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中国を脅かす過激犯罪!多発する背景には何が(前篇) 宮崎紀秀

●国際空港でおきた爆発事件

去年(2013年)7月20日午後6時過ぎ。北京首都国際空港の到着ロビーに、車椅子の男が現れた。左手には袋のようなものを持っていた。

異状に気づいた警察官が近寄ると、男は何かを叫びながら、両手を挙げ周囲の人を追い払うような仕草をした。警察官が男に向かってさらに歩みを進める。すると、突然、男の左手から火花とともに爆音が起こった。辺り一面は煙幕で視界が遮られた。爆発は1回きり。男は、自ら起こした爆発の衝撃によって車椅子ごとなぎ倒され、その場で取り押さえられた。

北京の裁判所に出廷する冀中星被告 2013年9月17日
北京の裁判所に出廷する冀中星被告 2013年9月17日

男は、命を取り留めたが、左の上腕部から先を失った。警察官1人がけがをした。爆発による旅行客らへの被害はなく、死者も出なかった。とはいえ、治安維持に面子をかける中国の空の玄関で起きた爆発事件。共産党を狙ったテロか?と国内外に緊張が走った。

●被告、冀中星

男の名は、冀中星(当時33歳、以下、冀)。山東省の農村出身。無差別に公衆を狙ったかのように見えた爆弾事件は、およそ2か月後の初公判が開かれる頃には奇妙な様相を見せ始めた。

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