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《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.54/2020.10.14)

《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.54/2020.10.14)

インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜ネット上の情報検証まとめ管理人)


(1)「カントリーマアム 2005年と2015年の大きさ(画像)」

日付
10/8
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
2.8万RT
内容
不二家のクッキー菓子「カントリーマアム」の2005年と2015年の商品を比較するなどした画像。
引用
※アカウント名等モザイク処理は筆者による(以下同様)
【検証】メガサイズの限定商品 実際の大きさの変化はわずか

画像では、あたかもカントリーマアムのクッキー1個あたりの大きさが2005年から2015年にかけて急激に小さくなったかのように並べられている(「2025年」以降は投稿者の想像)。しかし、この2種類のクッキーの画像は、2012年に重量が通常の約2倍の商品が限定販売された際のもの(参照)。投稿で「2005年」とされているのは、この「メガサイズ」の商品である。

カントリーマアムは2007年頃まで30枚入りの大袋が生産されていたが、現在の大袋は20枚入りで、1袋当たりの枚数が減少していることは事実。ただし、1枚当たりの標準重量では10.5gから10gと、わずかな減少にとどまっている。


(2)「TwitterのRT全世界で制限 強制的に引用RTに」

日付
10/10
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
1.3万RT
内容
NHKニュース記事を引用し、「いまNHKニュースでやってたけど今月20日からアメリカ大統領選挙が終わる来月上旬まで、Twitterのリツイート機能が全世界で制限されるとのこと。RTする場合は強制的に引用RTになって何かコメント書かないといけないとのこと。」などとする投稿。
引用
【検証】通常のRTも可能 NHKは記事を修正

Twitter公式ブログで実際に発表された処置は、10月20日からアメリカ大統領選投票日の週までの間(延長の可能性あり)、ユーザーがリツイート(RT)をしようとするとコメント付きRT(引用RT)を促すような画面が現れる、というもの。ただ、この画面でコメントを入力せず通常のRTを選ぶこともできると説明されていて、「強制的に引用RTになって何かコメント書かないといけない」というのは誤りだ。

NHK記事は当初「ツイッター リツイート機能を一時的に制限へ」という見出しで、RT機能を「全世界で一時的に制限する」などと書かれていた(アーカイブ)。しかし、記事は10日のうちに見出しが「ツイッター リツイート時に慎重な投稿促す対策へ 大統領選前に」と修正され、内容も「(RTの際)利用者自身のコメントを書き込む画面が表示されるようにし、より慎重な投稿を促していく」というように変更されている

12日にはTwitter日本法人の公式アカウントも次のように投稿し、通常のRTを選ぶことも可能と明記している。

なお、上記の措置とは別に、一部ツイートへの「いいね」通常RT返信が制限され引用RTのみが可能となる措置も導入されるが、これはアメリカを拠点とする影響力の大きいアカウント(政治家やフォロワー数10万以上のアカウントなど)からのツイートが「誤解を招く」と判定された場合に限られる(参照)。


(3)「NYタイムズ『PCR検査陽性の9割は誤診だった』」

日付
9/11
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
1100RT
内容
ニューヨーク・タイムズ 『PCR検査陽性の9割は誤診だった』 『PCR検査がコロナ感染を検出する為のゴールドスタンダードだと騙した詐欺は、史上最大の詐欺の1つ』」などとする投稿。
引用
【検証】実際のNYタイムズの報道と異なる

同様の主張はWebメディアのダイヤモンド・オンライン掲載記事にも見られ拡散されたが、米紙ニューヨーク・タイムズが実際に報じたのは、ウイルス量が少なく他人に感染させる可能性の低い人が含まれる可能性があるという内容。コロナウイルスに感染していない、誤診であるといったことは書かれていない。

詳細はインファクト別稿の検証記事を参照。


(4)「毎秒100mの風 僕が飛ぶくらい」

日付
7/11
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
1.9万RT
内容
防災科学技術研究所(防災科研)の研究員が「強い竜巻だと毎秒100m近い風が吹くがこれは僕が飛ぶくらいの強さ」と述べているかのような、TVキャプチャ風の画像(引用画像右)。
引用
【検証】「車が飛ぶくらい」を改変か

この画像は10年以上前からネット上で繰り返し流布しているが、隣り合うフォントの特徴の違いなどから、「これは車が飛ぶくらいの強さ」という実際放送されたテロップの「車」の部分を「僕」に変えたコラージュ画像の可能性が高い。

