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【FactCheck】資産運用会社の運用成績調査結果、「成績のよかった人の属性 1位、亡くなっている人」は根拠不明

【FactCheck】資産運用会社の運用成績調査結果、「成績のよかった人の属性 1位、亡くなっている人」は根拠不明

「資産運用会社の調査報告によると、運用成績が最も良かった人の属性は亡くなった方である」という画像が拡散した(6月17日時点で、6,462件のリツイート・約3.3万件のいいね)。問題の言説は冒頭の画像とともに繰り返し拡散しているが、この言説は根拠不明であり、注意が必要だ(佐藤翠)。

チェック対象

成績の良かった人の属性

1位、亡くなっている人

(Twitter、2022年6月6日投稿)

結論 根拠不明

【根拠不明】この言説の根拠となったとみられるブルームバーグのラジオ番組では、最も運用成績がよかったのは「口座の存在を忘れていた人たちだった」と説明しており、「亡くなった人」とは述べていない。さらに、ラジオ番組で言及されている「フィデリティ(資産運用会社)」の調査報告書の存在も確認出来ない。

根拠となったラジオ番組の内容

この言説のきっかけとなったと推測されるのは、ブルームバーグのラジオ番組、Masters in Businessでの(後述のビジネスインサイダーの記事によると2014年9月頃に放送されたと推測される)、コラムニストのBarry Ritholtz 氏による、資産運用会社CEO・James O’Shaughnessy氏へのインタビューだ。

この番組で両氏が短期間で運用を行うほど運用成績が悪化するということについて話した際、O’Shaughnessy氏は、運用成績がよかった人の属性は、「口座を持っていたことを忘れていた人たちだった」と答えている。

該当箇所(58: 58~) を見て見よう。

“O’Shaughnessy: Fidelity has done a study as to which accounts have done the best at Fidelity. What they found was…. (フィデリティが最も良いパフォーマンスを出した口座に関して調査を行ったところ、わかったのは… )

Ritholtz: People were dead? (死んだ人の口座だと?)

O’Shaughnessy: No no no, but that’s close though. they were the accounts of people who forgot they had an account. (惜しいですが、違います。最もいい結果を出したのは、口座を持っていたことを忘れていた人たちだったのです。)

この会話にあるとおり、O’Shaughnessy氏は「運用成績が最も良かったのは亡くなった人」と述べていない。

なおRitholtz氏は同様の例として、相続争いで誰も遺産の運用を行わなかった期間が、運用が行われた他の時期よりも良い運用成績を出したことに言及している。しかし、これはRitholtz氏が挙げた例であって、「フィデリティ」の調査報告書に基づくものではない。

このラジオ番組の該当箇所の内容は、ビジネスインサイダーが取り上げている。

フィデリティの調査報告書は存在が確認出来ない

一方で、このラジオで紹介されている、「口座の存在を忘れていた人の運用成績が良い」ことの根拠とされているフィデリティの調査報告書は、インターネットでは見つからなかった。

亡くなった方の運用成績が最も良かった旨の言説について書かれた複数の英語サイト(From the Archives: In Praise of the Dead (Investors)Are The Best Investors Dead?)も、フィデリティの調査報告書の存在が確認できないことに言及している。

フィデリティ投信の日本法人にも、問題の調査報告書の存在に関して問い合わせを行ったが、「フィデリティの担当者の名前がないと取次ぎができない」との回答であり、やはり、調査報告書の存在については確認出来なかった。

結論

対象言説が拡散する発端と推測されるラジオ番組では「最も運用成績が良かった人の属性は、亡くなっている人」との内容は述べられていない。
さらに、対象言説のツイートやラジオ番組で言及されている、運用会社フィデリティの調査報告書はその存在を確認することが出来なかった。
そのため、問題のツイートは、その具体的な根拠が確認出来ないことから、「根拠不明」と判定する。InFactではレーティングをエンマ大王で示しており、「根拠不明」は2エンマ大王となる。

エンマ大王のレーティングは以下の通り。

  • 4エンマ大王 「虚偽」
  • 3エンマ大王 「誤り」
  • 2エンマ大王 「ミスリード」「不正確」「根拠不明」
  • 1エンマ大王 「ほぼ正確」

InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。

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