選挙の投票行動を促す「Go Vote Japan」の代表である辻愛紗子さんが、総選挙当日に報じられた開票所開閉時刻変更のニュースを引用リツイートし「なぜ今通達するんだ????」などとツイートした。しかし、実際にはこの情報を総務省が公表したのは投票日の5日前だった。(浅香玲菜、村田風佳)
チェック対象
「なぜ今通達するんだ???? 予定終わりに駆け込み投票しようと思ってた人はどうなるの???? 確かにエリア的には運搬上仕方ないのかもしれないけど、なぜ今??? 投票率あげたくないん????なんなん????(ブチギレ)」
(Twitter、2021年10月31日投稿)
結論
ミスリード
発信には10月31日の記事が引用されており総務省が公表したのが選挙の当日だったという印象を与えるが、実際には総務省が数字を公表したのは選挙の5日前の10月26日だ。
投票所での投票時間
投票時間について、公職選挙法は第40条で次のように定めている。
「投票所は、午前七時に開き、午後八時に閉じる。ただし、市町村の選挙管理委員会は、選挙人の投票の便宜のため必要があると認められる特別の事情のある場合又は選挙人の投票に支障を来さないと認められる特別の事情のある場合に限り、投票所を開く時刻を二時間以内の範囲内において繰り上げ若しくは繰り下げ、又は投票所を閉じる時刻を四時間以内の範囲内において繰り上げることができる」
総務省によると、今回の衆院選挙では、全国46,466か所の投票所のうち約36.5%にあたる16,967で開始時刻の繰り下げ、閉鎖時刻の繰り上げが行われたということで、Yahoo!の記事はそれを報じたものだ。
記事のリードは以下だ。
「31日投開票の衆院選で、総務省は、閉鎖時刻を繰り上げる投票所が全国で1万6967カ所に上ると発表した。宮崎県内の自治体には午後4時で投票終了する投票所もある」
確かに、この情報を選挙の当日に知らされたら有権者は困るだろう。
総務省の公表は10月26日
辻さんが疑問を持ったのも当然と言える。選挙の投票に影響する重要な発表が、投開票日の当日に発表されるのでは、「なぜ今?」と言いたくなるはずだ。
しかし調べると、総務省がこの数字を公表したのは10月26日だ。総務省にInFactが電話で確認したところ自治行政局選挙部選挙課の担当者は次の様に話した。
「投票時間の変更については、公職選挙法第40条で定められています。投票時間の変更を行う投票所数は、10月26日に公表しています」
その内容は総務省のホームページの「令和3年10月31日執行 衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 速報資料」で確認できる。その中の「4.投票所関係」に開閉時刻の繰り上げ・繰り下げを行う投票所数を記したExcelファイルが掲載されている。 そこにも総務省の説明を裏付けるように「R3年10月26日発表」と書かれている。
InFactはこのファクトチェックの結果についてGo Vote Japanを通じて辻さんに問い合わせているが、現在のところ、返答は無い。返答が有り次第、その内容も掲載したい。
結論 ミスリード=2エンマ大王
今回の衆議院総選挙では、約36.5%の投票所で投票時間の繰り上げや繰り下げが行われた。この閉鎖時刻の繰り上げについて、総務省は10月26日には公表している。「なぜ今通達?」「予定終わりに駆け込み投票しようと思ってた人はどうなるの?」との辻愛紗子氏の発信は、公表が選挙当日に行われたと誤解させるものになっており、ミスリードだ。
InFactはファクトチェックの結果をエンマ大王で示しており、今回のファクトチェック結果は2エンマ大王となる。
エンマ大王のレーティングは以下のようになっている。
4エンマ大王 「虚偽」
3エンマ大王 「誤り」
2エンマ大王 「ミスリード」「不正確」「根拠不明」
1エンマ大王 「ほぼ正確」
※辻さんの敬称が略されていました。お詫びいたします。
InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。