対象言説
ツイッター速報~BreakingNewsが、7月23日付で【動画あり】「自民党・岸田『人口の9割が外国人でも問題ない』」と発信した。
結論
【誤り】
岸田首相は、外国人の受け入れは大きな課題であり、共生社会を考えていくと話した。ただ共生の仕方は世界様々で、人口の9割が外国人の国もあると例を挙げた上で、日本の状況は異なるので「日本らしい、日本の現実にあった共生社会を考えていく」と述べた。従って記事は根幹部分が事実と異なるので、「誤り」だ。
InFactはレーティングをエンマ大王で示している。
問題のツイートは「誤り」であり、これは3エンマ大王となる。
エンマ大王のレーティングは以下の通り。
- 4エンマ大王 「虚偽」
- 3エンマ大王 「誤り」
- 2エンマ大王 「ミスリード」「不正確」「根拠不明」
- 1エンマ大王 「ほぼ正確」
InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。
ファクトチェックの詳細
今回の発言は、7月22日に開かれた令和臨調の1周年大会の中で、政党党首との対話での質疑応答で行なわれたものだ。令和臨調は、持続可能な社会と民主主義を引き継ぐためとして経営者や労働組合などのトップが集う会合で、2022年6月に発足したもので、正式名称は令和国民会議。
首相官邸のホームページで令和臨調での首相発言を調べたところ、冒頭のあいさつしか記載されていなかった。しかし、令和臨調のホームページで大会の模様がすべて録画配信されており、確認することができた。
岸田首相の発言は「外国人の受け入れに向けた環境整備」をどうするのかという登壇者の質問に対するもので、まず少子化対策とデジタル化を車の両輪としていまの社会経済を変革していくことが重要だと述べた。
ファクトチェックの対象となる岸田首相の発言は以下のところだ。
「少子化対策の効果が出るのは時間を要するので、人口減少に対して日本社会が適応していく、こうした動きを並行して進めていかなければ、現実、不都合が起きてしまう。その適応の一つの考え方としてデジタル社会の導入があると思うが、合わせて外国人の受け入れの問題も一つ大きな課題として取り上げ、現実としてどう対応していくのか考えていかなければならない。基本的には外国人と共生する社会を考えなければならない。共生する社会と言っても、共生する仕方は世界においてさまざまだと思う。先日、中東の3カ国、サウジアラビアとアラブ首長国連邦、カタールに行ってきた。とくにアラブ首長国連邦は、人口は1000万人だが、自分の国の国民は100万人しかいない。900万人の外国人と共生している。カタールも人口は300万人だが、自分の国の国民は30万人しかいない。全体の9割の外国人と共生している。こうした国も世界にはあるわけだ。こういった国と日本の状況は比べるべくもないわけで、日本らしい、日本の現実にあった共生社会を考えていく、これが当然のことであると思っている」
岸田首相はつづけて共生社会の実現に向けたロードマップを取りまとめたことや、語学教育の強化など外国人が暮らしやすい地域社会づくりを進める考えを示した。その上でもう一度、以下のように発言している。
「今後の外国人の受け入れの状況、どうなっていくのか、推計の通り行くのかどうか含めて、現実の社会がどうなっていくのか見極めながら、日本らしい、日本独自の共生社会の道を探っていくということを考えていきたい」
記事の内容はタイトルのみだが、岸田首相は「人口の9割が外国人」の国もあると紹介はしているが、そのことが日本でも「問題ない」とは発言していない。むしろ日本の状況は異なり、日本らしい共生社会を考えていくとしている。
また記事に添付されている動画は、当日の質疑応答から切り取ったものと思えるが、この中でも「問題ない」とは言っていない。
従って記事の根幹部分が事実と異なっており、記事の内容は「誤り」だ。ツイッター速報には、記事の根拠について質問しているが、9月3日現在、返答はない。一方、岸田事務所および首相官邸に問い合わせたところ、「確認ができず、分からない」ということだった。
(清水竜太郎)