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【Fact Check】岸田首相が「国民が将来のために貯めた大切なお金の強制的な拠出を要請」との記事は「誤り」

【Fact Check】岸田首相が「国民が将来のために貯めた大切なお金の強制的な拠出を要請」との記事は「誤り」

対象言説


「『皆様にお力添えを頂きたい』国民が将来のために貯めた大切なお金の強制的な拠出を要請」と岸田首相が発言したとする記事(News Everyday6月24日付け)

結論

【誤り】

岸田首相は、全国信用金庫大会においていわゆる貯蓄を投資への動きを促す発言を行ない、信用金庫に対して「皆様にお力添えを頂きたい」と話した。しかし、国民の貯蓄を強制的に取り上げる趣旨の発言は行なっていない。「皆様」の対象も信用金庫であるところをあえて国民であるかのように書いてあり、根本的に事実と異なることから「誤り」とする。

InFactはレーティングをエンマ大王で示している。
問題のツイートは「誤り」であり、これは3エンマ大王となる。

エンマ大王のレーティングは以下の通り。

  • 4エンマ大王 「虚偽」
  • 3エンマ大王 「誤り」
  • 2エンマ大王 「ミスリード」「不正確」「根拠不明」
  • 1エンマ大王 「ほぼ正確」

InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。

ファクトチェックの詳細


首相官邸のホームページは、岸田首相の発言をすべて載せており、最近で国民の貯蓄に関する発言があったのは、6月21日に開かれた全国信用金庫大会でのあいさつだ。対象記事の発信日から考えて、この大会でのあいさつだと考えられる。

大会は全国の信用金庫を会員としてつくる金融団体、全国信用金庫協会が主催したものだ。

あいさつの全文を見ると岸田首相は、政権が掲げる「新しい資本主義」について以下のように発言している。

「その重要な柱として去年11月、スタートアップ育成計画と資産所得倍増プランを策定し、実行している。こうした政策展開もあって、30年ぶりとなる高い水準の賃上げ、企業部門に醸成されてきた高い投資意欲などこれまでの悪循環を断ち切る挑戦が確実に動き始めており、こうした前向きな動きを更に加速させていく。わたしは日本経済の持続的成長、日本が直面する様々な社会課題の解決を担う主役は、スタートアップであると考えている。皆様におかれましても創業支援を通じて、地域におけるスタートアップの育成をサポートしていただくなど一層の取り組みをご期待申しあげる。また本年を資産所得倍増プラン元年として、NISAの抜本的な拡充・恒久化や、iDeCoの制度改革など、貯蓄から投資へのシフトを着実に実行する。家計との接点を担う皆様方に(信用金庫)、お力添えを頂きたいと思っている」。

岸田首相が「皆様にお力添えを頂きたい」と要望している相手は信用金庫であり、要望している内容は投資を促す非課税制度や自分でつくる年金がもっと普及するように協力してほしいというものだ。

岸田首相の発言は、貯蓄を投資に回す政策を進める発言ではあるが、これらの政策はもともと個人の裁量に任されており、強制するものではなく、「強制的な拠出」にも一切言及していない。対象の記事には、貯蓄を強制的に何に拠出されるのかも明示されておらず、ただ暗に政府が無理やり、貯蓄を奪おうとしているかのような印象を与えている。根幹部分が事実と異なるため、結果は「誤り」だ。News Everydayに記事の根拠について質問しているが9月3日現在、返答はない。

(清水竜太郎)

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