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重篤事例で「回復」したのは半数以下【ワクチンのファクト③】

重篤事例で「回復」したのは半数以下【ワクチンのファクト③】

これまで、重篤な副反応の多くが女性に発生していることや、副反応には様々な症例が存在していることを明らかにした。今回は、医師が「関連あり」と判断した重篤事例の回復状況について検討する。重篤な副反応が発生した後、症状は回復しているのだろうか。調べると回復したのは半数以下だった。(田島輔)

心筋炎と診断された男性カメラマン

「夜中に胸が痛くなったんです。寝ていました。でも、胸が、ものすごくズキズキする。

起き上がろうとすると激痛になるんです」

ワクチン接種後に心筋炎になった男性が語った。テレビ局でカメラマンを務める58歳。

テレビ局のカメラマンはデスクワークではない。日々が筋力トレーニングと言って良い。カメラを抱えて現場を飛び回り、時には重い三脚を抱えて走り回る。優秀なカメラマンで知られる彼も、事件、事故、スポーツの現場を走り回ってきた。コロナ禍までは海外へもよく行っていた。

その彼が私たちに語ったのがワクチン接種後の心筋炎だった。それはワクチン接種後しばらく後に起きたという。

「8月28日の二回目の接種でした。都内の接種会場です。ワクチンはモデルナでした」

気のせいか、多少苦しそうに話している。何時に接種したのか尋ねた。

「ええ、14時50分。午後2時50分の接種でした」

一般的に、2回目のワクチン接種では強い副反応が出る。人によるが、接種から30時間後に発熱があったケースも聞く。彼はどうだったのか?

「その晩は大丈夫でした」

「晩は大丈夫」と言ったが、その夜中に急変する。それが冒頭の言葉だ。「激痛としか形容できない」と言った。

「寝返りをうつと激痛」に更に襲われる。眠るどころではない。そのうち、更に怪しくなる。

「深く息を吸っても痛くなりだしたんです」

一瞬、死を覚悟したという。実家で親の世話をしている妻、そこに身を寄せている娘のことが頭をよぎる。しかしここで死ぬわけにはいかない。

やっとの思いで立ち上がり携帯を手にした。そして、接種会場で言われたコールセンターに電話をした。

「時間?もう痛くて時計なんて見ている状況ではありませんでした。外は薄っすら明るい・・・そんな感じだったとは思います」

すると「サイトで循環器系の病院を自分で探してください」と指示された。

「自分で探せ」に不満を言っている余裕も無い。紹介された病院検索サイトで病院に連絡して看護師から当直の医師につないでもらった。症状を伝えると

「救急車を呼んで直ぐに来なさい」

そう医師が言ってくれて助かった。しかし救急車を呼ぶと近所に迷惑がかかる・・・そう思って苦しい思いをしながらバイクで病院に走った。

病院では素早く対応してくれた。とても立って歩けない。車いすに座って病院内で検査を受ける。医師から問われても答えられるのは一言だ。

「ワクチン以外なにもない」

まず抗原検査。それから心電図~血液検査~レントゲン~CT検査。 しかし治療ができるわけではない。医師は「多分、心筋炎だろう」と診断。座薬などで痛みを抑える措置をとって病院を出た。

実際にはまだ回復していないという。病院でもらったロキソニンを飲んで痛みを和らげているが、薬の効きめが切れると痛みが出る。その日を振り返ってこう言った。

「自分は心筋炎として記録されているのかわからないんです。医師も、「恐らく」といった言い方ですから」

「関連あり」かつ「重篤」事例の回復状況

このシリーズの第1回でも整理したとおり、医師がワクチン接種との関連を認めた重篤事例1741件のうち、症状が「回復」したのは、674件と4割に満たない。冒頭のカメラマンのケースは仮に数字として加えられていれば回復していない人に入るだろう。

また死亡事例も59件となっている。ただし、この数字はワクチンによるものとは結論づけられるわけではないという。厚生労働省のワクチン分科会副反応検討部会の専門家はワクチン接種との因果関係について評価不能と判断している。その専門家の判断はどうであれ、「評価不能」で終わらせて良い話ではない。


こうした回復事例、死亡事例に不明の206件を除いた802件では、現在も何らかの治療が継続されていると考えられるが、冒頭のカメラマンのように薬をわたされるだけというケースなのかもしれない。

後遺症が発生した事例

特に、後遺症が残ってしまった事例も31件存在しているが、後遺症が発生した事例について10代から40代までと50代以降で男女の内訳を整理したところ、40代までの世代では女性に後遺症が発生した比率が圧倒的に高く、50代以降では男性の比率が高いことがわかった。

次に、後遺症が発生した事例について、具体的な症状をみてみると以下のとおりであった。40代までの世代では、後遺症が発生した女性14人のうち6人がアナフィラキシーを発症していたが、残りの8人はアナフィラキシー以外の症状であった。

未回復となっている事例

続いて、「未回復」の事例は具体的にどのような症例で発生しているのだろうか。報告義務が定められている又は厚生省が報告を推奨している15症例について、「未回復」の事例が何件発生しているのか整理した。

未回復となっている上記症例の男女別内訳は以下のとおりだ(なお、「けいれん」については性別不明が1名存在する。)。
これまでにも見てきたとおり、未回復の事例も女性が多いという結果だった。

医師がワクチン接種との間に「因果関係あり」と判断した重篤事例の整理は以上のとおりだ。

重篤事例を整理したところ、①女性に圧倒的多くの重篤事例が発生している、②政府がワクチン接種の副反応のとして明らかにしている症状以外にも、医師がワクチン接種と「関連あり」と判断した症状は存在する、③現在のところ、重篤事例で全快しているのは半数以下、であることが分かった。

接種が進んだことで、新型コロナワクチンについても様々なことが少しづつ分かってきた。ワクチン接種については、こうして明らかになってきた事実を勘案しつつ、各個人がリスクとベネフィットを検討し、接種するかどうかを決めることが大切だ。

ワクチン接種は3回目の必要性も指摘されている。政府も検討に入っている。取材に応じてくれたカメラマンに3回目の接種について尋ねた。

「打ちますよ。カメラマンはワクチンを打たないと仕事になりませんから」

ワクチン接種が多くの人の命を救うことは間違いない。しかし一方で、極めて低い確率ではあるがワクチン接種の副反応に苦しんでいる人もいる。それを単に例外的な事例として無視するのか。それとも、そうした事例も踏まえてワクチン接種の効果を高めるための議論をするのか。それが問われている。

(「ワクチンのファクト」は今後も続きます)

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