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小池都政 公約検証[5] 東京の商店街は活性化したか?

小池都政 公約検証[5] 東京の商店街は活性化したか?

東京都の小池百合子知事は4年前の選挙で、「セーフシティ」の4番目の公約として、「商店街維持発展のために、事業承継対策と空き店舗の活用などを推進する」ことを掲げた。確かに、そのための新たな施策は始まっているが、その成果を評価する報告書が出ていない。(田島輔)

検証対象の公約内容

商店街維持発展のために、事業承継対策と空き店舗の活用などを推進する。
2016年都知事選の公約「スマートシティ」(5)

小池都政検証シリーズについて

検証

小池氏は知事就任後、「災害が起こった時には、地域で助け合う共助の取組が、命を守る上で大きなポイントとなります。安全・安心をさらに強固にする鍵は、地域の絆が握っているのです。そして、活気ある地域ほど、こうした絆は強くなります」と表明した(平成28年第三回都議会定例会知事所信表明)。

「都民ファーストでつくる『新しい東京』~2020年に向けた実行プラン~」では、商店街の空き店舗活用のための取組として、「商店街の空き店舗を活用した取組への支援」が挙げられ、モデル事業を新たに行い、その取組成果を波及させることを課題としている。

商店街空き店舗活用事業を開始

都の実行プランを受けて、2017年度から「商店街空き店舗活用事業」が開始されたが、その内容は、「空き店舗問題に対して先進的な取組により地域課題の解決等を行う商店街を支援するとともに、空き店舗に関する情報を積極的に発信する」というものだ。

2018年3月23日には、都内の空き店舗の利用を促し、商店街を活性化させるため、「TOKYO商店空き店舗ナビ」というサイトが開設され、都内の空き店舗情報とその近隣にある商店街を一元的に検索できるようになった。

当該サイトの中では空き店舗を活用して商店街の活性化を図った事例が紹介されている(但し、小池都政以前から行われている活動も多数紹介されている)。

また、空き店舗を利用し、地域課題の解決や商店街のにぎわい創出につながる先進的な取り組みを行う商店街を支援するため、助成金制度が創設された(商店街空き店舗活用モデル事業)。

事業承継助成金制度等の支援制度を創設

2017年度からは、商店街で事業承継を行う予定の個人又は中小企業者に対する助成金制度も開始し、助成金限度額も420万円(2017年度)から580万円(2018年度以降)に増加した。

また、上記以外にも、「若手・女性リーダー応援プログラム」や「商店街ステップアップ応援事業」といった新たな支援制度を創設している。

「商店街の活性化」事業全体の予算も、小池都政以前の2016年度予算の37億5千万から、2020年度には49億5500万円と、10億円以上増加しており、小池都政が商店街活性化に一定程度注力していたことが伺われる。

しかしながら、小池都政以前には、「商店街の活性化」事業以外にも、「環境・防災対応型商店街活性化事業」、「商店街後継者育成・開業支援事業」等、商店街支援に関する予算が約9億円あった。

これらの事業は、小池都政後に「商店街の活性化」事業に統合されたと考えられることから、商店街活性化に関する実際の予算増加額は数億円程度に留まるだろう。

商店街活性化事業の成果は不明

上述のとおり、小池都政において様々な商店街活性化制度が創設されたが、これらの制度が、商店街の維持発展に寄与したか否かは、明らかではない。

東京都では、3年ごとに「東京都商店街実態調査報告書」を作成し、都内の商店街数を報告している。だが、確認できる直近の報告書は2016年度版(2017年3月公表)であり(2012年度版は2014年3月公表)、2019年度版は2020年6月22日現在、公表されていない。

2016年度の報告書では、東京都内の商店街数は、調査を重ねるごとに減少していることが報告されている(2013年度の商店街数2625から、2016年度は2535に減少)

小池都政における商店街活性化事業の成果を検証するためには、2019年度版の報告書の公表を待たなくてはならない。

結論

公約に掲げたとおり、小池都知事は商店街空き店舗活用事業を開始し、商店街での事業承継に関する助成金制度を充実させるなど、商店街維持発展を推進するための施策をとっている。また、事業承継対策と空き店舗活用の推進以外にも、商店街活性化のための施策をおこなっている(若手・女性リーダー応援プログラム、商店街ステップアップ応援事業等)。

しかしながら、2019年度版の東京都商店街実態調査報告書が公表されておらず、小池都政下での対策が、商店街維持発展に寄与しているのか否かを検証することができない。そのため、評定は「保留」とした。

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