インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜=ネット上の情報検証まとめ管理人)
今週紹介する“要注意”情報 |
(1)「ヨドバシカメラを装った詐欺のハガキ」
9月30日、あるTwitterユーザーが、ヨドバシカメラ名義で夫宛てに届いたポイント有効期限を知らせるハガキが不審であり、「新手詐欺の可能性」があるとして写真付きで投稿した。投稿は10月8日現在4万件以上リツイートされ、大きな反響を呼んでいる。
投稿者は不審点として、ハガキが自宅ではなく会社宛てに届いたこと、紙や印刷の質が悪いこと、記載された保有ポイント数が実際のものと違うこと、連絡先の電話番号が公式サイトで確認できないことなどを挙げている。
【検証】詐欺とは断定できない
投稿に対しては、自分にも同様のハガキが届いたが詐欺ではなかったとか、ヨドバシに直接問い合わせて正規の電話番号と確認したという別のユーザーからのリプライも寄せられている。BIGLOBEニュースはヨドバシに取材し、「正しいハガキです。ご安心ください」との回答を得ている。したがって少なくとも、ハガキの形式や記載された電話番号から詐欺と判断することはできない。
ただ、保有ポイント数や連絡先住所の問題については解明されていないことなどから(投稿者の勘違いやヨドバシ側のミスなどの可能性も考えられるが)、こうした正規のハガキを模倣した詐欺の可能性も完全には否定できるわけではない。最終的にはハガキを受け取った本人がヨドバシへ確認する以外に確実な判断方法は無い。
(2)「白血病患者が昨年の7倍」
「福島、茨城、栃木、東京で各都道府県国立医師会病院の統計で今年の4月から10月にかけて白血病患者が昨年の7倍になった。その60%が危険な急性白血病」として、福島原発事故による放射線の影響を示唆する文章がTwitterで拡散された(9月28日)。
【検証】創作の疑いが強い
この文章は原発事故があった2011年に出回った話と同一の内容で(つまり文中の「今年」とは2011年のこと)、かつこのような統計の存在は日本医師会によって既に否定されている。
J-CASTニュースの当時の記事が詳しく追究しているが、これは元々匿名掲示板に投稿された文章で、ある新聞に記事として掲載されていたが削除されたものだと説明されていた。
しかし、そもそも医師会病院は国公立でないため「国(公)立医師会病院」と呼ばれる組織は実在しないなど、新聞記事として不審な点が多いため、文章全体が掲示板投稿者による創作の疑いが強い。
(3)「大村知事がライダイハン問題への言及に『誹謗中傷』とツイート」
あいちトリエンナーレ内の企画展「表現の不自由展・その後」に関する一連の問題について、Twitter上で一般ユーザーとやり取りしていた大村秀章愛知県知事が「誹謗中傷は、ご遠慮いただいてます」と述べたことが物議をかもした。このユーザーがやり取りの中でライダイハン(ベトナム戦争中に韓国軍兵士が現地女性との間にもうけた子どもで、韓国兵による性的暴行があったと指摘されている)に関する質問をしていたことから、大村知事がライダイハン問題への言及を「誹謗中傷」と見なして意見を拒絶しているとして批判が起こった。
【検証】大村知事の真の意図は不明
ツイートを投稿時刻順に並べると、ライダイハン問題に関する質問に大村知事は「一般論として、解説をしっかりとつければ、ありだと思います。」と返答している。これを受けて質問者はさらに「ちなみに大村さんの写真も燃やしたりもありですよね?」と聞いているため、「誹謗中傷は、ご遠慮いただいてます。」は時系列に照らせばこれに対する返答と読める。ライダイハン問題の展示に関して一旦「あり」と回答しておきながらすぐさま「誹謗中傷」と翻るのは不自然なので、「誹謗中傷」は写真を燃やすという話に対する返答だという推測は成り立つ。
一般論として、解説をしっかりとつければ、ありだと思います。
— 大村秀章 (@ohmura_hideaki) September 27, 2019
ありがとうございます。
ちなみに大村さんの写真も燃やしたりもありですよね?もちろん。— morinokuma (@3k6og9uMa) September 28, 2019
誹謗中傷は、ご遠慮いただいてます。
— 大村秀章 (@ohmura_hideaki) September 28, 2019
しかし、上に引用した通り、大村知事の両ツイートがともに1つ目の質問に対する返信の形式を取っていることも事実である。そのため、これだけ見ても大村知事の真の意図としてどちらの解釈が正しいのか断定はできない。
(4)「ベトナム人女性をレイプし切断する韓国兵の写真」
「ベトナム人女性をレイプした後、切断して楽しむ韓国兵たち」というキャプション付きでTwitterで拡散された画像は、横たわった複数の遺体の傍に数人の兵士が立つ白黒写真である。立っている兵士たちの顔は写っておらず、唯一顔の写る座った状態の兵士は「同行した米兵」と説明されている。
【検証】画像のキャプションは虚偽
この件はバズフィードが詳しく検証している。それによると、写真は元々ベトナム戦争で米軍やベトナム共和国軍に従軍したカメラマンの石川文洋氏が撮影したもので、ネット上で拡散されている転載版は上部がトリミングされている。オリジナルの写真には写っている立った兵士たちの姿は、一見して韓国軍とは見えない。
したがって「ベトナム人女性をレイプした後、切断して楽しむ韓国兵たち」というキャプションは虚偽と言える。
(5)「『死亡事故を撮影する日本人』とCNN報道」
10月2日JR新宿駅で起きた人身事故に際し、現場を撮影しようとする利用客に対し駅員がモラルに訴える異例の呼び掛けをしたことが話題になった。これを受けてか、4日頃からTwitterではアメリカのCNNの放送画面をキャプチャしたような下の画像が拡散された。
【検証】CNNが放送した事実はなく、画像は合成
この画像自体は2014年から存在している。左の車両部分と右の群衆部分は元々Twitterに投稿された別々の写真で、上掲の画像はそれを巧妙につなぎ合わせて編集したものである。
さらに、画面下部に写る「US lawmaker warns Iraq」は2012年のニュースであることから、CNN風のロゴや字幕は後から合成されたコラージュと見られる。その他にも不審な点はいくつか挙げることができるが、詳しくは筆者のファクトチェック記事も参照のこと。
(次回は、2019年10月16日の予定です)