インファクト

調査報道とファクトチェックで新しいジャーナリズムを創造します

厚生労働省がワクチン接種の世論形成のために記者勉強会を実施【ワクチンのファクト⑬】

厚生労働省がワクチン接種の世論形成のために記者勉強会を実施【ワクチンのファクト⑬】

前回紹介した入札(参照)の後、2021年5月25日に「『新型コロナウイルス感染症のワクチン広報プロジェクト』業務一式」と題する入札の実施が公告された(参照)。厚生労働省が実施した「ワクチン広報プロジェクト」ではどのようなことが行われたのだろうか。入手した資料から、厚生省がマスコミの記者向けに新型コロナワクチンに関する定期的な勉強会を実施するなど、メディアとの関係を重視していることがわかった。(田島輔)

広報プロジェクトの目的

InfFactでは、「ワクチン広報プロジェクト」の内容を確認するため、問題の入札案件に関して入札仕様書などの情報公開請求を行った。今回の記事では、入札仕様書の記載に基づいて、「ワクチン広報プロジェクト」の内容について解説する。

(情報公開請求により入手した入札説明書)

まず、厚生省が入札を実施した「広報プロジェクト」の目的を確認しておこう。入手した入札仕様書には次のように記載されていた。

(入札仕様書に記載された「事業の目的」より)

結論部分が「定量的な国内の新型コロナワクチン接種数の増加を目指す。」となっている。これはワクチン接種率を上げる目的である以上仕方ない。しかし、そのために、「広報プロジェクト」の目的が適切な情報提供よりもワクチン接種を向上させるために都合の良い情報の拡散に力点が置かれるようでは問題だ。

なお、この広報プロジェクトを落札したのは「株式会社プラップジャパン」というPR会社だ(参照)。プラップジャパンはかつて自民党と契約し、2005年の郵政選挙の際に自民党の広報改革を進めたことが報じられている(参照)。

契約書を確認すると、契約期間は令和3年7月26日から令和4年3月31日となっており、先月末まで広報プロジェクトは継続していたということになる。

次に、「広報プロジェクト」の具体的な内容を見てみよう。「広報プロジェクト」内の具体的な業務は以下のとおりだった。

・新型コロナウイルスワクチンQ&A特設サイトに関する運用支援
・厚生労働省SNSの運用支援
・マスメディアを通じた効果的な広報の実施
・非科学的な情報等に対する対処

「マスメディアを通じた効果的な広報の実施」と「非科学的な情報等に対する対処」とは具体的に何を意味するのだろうか。
この2つについて詳しく見てみる。

厚生労働省が記者向けの「勉強会」を実施

「マスメディアを通じた効果的な広報の実施」については、仕様書の中で次のとおりに説明されている。

(入札仕様書に記載された「マスメディアを通じた効果的な広報の実施」の内容)

そして、実行される施策の具体的な内容として以下の記載があった。厚生労働省は、コロナワクチン接種率向上のため、定期的な記者勉強会を実施していたようだ。

厚生労働省が実施していた勉強会の具体的な内容や資料は不明だ。しかし、マスコミでのワクチンに関する報道が、無批判に厚生労働省の見解を『効果的に』伝えるだけのものなっていなかったのか、今後検証が必要だろう。

「非科学的な情報」についてメディアと面談を実施

次に、「非科学的な情報等に対する対処」との業務については、マスメディアやインターネット上において、『非科学的な情報』と判断された情報を収集し、訂正作業が行われたようだ。

特にマスメディアに対しては、報道の中で「非科学的な内容」と判断されたものに関し、書面や面談での申し入れが予定されていた。

(非科学的な情報に関し、マスメディアとの面会アポイント設定も業務の内容)

厚生労働省が、ワクチンに関し、どのような基準で「非科学的な内容」と判断しているのかが問題になる。

この連載ではワクチンに関する政府の情報開示を検証している。その経緯からは、メディアに流れる情報がワクチンの安全性を強調することに偏っていると感じる。仮に、それが厚生労働省からメディアへの、「非科学的な内容」に関する書面や面談での申し入れも影響しているとすれば、正しい情報の開示と言えるのか疑問を覚える。

外部有識者とのアドバイザリー契約

さらに、この「広報プロジェクト」は、科学的知見に関し外部の有識者をアドバイザーとして採用して進められることになっている。
入札仕様書によれば、採用される外部有識者は「令和3年7月までに行った事業の実施内容を踏まえ」て選定されることになっており、今回の入札以前から厚生労働省と関係のある人物達であるようだ。

厚生労働省のワクチンQ&A特設サイトの内容も、アドバイザリー契約を結んだ外部有識者の監修を受けているとのことだ。

また、メディアに提出する資料について外部有識者の支援を受けているということだろう。

そして、金額は不明であるが、外部有識者にはアドバイザリー費用が支払われることも予定されている。

(「ワクチン広報プロジェクト」に関する見積書より。赤線は筆者による。)

新型コロナワクチンは人類に初めて使用されるmRNAワクチンである以上、科学的知見についてアドバイスを行うことができるのは最先端の知見をもっている有識者であって、誰でも行えるものではない。
誰が厚生労働省のQ&Aを監修しているのかは一般の国民にとって重要な問題であることに加え、アドバイザリー費用として公金が支払われてる以上、有識者が誰なのかは明らかにされるべきではないだろうか。

メディアと政府の関係は適切だったのか?

今回の入札仕様書からは、厚生労働省がワクチンに関してマスメディア向けの勉強会を行い、報道内容に関して面談を設定するなどしていることが分かった。

「勉強会」でどのような内容が話し合われていたのか、厚生労働省がどのような報道内容に対して面談等の申し入れを行ったのかは一切分からない。

新型コロナのワクチンに関しては、副反応やワクチンの効果について当初の想定とは異なる事態になっている。想定されていなかった4回目のワクチン接種が準備されており、それが終わる状況には無い。

こうした中で、マスメディアの報道でワクチンの安全性だけが強調される状況は健全と言えるのだろうか?そうした状況が逆に、ワクチンに過剰な反発を生む側面も有るのではないか?厚生労働省が指摘する「非科学的な情報」とは何か。マスメディアが政府の方針と異なる報道をしにくい状態にはなっていないのか?かつて原発の安全神話をマスメディアが報じてきた過去を私たちは知っている。

そのような疑問を払拭するためにも、「勉強会」の内容や、報道に内容に関する厚生労働省とマスメディアとの面談内容は明らかにされるべきだろう。

Return Top