インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜=ネット上の情報検証まとめ管理人)
今週紹介する“要注意”情報
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(1)「会ったこともない億万長者の子どもを産んで養育費2億円」
日付
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11/11 |
発信者
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GIGAZINE |
媒体
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ニュースサイト |
拡散数
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Twitterで3300RTなど |
内容
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「会ったこともない億万長者の子どもを産んだ女性が養育費2億円をゲット、その驚きの方法とは?」と題し、 アメリカでホテル清掃員の女性が宿泊客である億万長者の男性の使用済みコンドームを拾って膣に流し込み妊娠し、裁判所が子供の養育費として200万ドル(約2億1810万円)の支払いを男性に命じた、と伝える記事。 |
【検証】元はジョークサイトによるフィクション
記事はTwitterで引用され最大3300RTされたツイートもあったほか、一時「#養育費2億円」のハッシュタグがトレンド入りするなど、大きな反響を呼んだ。しかし、この話は元々海外のジョークサイトが作成したもので、全くのフィクションである。詳細はBLOGOSやSnopesなどを参照。
GIGAZINEは12日にこの話がフィクションである旨を記事末尾に追記したが、他のニュースサイトで配信された版ではいまだ訂正が行われていないものもある。
(2)「有田芳生議員は昔日本人ではなかった」
日付
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11/13 |
発信者
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立花孝志(NHKから国民を守る党党首) |
媒体
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拡散数
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1200RT | |
内容
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「有田ヨシフ参議院議員は昔日本人ではなかったのか? 外国人が国会議員になれる日本・・・」とのコメントとともに、ハングルで書かれた有田芳生参院議員の身分証と見られる写真を引用した投稿。 |
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引用
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【検証】北朝鮮が他国民に発給するビザ
この写真は2015年に有田氏本人がツイートした、北朝鮮への入国ビザである。自国民に発給されるパスポートと違い、ビザは入国許可を受けた他国民(北朝鮮であれば北朝鮮以外の国民)に向けて発給される。
立花氏が引用した画像では解像度が低く読めないが、有田氏が投稿した元の写真を拡大すると国籍欄に「일본」(日本)と書いてあるのが分かり、かえって有田氏が日本国籍を有していることを証明するものになっている。
(3)「『桜を見る会』前夜祭に銀座久兵衛の寿司」
日付
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11/12~ |
発信者
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複数の立憲民主党所属議員や著名人ら |
媒体
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Twitter、ブログなど |
拡散数
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石川大我参院議員のツイートは5900RT(ほか省略) |
内容
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安倍首相後援会がホテルで開いた「桜を見る会前夜祭」で夕食に「銀座久兵衛の寿司」が出ていたとの情報 |
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引用
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【検証】久兵衛側は完全否定 一部議員は訂正
この疑惑に絡んで「久兵衛の寿司」に初めて言及したのは、12日の野党合同ヒアリングでの黒岩宇洋衆院議員(立憲民主党)の「写真で見る限りでは、寿司など、久兵衛のですね、お寿司が出たりとか」という発言と見られる。入手した写真を見ての推測とも取れるが、なぜ写真だけで「久兵衛の寿司」と分かったのか、根拠ははっきりしない。
その後、同党の石川大我参院議員(2回目のツイート)、中谷一馬衆院議員(リンクはキャッシュ)、塩村あやか参院議員らが次々と「久兵衛」に言及。蓮舫参院議員も「久兵衛の寿司」と書かれた小説家の平野啓一郎氏のツイートを引用してコメントした。
野党議員らは「久兵衛」の根拠として一時、政治評論家の田崎史郎氏によるテレビ出演時の発言を挙げていた。実際、田崎氏は14日のテレビ朝日『モーニングショー』で以下のように言及している。
「これね、聞いてみますと立食パーティーなんですね。テーブルがいくつもあってその中に寿司があったかもしれない。ですけれども850人の方々に全員に久兵衛の寿司を出しているわけじゃないわけですね、当たり前のことながら。(後略)」
しかし、番組ではこの直前に前述の黒岩氏発言(12日)が紹介されたという文脈があり、時系列からしても田崎氏は最初の情報源ではない。
