「中国人技能実習生は一万人以上」「村の人口の3割以上が中国人の占冠村」などと書かれたツイートが拡散したが、正確ではない。占冠村の人口に占める中国人の割合は3%程度だ。「中国人」を「外国人」と読み替えればほぼ正確だが、投稿内容は「中国人」と特定しており、発信者は指摘を受けて一部訂正の投稿をした。(楊井人文、大船怜)
本当にいい加減にして欲しい。中国人技能実習生は一万人以上になる筈。更に中国資本が所有する宿泊施設も多数。例えば村の人口の3割以上が中国人の占冠村などは中国のトマムリゾートがぼろ儲けしないのか?【北海道は外国人技能実習生の水際対策の宿泊費を全額補助】
(Twitter、2020年10月20日投稿)
【不正確】 北海道における中国人の技能実習生は約3400人、占冠村の人口に占める中国人の割合は約3%。投稿された内容の「中国人」を「外国人」と読み替えると、ほぼ正しい。
元北海道議会議員の小野寺まさる氏が投稿したこのツイートは、道による外国人技能実習生への宿泊費補助に関するニュースサイト記事を参照しながら「中国人技能実習生は一万人以上」「村の人口の3割以上が中国人の占冠村」などと書かれており、2400件以上リツイートされ、拡散した。
本当にいい加減にして欲しい。中国人技能実習生は一万人以上になる筈。更に中国資本が所有する宿泊施設も多数。例えば村の人口の3割以上が中国人の占冠村などは中国のトマムリゾートがぼろ儲けしないのか?【北海道は外国人技能実習生の水際対策の宿泊費を全額補助】 https://t.co/XnzsmTmOei
— 小野寺まさる (@onoderamasaru) October 20, 2020
まず、「中国人技能実習生は一万人以上」という部分は、文脈上、北海道における人数を指すと考えられるが、2019年の道内の外国人技能実習生は全体で11218人。うち半数以上をベトナム人が占め、中国人は3454人である(北海道庁作成の「外国人技能実習制度に係る受入状況調査 2019 年調査結果報告書」)。
ちなみに、日本全国の外国人技能実習生は25万人あまりで、うち中国人はベトナム人に次いで多く約8万人となっている(2017年=平成29年現在、厚生労働省の資料より)。
「中国資本が所有する宿泊施設も多数」という部分は、検証困難なため、ここでは検証を保留しておく。
「村の人口の3割以上が中国人の占冠村」は、明らかな事実誤認だ。占冠村は、道による2020年(令和2年)1月1日時点の統計で総人口1613人、うち外国人は約32%の516人。一方、法務省による2019年12月末時点の統計で占冠村の在留外国人は547人、うち中国からは57人(最も多いのは台湾の185人)。つまり、村の総人口に占める中国人の割合は約3.5%(台湾人を含めても15%)と推定される。
最後に、「北海道は外国人技能実習生の水際対策の宿泊費を全額補助」という指摘も見ておく。新型コロナウイルス感染拡大防止のための対策として10月の補正予算に盛り込まれたこの制度では、1泊1万円・14日(15泊)分が上限とされている。対象は2020年7月29日以降新たに入国した実習生だ(詳細ページ。要綱参照)。ただ、入国後の待機期間14日分をカバーする上、宿泊費が1泊1万円以内に収まるケースが多いとすれば「事実上、全額補助」と言うこともできる。
発信した小野寺氏は、インファクトの取材を受けた後、「中国人」ではなく「外国人」だったと一部訂正するツイートを投稿した。
結論
北海道における中国人の技能実習生は約3400人、占冠村の人口に占める中国人の割合は約3%。投稿された内容の「中国人」を「外国人」と読み替えるとほぼ正しくなるが、当初は「中国人」と投稿していたので「不正確」とした。
(冒頭写真はflickrより)
(この記事は、FIJリサーチャーの日高大氏、佐藤翠氏の協力も得て作成しました。)