インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜=ネット上の情報検証まとめ管理人)
(1)「PCR検査受けた時点で団信入れず住宅ローン組めなくなる」
日付
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9/14 |
発信者
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一般ユーザー |
媒体
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拡散数
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1600RT | |
内容
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「結構知られてないけど、PCR検査受けた時点で陽性陰性関係なしに団信入れなくなるから住宅ローン組めなくなるからね……嘘やろと思ったけど銀行の人が言うからマジだった……」などとする投稿(削除済み)。 |
【検証】大手2社は否定
団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローンの利用者が死亡や重い病気などで返済困難になった場合に、保険会社が代わりに銀行等へ残金を支払いローンを返済する仕組み。
ねとらぼは第一生命と日本生命に加え、匿名の銀行関係者に取材。PCR検査を受けただけで結果に関わらず団信に加入できなくなるという言説はいずれも否定している。他の保険会社では異なる対応をしている可能性は残るが、少なくとも一律に住宅ローンを組む手段が無くなるわけではない。
また、仮に新型コロナウイルスに感染したとしても、第一生命では完治後であれば、日本生命では入院中や入院予定でなければ、それぞれ保険加入は可能だとしている。一方、日本経済新聞の6月の記事によれば一度感染を経験した人の加入を拒否する保険会社もあるといい、個別のケースで確認が必要だ。
(2)「厚労省HPからマスクのマークが消えた」
日付
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9/21 |
発信者
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一般ユーザー |
媒体
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拡散数
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1500RT | |
内容
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スクリーンショット画像とともに、「厚労省のホームページからひっそりとマスクのマークが消える」などとする投稿。 | ||
引用
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※アカウント名等モザイク処理は筆者による(以下同様) |
【検証】マークは元々無し マスクは咳エチケットに含まれ推奨
このスクリーンショットは厚生労働省サイトの新型コロナウイルスに関するページで、「感染拡大防止のためのお願い」として掲載されている部分(スマホ表示)。この部分には、ページを過去のバージョンにさかのぼっても「マスクのマーク」は元々存在していない。
しかし、これは厚労省がマスクを推奨していないということではなく、同じページには「正しいマスクのつけ方」という動画や、「マスクをするとともに、換気をする、大声で話さない、相手と手が触れ合う距離での会話は避ける、といったことに心がけてください。」といったマスク着用を奨励する記述が随所に見られる。
7つ並んだマーク(ピクトグラム)の中に「マスクのマーク」が無いのは、「咳エチケット」にマスクの着用も含まれているためだ。同じページ内に「咳エチケット(咳やくしゃみをする際、マスクやティッシュ、ハンカチ、袖、肘の内側などを使って、口や鼻をおさえること)」という記述があるほか、咳エチケットを詳しく解説した別のページにも「3つの正しい咳エチケット」の最初として「マスクを着用する」ことが挙げられている。
(3)「中国の公人に日本の税金を支払う福岡市」
日付
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9/7 |
発信者
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高田純(物理学者) |
媒体
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拡散数
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1800RT | |
内容
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「福岡市が中国の公務員800人規模の受け入れを発表 名目上は『研修』だが…華字メディア」と題するRecord Chinaの記事を引き、「税金の無駄をはるかに超えて、日本侵略を公言するチャイナ共産党の工作員である公人に日本の税金を支払うとは、福岡市終わってます。」などとする投稿。 | ||
引用
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【検証】記事は2012年で既に受け入れは中止
引用されたRecord China記事では、中国の公務員による研修を福岡市が翌年から年間800人程度受け入れると発表したことを「研修名目の旅行」として批判的に伝えている。
しかし、この記事はそもそも2012年7月のもの。福岡市はその後、日中関係の悪化を理由に受け入れの中止を決定している。市によれば、それ以降も現在までに受け入れは行われておらず、再開の計画も無いという。詳細はインファクト別稿の検証記事を参照。
(4)「菅官房長官公式アカウント」
日付
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9/16 |
発信者
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一般ユーザー |
媒体
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拡散数
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1500RT | |
内容
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「菅官房長官【公式】」というアカウント名で、「Twitter始めました。 やり方よくわかりませんがよろしくお願いします」とする投稿。 | ||
引用
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【検証】本人アカウントは別に存在
9月16日に首相に就任した前官房長官の菅義偉氏は、「@sugawit」という認証済みマークがついた別のアカウントを以前から保有している。
問題のアカウントは菅氏を名乗りアイコンも当人の顔写真を使っているが、今月になって突如作成され、肩書も現在のものとしては誤りであることから、別人によるなりすましの可能性が高い。現在は、アカウント名から「【公式】」という記載が削除されている。
(5)「モネは40代で画業に入った」
日付
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9/21 |
発信者
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一般ユーザー |
媒体
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拡散数
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3.2万RT | |
内容
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「20代前半みたいな人が『もう若くない』とか『今から始めるのは遅すぎる』とか言って二の足踏んでるの見るとハ〜〜〜〜〜〜〜!?!?ってなるしお前!モネは!40代で!画業に入ったんやぞ!信じろ!自分を!やりたいことを!やれ!!やらない理由を!!!探すな!!!!」 とする投稿。 |
【検証】10代のうちに画家に専念
フランスの画家で印象派の代表的存在であるクロード・モネは、1840年に生まれ、10代で既に似顔絵(カリカチュア)が評判となり売れるようになっていた。その後本格的に画家を目指し始め、20代半ばで官展(サロン)に入選、30代前半には代表作の一つ「印象・日の出」を描いている。この間、一時兵役に就いていた以外は、画家以外の仕事で生計を立てたこともない(参考:日本大百科全書、美術手帖)。
40代というのはモネが画家として経済的に安定し始めた時期に当たる。「画業に入った」というのをどの時点とするかは考え方次第だが、物事を始める決意について述べた投稿の趣旨からしても、職業画家としての道に専念し始めた10代後半、あるいは一定の実績を手にした20代からとするのが妥当だろう。
その他
FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)では新型コロナウイルスに関する情報の検証結果などをまとめた特設サイトを開設。国内外の真偽に疑義のある情報を紹介し、随時更新している。
また過去のまとめでも、新型コロナウイルス関連の様々な誤情報についても検証を紹介している。
(過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2020年9月30日の予定です)