未曽有の被害をもたらした東京電力福島第一原発事故から丸7年。事故によって福島県に住んでいた人たちなどが避難を余儀なくされたとし、東京電力と国を訴えた裁判が2月22日に大阪地方裁判所で開かれた。(鈴木祐太)
この裁判は、福島第一原発事故によって関西に避難してきた242人が東京電力と国に、損害賠償を求めて起こしたもの。原告には、福島県だけでなく事故当時、宮城、茨城、千葉などの近隣県に住んでいた人も含まれている。
17回目の弁論となった今回は、低線量被ばくによる健康影響が主な争点。高線量被ばくでは線量と健康影響が比例することが分かっているが、100mSv以下のいわゆる低線量被ばくでは双方の主張が食い違っている。
原告側は放射線の健康影響に関して、低線量被ばくでも高線量被ばくと同様、被ばく量に比例して健康に影響すると主張している。一方、被告側は100mSV以下の被ばくでは発がんリスクの増加を証明することは難しく、同じ線量でも長期間被ばくした場合は短期間に被ばくした時よりも健康への影響は小さいと主張している。
裁判で、原告側は次の点も主張。
「福島県民健康調査では小児甲状腺がんの割合が通常より割合が高く、過剰発生が確認されている」。
事故当時18歳以下だった子ども36万人を対象に行っている福島県民健康調査では、甲状腺に悪性の疑いがある腫瘍がみつかった子どもは194人に上っている。通常、甲状腺がんは100万人に3人の割合で発生するとされている。
裁判の後、原告代表の森松明希子さんは次の様に話した。
「もうすぐ事故から7年。県民健康調査の状況をみると、放射線の健康被害の状況が徐々に明らかになってきている。声を出せない子どもたちが被ばくの危険にさらされている。これからもこうした原発被害の状況を裁判所に訴えていきたい」
原発事故の被害者による裁判は全国で少なくても27件、1万3000人以上が訴えを起こしている。昨年3月に出た群馬地裁での判決を皮切りに、千葉地裁、生業訴訟(福島地裁)で判決がでており、いずれも国と東電の責任を認めている。3月には、15日に京都地裁、16日に東京地裁、22日に福島地裁いわき支部で判決が言い渡される。
次回の第18回弁論は、5月31日14時から大阪地裁で行われる。