15日には、久兵衛の主人が産経新聞の取材に対し「うちの寿司は出していない。過去何年も調べたが、出ていなかった」などと否定。これに対し黒岩氏は「仮定の話で説明した」としたが、石川氏は「ホテル側から説明を受けた」とした上で、ツイートは伝聞形式で断定ではないと述べている(同紙の19日記事。ただし2回目のツイートは伝聞形式になっていない)。中谷氏や塩村氏はブログやツイートの内容を「久兵衛」に言及しない形に訂正した。
久兵衛主人による否定は当事者の主張で物証等が無いためそのことを差し引いて考えるとしても、立憲陣営が夕食会の寿司を久兵衛と断定した理由は曖昧で、現状では根拠不明と言わざるを得ない。
(石川議員の2回目のツイートについて追記し、画像を差し替えました)
(4)「『桜を見る会』参加者は安倍政権850人、鳩山政権1万人」
日付
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11/12 |
発信者
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一般ユーザー |
媒体
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拡散数
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1800RT | |
内容
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「昨日は新宿御苑に約1万人の方々をお招きし「桜を見る会」を開催しました。」と書かれた鳩山由紀夫元首相の2010年のツイートなどを引用し、「【桜を見る会】 安倍政権時850人 鳩山政権時1万人」とした投稿。 |
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引用
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【検証】比較対象が異なる
鳩山氏が首相時代の2010年に開催した「桜を見る会」に約1万人が参加したのは事実で、政府の広報サイトにもその記録が残る。一方、安倍政権時代の同会参加者は2013年の約1万2000人に始まり、2019年には約1万8200人となった。850人というのはこのうち安倍氏の地元後援者とされる人数だ(鳩山政権時代の地元後援者数は不明)。
なお、同会については「鳩山氏が例年より相当多い人数を呼び、(初めて)1万人の大台に乗った」という話も拡散されたが、これも誤りだ。詳細はBuzzFeedによる検証を参照のこと。
(5)「出生届は親が出しに行かなきゃいけない」
日付
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11/11 |
発信者
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一般ユーザー |
媒体
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拡散数
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7400RT | |
内容
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「出生届、本当に産褥期の体ひきずって新生児連れて、役所まで、わたしが!?出しにいかなきゃいけないの!? 産んでから14日以内に出さないと罰金。同居者いないシングルには過酷すぎ…。」などと書かれた投稿。 |
【検証】提出は代理や郵送も可
出生届は出産後14日以内に届出をする必要があり(戸籍法第49条。海外出産などで例外あり)、正当な理由なく期限内に届出・申請しなかった場合は5万円以下の過料となる(同第137条)。届出人は両親が優先だが、状況によっては同居者・出産に立ち会った医師・法定代理人なども認められる(同第52条)。行政書士の竹内豊氏による解説も参照。
ただし、ここで言う「届出人」とは出生届に署名・捺印を行う人のこと。出生届を実際に役所に提出しに行く人(提出人・持参人・代理人・使者などと呼ばれる)は届出人と同じである必要は無く、親族や友人など誰でも構わない。このことは公式サイトに明記する自治体(例:札幌市、東京都目黒区)もあるが、特に触れていない自治体もある。
自治体によって郵送による提出も可能とみられる。NHKが法務省に確認しているほか、千葉県市原市、茨城県鹿嶋市などが明記している。サイトに記載が無い自治体でも、NHKが取材した東京都渋谷区では連絡すれば郵送提出を受け付けているという。もっとも、NHKでは自治体担当者に「自分で窓口に行くしかない」と説明されたという証言が紹介されるなど、現実的にはこの通りの対応が行われていないケースもあるようだ。
(6)「催涙弾をラケットで打ち返すデモ参加者」
日付
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11/12 |
発信者
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一般ユーザー |
媒体
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拡散数
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6100RT | |
内容
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「催涙弾をテニスラケットで打ち返そうとするデモ参加者現る」などと書かれた、写真付きの投稿。 |
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引用
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【検証】写真は香港デモではなく、2016年フランスのもの
この投稿は「令和のニュースやネタ」を扱うとするアカウントが投稿したものだということもあり、あたかも現在行われている香港のデモ活動での一幕かのように読める。しかし実際は、これは2016年フランスのナントで行われた労働法改正案に対する抗議デモでの光景だ。
これと同じ写真は2018年11月に始まるパリのデモ運動(いわゆる「黄色いベスト」運動)の際にも誤って拡散されていた。
(過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2019年11月27日の予定です)