細はUSA TODAY検証記事を参照。


(3)「高性能のPCRは性病でもインフルでも拾う」

日付
12/3
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
2500RT
内容
「コロナの巣窟みたいに言われている地域のお店に、PCR作っている会社の人が飲みに来て、『うちのは高性能だから何でも拾っちゃうんです。性病でもインフルでも。受けちゃダメですよPCR。でも会社は嘘みたいに儲かってます』。あんなのインチキと分かっていても、こんなに儲かっちゃ、やめられない…」とする投稿。
【検証】原理上他の病気との誤検出は無い

新型コロナウイルスの陽性判定などに使われるPCR検査は、ウイルスの遺伝子(RNA)を増殖させその配列を既知の新型コロナウイルスの配列と照合することで行われる(参考)。そのため、遺伝子情報の異なる他のウイルスや細菌などを検出することは原理上起こらない。特に「高性能」な検査であればなおさらそうであるはずで、誤検出のケースは目的のウイルス(この場合は新型コロナウイルス)が検体に誤って付着していたことなどが原因と考えられている。

インファクトでは過去に、「PCR検査は風邪も検出」という似た言説に関して検証記事を作成しているので参照されたい。


(4)「豪大臣がキャップを付けたままワクチンを接種」

日付
12/10
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
2200RT
内容
海外ユーザーによる投稿動画を引用し、「オーストラリアの大臣はキャップを付けたままワクチンを接種しました」などとする投稿。
引用
【検証】撮影用のやり直しの場面

動画に映る人物は正確には大臣ではなく、オーストラリア・クイーンズランド州首相のアナスタシア・パラシェイ氏。これは州首相や州保健相らがメディアの前で行ったインフルエンザワクチン予防接種の光景である。

オーストラリアのニュースチャンネル7NEWSが公開した動画を見ると、問題のシーンの直前、パラシェイ氏はキャップの付いていない注射器で接種を受けていることが確認できる。この後、メディアからの要望で、撮影用にキャップを付けもう一度接種の真似をしている。

詳細は7NEWSのほか、ロイター通信の検証記事も参照。


(5)「牡蠣は殻に口をつけない方があたりにくい」

日付
12/7
発信者
Kikka(Webライター)
媒体
Twitter
拡散数
2.4万RT
内容
「『牡蠣を食べるときは殻に口をつけてズルッとやらず、お箸などで貝柱を外してからパクッと食べた方があたりにくいらしい』という話、あまり知られていないのでご共有しまくりたい。 『細菌の多くは牡蠣の“殻”にいる』と昔三重の漁師さんから教えてもらい、私は一回もあたったことありません。」とする投稿
引用
【検証】主な食中毒原因のウイルスには効果無し

そもそも牡蠣に「あたる」という時、その主な原因は投稿で言及されているような「細菌」ではない。毎日新聞の取材に対し、農水省担当者は「細菌による⾷中毒はカキの場合、ほとんど発⽣していません」と回答。食品衛生法に従い生食用の牡蠣の殻は出荷前に洗浄されているという(ただし出荷後の店舗などでの不適切な取り扱いで殻に細菌が付着する可能性もある)。

牡蠣の食中毒で代表的なのはノロウイルスによるものだ。ウイルスは分類上細菌とは異なるが、牡蠣の内臓部分に蓄積され貝の身と共に人体に入る(参考:三重県のサイト)ため、殻に口を付けないという方法ではこれを防ぐことはできない。BuzzFeedの取材に答えた厚労省担当者は、投稿にあるような食べ方をしても全体としての食中毒のリスクはそれほど下がらないと述べている。

上掲投稿は文字通りには「細菌」についてしか言及しておらず、殻に口を付けないという食べ方によって多少なりとも細菌由来の食中毒のリスクが減ることが期待できるのであれば、「あたりにくい」という表現は必ずしも誤りとは言いきれない。しかし、食中毒の主な原因であるウイルスを無視している以上、「私は一回もあたったことありません」という記述につなげるのはやはり誤解を招く主張だろう。毎日新聞の検証記事では投稿は「ミスリード」、BuzzFeedでは「不正確」としている。

投稿者のKikka氏はその後、投稿の意図や、自ら医療従事者や各機関に取材した結果を説明する記事を発表。細菌以外が原因の食中毒に効果が無いことの説明が不十分だったとして、「ツイートがミスリード的であったという指摘については真摯に受け止めたい」と記している(ただし、BuzzFeedの検証には反論も述べられている)。詳細は毎日新聞の続報を参照。

なお、ノロウイルスと同じく内臓に蓄積される貝毒も食中毒の原因になるが、検査・規制体制が整備されており、近年は市販品による貝毒被害は報告されていないという(参考12)。


(6)「銀行強盗と鉢合わせた(動画)」

日付
12/9
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
6800RT
内容
銀行強盗と鉢合わせた」などとする動画付きの投稿(削除済み)。
引用
※日付は米中部時間
【検証】防犯訓練の様子

動画では「動くなよ」「早く持って来い、金」などという怒鳴り声が聞こえ、山陰合同銀行のロゴのある紙が映し出されている。

山陰合同銀行は9日、「本日、ツイッター上に当行の営業店に強盗が入ったという情報が流れていますが、そのような事実はございません。」という文書を公式HP上で発表NHKによれば、同銀行の支店の1つで当日午後防犯訓練が行われていたといい、動画はその時撮られたものと考えられる。

 

(過去の回をまとめて見たい方はこちらから。)

※この記事の調査には、インファクトの西村晴子が協力した。

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