小池百合子氏が2016年の東京都知事選挙で掲げた目玉公約の一つが「残業ゼロ」だ。ライフ・ワーク・バランスを都庁で先行実施するとしていた。確かに施策は打ち出したものの、結果として残業数が増えるなど、複数の指標が悪化していたことがわかった。(田島輔)
検証対象の公約内容
「残業ゼロ」などライフ・ワーク・バランスの実現を、都庁が先行実施する。
(2016年都知事選の公約「スマートシティー」(6))
検証
小池氏は知事就任後、都庁における働き方改革推進の決意を次のように語っていた。
ともすれば、夜遅くまで働いている職員を有能と評価しがちな意識を上司が改めて、効率性を追求して、定時で確実に成果を上げる『残業ゼロ』を目指す職場とする取組を始めてまいります。そして、『働き方を改革しよう』と宣言した企業も力強く応援し、都民・国民の意識を変えていく。その輪をどんどん広げることで、大きなムーブメントを起こしていきたいと思います。(平成28年第三回都議会定例会知事所信表明)
小池知事は、2016年10月から「20時完全退庁」を基本ルールとし、管理職が、職員のライフ・ワーク・バランスを応援するための行動目標などを職場に宣言する取組み(「イクボク宣言」)を開始。
在宅型テレワークの開始(2017年4月)、勤務間インターバル・連続勤務の禁止(2017年10月)、育児関連休暇制度等の充実(2018年1月)、フレックスタイム制・変形労働時間制の導入(2018年4月)など、人事制度に関する改革を行った。
そもそも東京都のライフ・ワーク・バランスの計画自体は、舛添要一前知事のときに始まったものだ。だが、小池知事のもとでさらに推進しようということは否定できない。
都職員の残業時間は小池都政下で増加
しかし、結果としては、小池都政下において、都庁職員の残業時間は増加していた。
都職員一人あたりの超過勤務時間は、2016年の13.4時間から、2018年には13.7時間と微増。本庁職員の超過勤務時間に限ると、2016年の21.4時間から、2018年の22.3時間と、1時間近くも増加していた。小池都政以前(2015年)と比較しても超過勤務時間は長くなってしまっており、改善はなされていない(東京都資料参照)。
「定時退庁や20時完全退庁に対する職員の意識に差があり、退庁の呼びかけなど機運醸成に向けた取組も十分にされていない」(戦略政策推進本部)などの課題が指摘されている。
男性の育児休業取得率は上昇したが…
男性職員の育児休業取得率は、2016年の4.3%から2018年10.6%と大幅に増加した。民間でも大幅に上昇しており、小池氏は、自らの「実績」としてこれを強調しているが、社会意識の変化という面もあるだろう。
他方、女性職員の育児休業取得率は、小池知事就任前の2015年の92.4%から2018年の91.1%にやや減少した。
小池都政において「働き方改革」を推進していることは確かであるものの、あまり成果が出ているとはいえない。
結論
小池氏が公約に掲げたとおり、都職員の「ライフ・ワーク・バランス」実現を図るため、様々な施策を打ち出したことは事実だ。しかし、都職員の超過勤務時間がかえって増加しており、小池都政以前よりも悪化している指標が複数ある。
よって、都庁での「ライフ・ワーク・バランス実現」については道半ばとし、公約に関する取組みの評定は「可」とした。