市場の一画に肉売り場があった。並んでいる屋台はどれも脂で黒く染まっていた。その上には生きていた頃の形を連想させる大きな豚の枝肉がいくつもぶら下がっていた。盛んに声をかけてくる売り子に、売っているのは病死した豚ではないかと尋ねると、「ウチは検査を受けているから大丈夫」と、太鼓判を押した。確かに肉の表面には検査済を示すという紫色のインクのスタンプが直接押されていた。もちろん何でも偽造してしまう中国で、このスタンプさえ正規のものかどうかの保証はないが。
この約半年前、死んだ豚の肉を売買していたブローカーグループがこの市場の近くで摘発された。報道によれば、警察は合わせて7人を逮捕、6トン以上の肉を押収した。肉はウイルスの感染で死んだ豚のものだった。グループは、養豚農家から死んだ豚を仕入れて解体し、その肉を通常よりも安く売りさばいていた。グループ内で販売を担当していた女は、逮捕後「500グラムを1元で仕入れ、2元で売っていた」と証言している。市価の7分の1程度だったという。