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<中国現地ルポ>病死豚肉が食卓に!? 死豚大量投棄の真相に迫る(後編)宮崎紀秀

この養豚場の近くでも最近、豚の投棄があったと聞き、その場所に向かった。畑と畑の間を走る未舗装の土の道が、小さな橋にたどり着いた。車からおりて、橋の下をのぞくと、小さな流れがあり水の中に複数の豚の死骸と骨が散乱しているのが見えた。腐乱しておりそれなりに時間が経過しているようだ。その小川にそって歩くと、土手にも強烈な匂いともに、腐乱した豚の体躯の一部や骨が散乱していた。誰かが故意に死骸をこの周辺に投棄したことは明らかだ。

●取り締まりで死骸を売買できず投棄?

中国政府は、食品の安全に絡む犯罪を厳しく取り締まる方針を示している。中でも病死した豚を流通させる犯罪は重点的な摘発対象の1つになっている。実際にこの湖北省のケース以外にも同様の事件が次々と明るみにされている。
一方、取り締まりによって死んだ豚の流通経路が断たれたため、不法投棄が増えたのではないか、との指摘や報道もある。そこに本当に因果関係があるかどうかは、明らかではない。

この養豚場には「死んだ豚を買い取りたい」と電話がかかって来ることもあるという
この養豚場には「死んだ豚を買い取りたい」と電話がかかって来ることもあるという

豚の死骸が不法投棄されるのは、処理のための手間や費用を惜しむためなのか。しかし、川などに投棄されているならば、むしろその肉が消費者の口に入らないだけマシなのか。死んだ豚を巡る問題は、利益の為ならなり振り構わず、他人の健康さえ犠牲にすることを厭わない利己的な人々の存在を教えてくれるものと言えるのかもしれない。川に漂った豚の死骸は、中国社会の行き過ぎた拝金主義に警鐘を鳴らしているかのようでもある。

<<執筆者プロフィール>>

宮崎紀秀
1970年生まれ。元日本テレビ記者。警視庁クラブ、調査報道班などを経て中国総局長。中国滞在は約6年。北京在住。

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