チェック対象 今月、3歳から5歳までの全ての子どもたちの幼児教育、保育の無償化が実現しました。小学校、中学校9年間の普通教育無償化以来、70年ぶりの大改革です。(2019年10月4日臨時国会所信表明) |
結論 【不正確】預かり保育・認可外保育施設に関しては全ての子どもが無償化になるわけではない。各種学校に通う3〜5歳児は一律対象外。大半の3〜5歳児が無償化になったとはいえ「全て」ではない。 |
安倍首相は10月4日、臨時国会の冒頭で所信表明演説を行い、冒頭で「最大の挑戦は、急速に進む少子高齢化です」と述べた後、「今月、3歳から5歳までの全ての子どもたちの幼児教育、保育の無償化が実現しました」と発言した。本当に「3歳から5歳までの全ての子どもたち」が無償化の対象になっているのか、事実関係を調べた。
✔︎検証
この10月より幼児教育、保育の無償化がスタートしたことは事実だが、実は「3歳から5歳までの全ての子どもたち」が対象というわけではない。内閣府の「幼児教育・保育の無償化」サイトなどに基づき、無償化の対象範囲を表にしてまとめると、次のとおりとなる(制度の仕組みについては内閣府作成「制度早わかり表」、読売新聞の解説記事も参考になる)。
このように、無償化の対象は「3〜5歳の全ての子ども」ではない。各種学校に通う3〜5歳の子どもは対象外である。預かり保育、認定外保育施設についても、共働きなど保育の必要性が認められた場合に限られる。外国人などを受け入れる各種学校は一律無償化の対象外になっている(関係閣僚会議の文書注2。東京新聞、AERAなどの報道も参照)。
厚生労働省の取りまとめによれば、認可保育園等を利用している3歳以上の子どもは150万人超。認可外保育施設を利用している3歳以上の子どもは約5.5万人(厚労省サイト参照)。全体でみれば、幼児教育・保育のサービスを受ける3〜5歳の子どものうち9割程度が無償化の対象となるとみられる。しかし、今回無償化の対象にならない子どもが一定程度、存在することもまた否定できない。
したがって、正しくは「幼稚園、保育所、認定こども園等を利用する3〜5歳までの全ての子ども」となる。実際、内閣府のサイトでもそのように説明している。
結論
「3歳から5歳までの全ての子どもたちの幼児教育、保育の無償化が実現しました」というのは正確ではない。「大半の子どもたちの幼児教育、保育の無償化が実現した」というであれば正しいが、安倍首相の発言には正確さに欠く面があり「不正確」と判定した。
(この記事は、ファクトチェック基本方針、レーティング基準に基づいて作成しました)
(楊井人文)