詳しくはインファクト別稿の検証記事も参照のこと。


(5)「『シン・エヴァ』上映時間は360分」

日付
10/5
発信者
色々まとめ速報(まとめブログ)
媒体
Webサイト
拡散数
Twitterで最大1.4万RT
内容
庵野秀明監督の新作『シン・エヴァンゲリオン』上映時間360分の超大作と判明!?」と題する記事。
引用
【検証】製作会社が否定

記事では、2020年内に公開予定のアニメ映画「シン・エヴァンゲリオン」に関して、製作会社・カラーがTwitter公式アカウントで投稿した画像に「05:59:50:00」とあるのを根拠に、その上映時間を360分(6時間)と推測している。しかし、同アカウントは続く投稿でこれを「絶対あり得ません」と否定している

つまり、映画は管理上の都合からいくつかのロールに分割され、それぞれ1時間のタイムコードが割り振られるが、この1時間全てが完成品の映画に収録されるわけではない。画像中の「05:59:50:00」の表記は「5ロール目の59分50秒0フレーム」を意味するが、それぞれのロールで1時間のうち何分が完成品で使用されるのか不明なため、映画全体の長さはこれだけでは判明しない。

なお、タイムコードは「01:00:00:00」から始まるので、「06:00:00:00」まで全てが使われたとしても計5時間である(参考)。


(6)「英米の学者団体には税金は投入されていない」

日付
10/6
発信者
橋下徹(弁護士・元大阪市長・元大阪府知事)
媒体
Twitter
拡散数
1800RT
内容
学者がよく口にするアメリカとイギリス。両国の学者団体には税金は投入されていないようだ。学問の自由や独立を叫ぶ前に、まずは金の面で自立しろ。」などとする投稿
【検証】英米ともに財源の約8割が国費

日本学術会議の会員任命拒否問題に関連して、全額が国費で運営されている同会議に対し、アメリカやイギリスでは税金が使われていないとする主張だが、これは誤り。両国の団体とも、財源の全額ではないが大部分を国費によって援助されている。

アメリカには政府へ助言を行う学術団体が3つあり、NHKによると、2018年に3団体が連邦政府から受けた助成金などは合わせて約2億ドル、民間などからは約5500万ドル。約8割を国費によって賄っていることになる。イギリスの学術団体「王立協会」は、2018年度には約1億1170万ポンドの収入のうち約8920万ポンドと、こちらも約8割が国からの補助金である(参考)。

額面で見ても、アメリカやイギリスの学術団体へ投じられている国費(日本円でそれぞれ約211億円・約122億円)は、年間およそ10億円とされる日本学術会議の予算を大きく上回る。

橋下氏はその後12日に「説明不足だった」と事実上訂正の投稿をしている。詳細はBuzzFeedによる検証記事も参照。


(7)「学術会議幹部は北大総長室に押しかけて研究を辞退させた

日付
10/5
発信者
奈良林直(北海道大学名誉教授)
媒体
Web記事
拡散数
Twitterで約1.3万RT
内容
「学術会議こそ学問の自由を守れ」と題し、北海道大学の某教授の研究に関して、「学術会議幹部は北大総長室に押しかけ、ついに2018年に研究を辞退させた。」などとする記事(キャッシュ)。
【検証】「総長室に押しかけ」の事実無く記事も訂正

この記事は奈良林氏が理事を務める国家基本問題研究所(国基研)のサイト上に掲載。北大が防衛省の研究推進制度に応募し採択された某教授の研究を、日本学術会議が「軍事研究」と見なし圧力をかけたとする内容だ。この記事を元に、その後産経新聞現代ビジネスなどのメディアでも「総長室押しかけ」が事実として言及されている。【※10/17追記:産経新聞は15日に訂正を発表し、Web版ではこの記述が削除されている。】

しかし12日、「学術会議幹部が北大総長室に押しかけた事実はありませんでしたので、『学術会議からの事実上の圧力で、北大はついに2018年に研究を辞退した』と訂正します。」との文言とともに、記事は訂正されている

BuzzFeedによる検証記事では、北大広報課の担当者が取材に対し「押しかけたという報道を受けて、当時の総長の面談記録を確認したが、日本学術会議関係者の方が総長に面談されている記録はなかった」と回答。「事実上の圧力」に関してもあくまで自主的な判断としているが、北大が学術会議の声明を踏まえて研究資金を辞退したことは事実である(参考)。


その他

FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)では新型コロナウイルスに関する情報の検証結果などをまとめた特設サイトを開設。国内外の真偽に疑義のある情報を紹介し、随時更新している。

また過去のまとめでも、新型コロナウイルス関連の様々な誤情報についても検証を紹介している。

 

(過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2020年10月21日の予定です)

 

※この記事の調査には、インファクトの西村晴子が協力した。

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