東京電力福島原発事故後の小児甲状腺がん多発は、国際的にも大きな論議を呼んでいる。早くから「放射線被曝による異常多発」を警告してきた日本の医師たちは、放射能の危険性を訴えてきたIPPNW(核戦争防止国際医師会議・1985年ノーベル平和賞受賞)ドイツ支部が開いた国際会議に招かれた。国連人権理事会や国際環境疫学学会は、日本政府に対して検査対象者の拡大や検査方法の改善を求めた。
しかし、事故から6年経っても政府は動かない。その問題点に迫る。
(環境ジャーナリスト 川崎陽子)
●多発は「スクリーニング効果」のせいなのか
小児甲状腺がんの多発は「放射線の影響とは考えにくい」という専門家たちは、「スクリーニング効果」が原因だと主張してきた。高感度の検査機器で多人数を一斉に調査したため、自覚症状が出て診察を受けるまでに数年かかるはずのがんを、前倒しで見つけたというのだ。
100万人に1人といわれる小児甲状腺がんが、福島県で約27万人中74名に発見されていた2014年2月、環境省と福島県立医大が国際会議を開いた。「検討委員会」の初代座長だった山下俊一議長は、会議の総括で「スクリーニング効果による」とし、放射線の影響を否定した。