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小池都政 公約検証[8] 災害時にも使える乳児用液体ミルクの普及は進んだか?

小池都政 公約検証[8] 災害時にも使える乳児用液体ミルクの普及は進んだか?

東京都の小池百合子知事が4年前に掲げた選挙公約の8番目が「災害時にも使える乳児用液体ミルクの普及を図る」だ。液体ミルクは災害時に有用だが、日本では最近まで国内で製造・販売されていなかった。都が国に継続的な要請を行い、省令改正で製造・販売が可能になった。(田島輔)

検証対象の公約内容

災害時にも使える乳児用液体ミルクの普及を図る。
2016年都知事選の公約「スマートシティ」(8)

小池都政検証シリーズについて

検証

液体ミルクは、封を開ければすぐに飲ませることができるため、清潔な水が手に入りづらい災害時に有用であるが、日本では、2018年8月8日に厚生労働省令が改正されるまで、乳児用液体ミルクに関する規格基準が定められておらず、国内で製造・販売されていなかった。

小池氏は、東日本大震災の際、フィンランドから義援物資として送られた液体ミルクの輸入手続きを援助して以来、乳児用液体ミルクの普及に携わっている(熊本地震の際にも、被災地に液体ミルクを届けている。)。

上述のとおり、規格基準が定められたことにより、日本国内でも乳児用液体ミルクの製造・販売が解禁された。小池氏もこのことを自身の実績としてアピールしているが、実態はどうであったか検証した。

規格基準の整備を行うよう国に要請

小池氏が知事就任からまもない2016年11月、東京都は「平成29年度 国の予算編成に対する東京都の提案要求」において、乳児用液体ミルクに関する規定整備を、新たな最重要事項として国に要望した。翌年も、引き続き、最重要事項として、乳児用液体ミルクに関する規定整備を求めていた

また、2017年12月には、東京都が、九都県市(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市、相模原市)を代表して国に要望している(「乳児用液体ミルクに関する規定整備について」)。

厚労省における乳児用液体ミルクの規格基準検討自体は、2016年10月16日には始まっていたことから、東京都の要望以前に始まっているが、都の要望は、厚労省が基準検討を進める圧力にはなっただろう。

その結果、乳児用液体ミルクの規格基準は整備され、現在では国内メーカーも乳児用液体ミルクの製造・販売を行えるようになったことから、都の働きかけは一定の成果を挙げたといえる。

災害時の乳児用液体ミルク調達を推進

2018年6月には、都とイオン株式会社との間で「災害時における物資の調達支援協力に関する協定」を締結し、災害時にイオンが海外メーカーから液体ミルクを輸入し、被災地に届ける旨を合意している。国内での製造・販売が解禁されたのちは、国内からも調達できるよう、協定を見直している

そして、都は上記の協定に利用し、自然災害の被災地となった岡山県倉敷市愛媛県北海道に対して、救援物資として乳児用液体ミルクを提供している。

また、都でも、災害時に備えて備蓄していたミルクは粉ミルクであったところ、乳児用液体ミルクに切り替えることを検討し、2020年3月には、乳児用液体ミルクの備蓄が開始されたとのことである

結論

小池氏は知事当選直後から、乳児用液体ミルク解禁のために国に働きかけ、災害時備蓄を粉ミルクから乳児用液体に切り替えたりするなど、普及のための活動を行ってきた。国が規格基準を定めたため、乳児用液体ミルクの国内での製造・販売が可能とったのも、都の働きかけが一定の影響があったと考えられる。よって、小池都政の本公約に関する取り組みは「優」と評定した。

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