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【Fact Check】「75歳以上の高齢者の医療費窓口負担が、1割から2割に。」はミスリード

【Fact Check】「75歳以上の高齢者の医療費窓口負担が、1割から2割に。」はミスリード

日本共産党の志位和夫委員長が、後期高齢者の医療費窓口負担割合の変更を受けて、「今日から、75歳以上の高齢者の医療費窓口負担が、1割から2割に。」とツイートした。しかし、全ての人の窓口負担が1割から2割になるわけではないため、注意が必要だ。(安東幸大、桑原野乃佳、赤井優生、田島輔)

チェック対象

「今日から、75歳以上の高齢者の医療費窓口負担が、1割から2割に
Twitter、2022年10月1日投稿)

結論

【結論:ミスリード】
2022年10月1日から医療費窓口負担額が1割から2割に増額されるのは、一定以上の所得がある被保険者全体の一部(被保険者全体の約20%)だけであり、負担割合が「1割」だった全ての人で負担額が増えるわけではない。

このツイートは12月7日時点で6689件のリツイート、1.9万件のいいねを得るなど拡散している。

どう変わったのか?

75歳以上の高齢者(後期高齢者)の人数が増加する中で、現役世代の負担上昇を抑えて、安定的な社会保障制度を構築することを目的として、2022年10月1日から後期高齢者の医療費窓口負担割合が増額された(参照)。
志位委員長のツイートはこの制度改正を受けてのものだ。

2022年10月1日以前は、「課税所得145万円以上の現役並みの所得を得ている人」は3割、それ以外の後期高齢者は1割の医療費負担割合となっていた。
しかし、制度改正によって、「課税所得が28万円以上かつ『年金収入+その他の合計所得金額』が単身世帯の場合200万円以上、複数世帯の場合合計320万円以上」の後期高齢者の医療費負担割合が、1割から2割に増額された(現役並みの所得を得ている人の負担割合3割は据え置き)。

もっとも、医療費負担割合が1割から2割に増額されるのは、被保険者全体の20%であり、負担割合が1割だった全て人で負担額が増額されるわけではない。

厚生労働省のホームページより(後期高齢者の窓口負担割合の変更等)(参照

志位委員長のツイートは、負担割合が「1割」だった全ての人で、負担割合が「2割」に増額されると誤解される余地があり、この点に注意が必要だ。
ただし、物価高騰の中で負担割合が増える人たちが存在することは確かであり、InFactのファクトチェックはこの点についての志位委員長の懸念に異議を唱えるものではない。また、対象となる高齢者は約370万と見積もられており、その深刻さを否定するものでもない。あくまで、発信された内容の事実確認を行ったものだ。

InFactの問い合わせに対して、共産党中央委員会広報部は次のようにコメントしている。

「多くの高齢者の方の負担が増えるという重大な問題であり、その制度改正の問題を指摘したものです。ツイートは、まさに高齢者の負担増になっていることが重大なわけで、その点を指摘したものです」

結論

2022年10月1日から、医療費窓口負担割合が「1割」から「2割」に増額されたのは、被保険者全体の20%である。
そのため、負担割合が「1割」だった全ての人で、負担割合が「2割」に増額されたと誤解される余地のある志位委員長のツイートはミスリードだ。

2エンマ大王

InFactはレーティングをエンマ大王で示している。問題のツイートは「ミスリード」であり、これは2エンマ大王となる。

(編集長追記)300万人以上が影響を受ける問題について、単純に全員か否かを問題にするかのように受け取られる記事を出すべきか。この記事の掲載をめぐって編集長として悩みました。ファクトチェックはとかく重箱の隅をつつく作業だと批判されます。このため、基本的にInFactでは数字が違うといった指摘はしません。また、共産党のコメントも理解できるものです。では、なぜ敢えて記事化したのか。それは、このファクトチェックを行った大学生の、発信は事実に忠実であるべきという考えを重視したからです。拡散力のあるTwitterは字数制限が有ります。それだけに、言葉を慎重に選ぶべき。そういう時代に我々は生きているということかと考えます。

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