インファクト

調査報道とファクトチェックで新しいジャーナリズムを創造します

《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.71/2021.2.28)

《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.71/2021.2.28)

これまでインターネット上で話題になった“要注意”情報をお届けしてきました。このシリーズは2019年10月からほぼ毎週連載してきましたが、今回(71号)をもって休止となります。ご愛読ありがとうございました。今後のインファクトでのファクトチェックに引き続きご注目ください。(大船怜ネット上の情報検証まとめ管理人)


(1)「イスラエル ワクチン接種進んでも死者数増加」

日付
2/25
発信者
福田安志(中東研究者)
媒体
Twitter
拡散数
1900RT
内容
イスラエルでは、ワクチン接種が進んでも死者数は増加を続けている。」とする、グラフ画像付きの投稿
引用
【検証】グラフは累計数 1日あたりでは減少傾向

イスラエルでは、新型コロナウイルスのワクチン接種を2020年12月19日より開始、その後も世界で最も速いペースで接種が進んでいる。

福田氏の示したデータは一見このワクチンの効果に疑問を呈するもののように見えるが、グラフタイトルにあるようにこれはあくまで累計の死者数であることに注意が必要だ。死者が1人でも出る限りは、累計数が増加し続けるのは必然である。

1日あたりの死者数で見た場合、世界保健機関(WHO)のデータによれば、イスラエルでは1月下旬をピークに現在減少傾向。「増加を続けている」という表現は誤解を招く可能性がある。福田氏はその後、1日あたりの死者数感染者数のグラフを投稿し直している。

1日あたりの死者数の減少はロックダウン政策の強化などの影響も考えられ、一概にワクチンの効果と断定することはできない(イスラエルの感染状況やロックダウンについてはロイター通信のまとめも参照)。しかし、同国保健省は、ワクチン接種により死亡率は大幅に抑制されるなどとする調査結果も発表している(参照12)。


(2)「地震記者会見で笑う加藤官房長官(画像)」

日付
2/14
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
2000RT
内容
東北地方の地震についての記者会見で加藤勝信内閣官房長官が笑顔を見せているかのような画像の投稿。
引用
※アカウント名等モザイク処理は筆者による
【検証】加工された画像か

2月13日午後11時過ぎ、東北地方で最大震度6強の強い地震が発生。翌14日午前0時頃、加藤勝信内閣官房長官は緊急の記者会見を開き、被害状況や政府の対応などについて説明した。

上掲の画像は、テロップなどの様子から、FNN系列で放送されたニュース映像の一部のように見える。しかし、実際の映像には加藤官房長官が笑顔になるシーンは見当たらない。

FNNで放送された加藤官房長官の会見映像から、投稿画像と同一とみられるシーン

顔の表情などの画像加工は、アプリなどを使って今や誰にでも簡単に可能だ。加藤官房長官の画像も、このようなツールを使って表情を変えられたものである可能性が高い。


(3)「地震後千葉市原方面で爆発」

日付
2/13
発信者
山本一郎(作家・投資家)
媒体
Twitter
拡散数
1万RT
内容
なんか千葉市原方面で爆発してるんですけど」とする画像付きの投稿
引用
【検証】余剰ガス処理用の炎

山本氏の投稿は2月13日の地震直後に行われたもので、写真には赤い炎のような光が写って見える。千葉県千葉市から市原市にかけては海沿いに工業地帯が広がり、当時の震度は3~4だった(参照)。

千葉市市原市では火災・事故発生時に消防局からリアルタイムで情報が発信されることになっているが、この時臨海部で火災発生の報告は無かった。

赤い光は、製油施設などで余剰ガス放出の際に出る「フレアスタック」と呼ばれる炎だったと考えられる。施設が地震などの非常時に一時停止すると、施設内で消費されない余剰ガスが普段より多く発生するため、これを無害化するために燃焼させ大きな炎が上がるという。詳細は朝日新聞日刊SPA!の記事を参照。

山本氏はその後、「フレアスタック」を指摘する投稿をいくつかリツイートしているものの、上掲投稿自体は現在もそのまま残されている。


(4)「トランプ氏、審理された選挙訴訟の2/3で勝っていた

日付
2/9
発信者
大紀元
媒体
Web記事
拡散数
Twitterで最大2200RT
内容
 「トランプ氏、審理された選挙訴訟の2/3で勝っていた」と題する記事
【検証】大半は大統領選と無関係の訴訟 英語版は既に修正

大紀元の記事を基にした、まとめサイト「トータルニュースワールド」の投稿も約1200RTを獲得している。

記事は大紀元の英語版である「エポックタイムズ」で2月7日に掲載されたものの日本語版。活動家のジョン・ドロズ・ジュニア氏が「2020年の大統領選挙に関連して起こされた81件の訴訟」を調査した結果を取り上げ、「裁判所が訴訟の内容に基づいて審理した22件の訴訟のうち、トランプ氏と共和党は15件で勝訴したという。」「これは、裁判所で完全に審理された訴訟のうち、2/3でトランプ氏が勝ったことを意味する。」などとしている。

ドナルド・トランプ前大統領は、自らが敗北した2020年11月の大統領選挙で大規模な不正が行われたと主張。弁護団や共和党関係者らが多数の訴訟を起こしたものの、そのほとんどで敗訴や訴え取り下げなどとなっており、勝訴したものも不正を認定したり選挙結果に影響を与えたりするような内容ではない(参考12)。

ドロズ氏が調査したのは、このような大統領選に直接関係する訴訟ではない。ドロズ氏が公開したデータシートに並ぶのは、トランプ氏が訴訟に関わっていないものや、大統領選より前の訴訟などが含まれ、ほとんどはトランプ氏が主張する選挙不正について審議したものではない。

英語版のエポックタイムズでは、当該記事の見出しは「審理された選挙訴訟の2/3はトランプ氏に有利な判決だった」と譲歩したものに既に変更されている。しかし、現在のところ日本語版の大紀元でこの変更は反映されていない。

詳細はPolitiFactの検証記事を参照。


 

(過去の回をまとめて見たい方はこちらから。)

Return Top