東京都の小池百合子知事は2016年の立候補時に、「『セーフ・シティ』もっと安心、もっと安全、もっと元気な首都・東京」を実現するとして掲げた公約の一つとして、「都道の電柱ゼロ化、技術開発を支援する」ことを挙げた。これは、「7つのゼロ」の一つの目玉政策でもあり、知事就任後、様々な施策を行ってきたことは事実であるが、「都道の電柱ゼロ化」はもちろん、目標の電柱地中化率には達してはいなかった。(田島輔)
検証対象の公約内容
都道の電柱ゼロ化、技術開発を支援する。
(2016年都知事選の公約「スマートシティ」(2))
検証
小池氏は、都知事就任時の所信表明でも、「強力に進めるべきは、道路の無電柱化であります。その意義や効果を都民の皆様に広くご理解いただき、推進に向けた大きなうねりを起こしてまいります。そして、事業者間の競争やイノベーションに繋げることで、課題であるコスト削減を図ってまいります」と述べていた(平成28年第三回都議会定例会)。
「都道の電柱ゼロ化」は、小池都知事が選挙公報で掲げた「7つのゼロ」の一つでもあり、就任後の2016年12月に策定した「都民ファーストでつくる『新しい東京』~2020年に向けた実行プラン~」では、都道全体での電柱地中化率を2015年度末時点での38%から2020年度までに47%に引き上げるとの目標を掲げていた。
小池都政で電柱ゼロ化のために行った施策
小池都政の下、2017年、都道での新たな電柱設置を禁止する「東京都無電柱化推進条例」を制定、施行した。
平成30(2018)年度の予算では、「無電柱化の推進」事業の内訳として、「無電柱化に係る技術検討」が明記され、予算も年々増額されてきた。ただし、「無電柱化の推進」事業の予算は、小池都政以前から年々増加していたことであり、小池都政で特別に変化したわけではない。
無電柱化のペースはやや減速気味
では、小池都政における都道の無電柱化のペースは加速したのか。結論から言えば、小池都政以前と比較して変化がない。
小池氏が知事に就任する2016年8月まで、都道における無電柱化のペースは前年比で1~2%増であったが(2012年~2015年)、小池都政の下でも、都道における無電柱化のペースは前年比1%増であった(2016年~2018年)。
都道における無電柱化に関し、上述の実行プランでは、毎年前年比2%増を目指していたものの、実現した年はなく、年々、実際の無電柱化率と実行プランとの差が拡大してしまっている。このペースでは、2020年度までに47%という目標は達成不可能だろう。
センター・コア・エリアの無電柱化は大部分が小池都政以前に完了
小池知事は、自身のホームページで、
オリンピック・パラリンピック競技会場や首都機能が集中しているエリア内の都道の無電柱化をすすめ、97%がすでに完了
と語り、いわゆる「センター・コア・エリア(主に首都高速中央環状線の内側エリア)の無電柱化」が、2018年度末で97%完了していることを実績として誇っている。
しかし、実は、センター・コア・エリアの無電柱化地中化率は、小池都政以前の2011年度末の71%から2015年度末の92%へと地中化が大幅に進展しており、3年間で92%→97%に向上した結果を小池都政の実績として語ることは無理があるだろう。
結論
小池都政において、都道の電柱ゼロ化を目指し、様々な施策を行ってきたことは事実であるが、目標としていた電柱の地中化率に達してはいない。センター・コア・エリアの無電柱化も小池都政の実績とはいえない。そのため、この公約に関する小池都政の取り組みは「可」と評定した。