インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜=ネット上の情報検証まとめ管理人)
新型コロナウイルス関連特集
新型コロナウイルス(新型肺炎)に関連する“要注意”情報のうち、主要なものを簡潔に紹介します。(順不同)
1.「感染者3割が外国人」
→未確認数でほとんどは日本人
厚労省サイト上の資料で、PCR検査陽性者数などに「日本国籍の者○○名(これ以外に国籍確認中の者がいる)」という表記があったため、この「国籍確認中」を全て外国籍とする誤解が生じていた。
実際にはこれは自治体発表のデータで特に国籍が記載されていないものを表すのであって、BuzzFeedの取材に対し厚労省担当者は「確認中の方のほとんどが日本人であると推測されます」と回答している。
4月2日の資料以降、厚労省は「うち日本国籍の者1286人、外国籍の者29人(他は国籍確認中)」のように国籍の情報をより詳しく表示するようになった。
- 新型コロナの感染者「3割が外国人」は事実誤認。厚労省「国籍は集計していない」 (ハフポスト)
- 国内の新型コロナ感染者「3分の1が外国籍」は誤り。グラフが拡散、厚労省の見解は (BuzzFeed)
2.「国民へ配布のマスクは山口県の企業が受注」
→県からの発注
山口県内の企業が製造を受注したと報じられた布製マスクは、県内の子供向けに山口県が発注したものであり、政府が決定した全世帯へ2枚ずつの布製マスク配布とは関係ない。
3.「緊急事態宣言 最短3週間は外出禁止」
→あくまで自粛要請
現行法による緊急事態宣言で行えるのは、海外のような罰則付きの外出禁止措置・都市封鎖の類ではなく、あくまで罰則なしの外出自粛要請である。
- 「緊急事態宣言が発令されたら3週間外出禁止」は誤り。実際は…? (BuzzFeed)
- <著名人による拡散例>きっこ氏(ブロガー)
4.「○○で感染者」
→多数の誤情報が名指しで拡散
各地で感染が広まるにつれ、具体的に店名などを名指しして「店員が感染」「感染者が訪れた」などの誤った噂が広がるケースが相次いでいる。
- 「感染者」名指し ネットで真偽不明の情報広がる 新型コロナ (NHK)
- 「感染者出た」探ると誤情報 新型コロナ巡り「噂」広がる 田舎特有の環境に不安感か (丹波新聞)
- 「感染隠している」とデマ、掲示板に店名 売上も減って (朝日新聞)
- 陸上・塚原さんの練習会巡り「デマ拡散」 知事が正しい認識呼び掛け (中日新聞)
- 「店内を消毒」デマ拡散された店困惑 感染者の情報公開、対応難しく (西日本新聞)
- 「コロナ感染者来店」はデマ 富士宮の肉店、否定ツイート (静岡新聞)
- 『デマ』で風評被害 ネットにうその情報「感染者が訪れた」 飲食店オーナー「本当にしんどい、悔しい」 (FNN)
- 「事実は一切ない」とビッグワン 「新型コロナで感染者」 問い合わせ殺到、業務に支障 (琉球新報)
- コロナ“デマ拡散”人気食堂の客“ゼロ”に (日テレ)
5.「1982年の本が予言」
→現実と異なる描写も 「2020年」は別の本
「1982年出版」の本の中で、2020年に世界で肺炎が流行すること、その発端は武漢であることが予言されているという噂が拡散された。
この本は正しくは1981年出版だが、「武漢」とある部分は当初「ゴーリキー」(現ニジニ・ノヴゴロド)と書かれていて、元はウイルスはソ連の生物兵器だという設定だった。1989年の再版時に冷戦終結を受け設定が中国に変更されたようである。作中のウイルスは致死率100%・潜伏期間4時間など、現実の新型コロナウイルスの特徴と異なる部分が多い。
「2020年に肺炎流行」は別の作者による2008年の本の記述。出版の数年前にはSARS(重症急性呼吸器症候群)が世界で流行しており、この本はこうした実在の感染症に着想を得た可能性がある。
つまり、拡散された噂は、それぞれ別の本が部分的に現実と合致したのを組み合わせ、あたかも1つの本で様々な予言が的中したかのように見せかけているに過ぎない。
- Was Coronavirus Predicted in a 1981 Dean Koontz Novel? (Snopes.com)
- Partly false claim: a 1981 book predicted the coronavirus 2019 outbreak (Reuters)
6.「フロリダの中国人マスク買い占めの強制捜査(動画)」
→別の騒動と混同か
動画はフロリダ州ではなくニューヨーク州のブルックリン。報道されている捜査を受けた人物は氏名がヨーロッパ系のため、恐らく中国人ではない。
フロリダ州では先日、中国人女性がマスクを大量購入する様子を自ら撮影・動画投稿し、多くの批判を受ける騒動があった。上述の誤情報はこの件との混同により生まれた可能性がある。
- Brooklyn man arrested for hoarding masks, coughing on FBI agents (YouTubeの一般投稿)
- FBI bust man charged for allegedly hoarding masks, selling at 700% mark up (YouTubeのCTV Newsの投稿)
- “扫光口罩”的美国华人女子:为了祖国问心无愧 (文学城)
7.「墨東病院が機能停止」
→数時間後に受け入れ再開
都立墨東病院(東京都墨田区)が一時ERと救急の受け入れを制限していたのは事実だが、数時間後には再開。過去の状況であることが伝わらないまま拡散された情報が「機能停止」「医療崩壊」といった誤解を生んだ。
- 拡散した都立墨東病院が「機能停止」という誤った情報。発端は専門家による発信 (BuzzFeed)
- 三次救急及びERの受入について (墨東病院)
8.「加藤茶のTwitterアカウント」
→なりすまし
新型コロナウイルスが原因で亡くなった志村けんさんを追悼するようなツイートを投稿し、2万人以上のフォロワーがいたアカウントだが、加藤さん本人のものではないと所属事務所も否定している。
- 加藤茶になりすましたアカウントが拡散し、一気に2万フォロワー超。その背景は (BuzzFeed)
9.「与謝野晶子はスペイン風邪で子供をなくした」
→感染のみで亡くなっていない
「 スペイン風邪で子供をなくした与謝野晶子。まるで今を見ているような文章を残している。」といった投稿が拡散。与謝野晶子は子供の1人がスペイン風邪に感染したことを書き残しているが、亡くなってはいない。
- 「与謝野晶子がスペイン風邪で子どもを亡くした」は誤り。新型コロナで拡散したが… (BuzzFeed)
その他
FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)では新型コロナウイルスに関する情報の検証結果などをまとめた特設サイトを開設。国内外の真偽に疑義のある情報を紹介し、随時更新している。
また過去のまとめでは、新型肺炎関連の様々な誤情報についても検証を紹介している。
(過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2020年4月15日の予定です)