2016年の東京都知事選の際、「健康寿命延伸のための予防医療、受動喫煙対策を推進し、地域の医療機関を支援する」との公約を掲げた小池百合子氏。受動喫煙策については強力な条例を制定するといった実績は残していた。(西村健)
検証対象の公約内容
健康寿命延伸のための予防医療、受動喫煙対策を推進し、地域の医療機関を支援する。
(2016年都知事選の公約「スマートシティー」(5))
検証
健康寿命は延伸 小池都政以前からの傾向に変化なし
東京都では、「65歳健康寿命」を「65歳の人が何らかの障害のために日常生活動作が制限されるまでの年齢を平均的に表したもの」と独自に定義して、「65歳健康寿命」の延伸を目標に定めている。この目標自体は、猪瀬直樹知事時代の2013年に策定された「東京都健康推進プラン(第二次)」に盛り込まれたものであって、小池都政から始まったものではない。
65歳健康寿命はグラフ(冒頭)の通り、男女ともおおむね延伸しているのがわかる。この健康寿命は多様な影響、外部影響を受けるもので、小池都政前から毎年少しずつ上昇しており、小池知事就任前後で上昇の傾向に大きな変化はない。つまり、「小池都政」でなくてもあがった可能性も高い。
予防医療、受動喫煙対策は推進
では、公約で掲げたそれぞれの施策についてみてみよう。
まず、予防医療については、小池都政下の2019年度から「フレイル予防活動」を本格化している。「フレイル」とは、虚弱という意味で、年を取ると段々と体の力が弱くなり、心と体の働きが弱くなってきた状態のことを言う。フレイル予防のポータルサイトを開設し、PR動画、リーフレットなどによる啓発を進めている(2018年改定「東京都健康医療計画」)。
4年前の公約における目玉でもあった受動喫煙対策については、2018年6月に「東京都受動喫煙防止条例」を制定した。都、都民及び保護者の責務を定めており、従業員を雇う全ての飲食店を原則禁煙であること、小中学校は屋外の喫煙場所の設置すらできないことといった特徴があった。「改正健康増進法」を上回る厳しい基準であることは注目を浴びた。2020年4月に罰則付きで全面施行しており、それにもとづき禁煙推進企業などの活動を展開している。
ちなみに2018年4月から「東京都子どもを受動喫煙から守る条例」も施行されている。
地域医療機関の支援は具体性なし
「地域の医療機関の支援」については、都議会の所信表明でも具体策への言及がなく、評価しようがない。
なお、小池都政下で、都立病院と公社病院の地方独立行政法人化の方針が決定し、これには反発もある。これは、厚労省の公立・公的病院の縮小・再編の動きが前提にあり、そのなかで都内10の公的病院が対象になったことが背景にあげられる。反対意見もあるが、行政経営的な面で独立法人化して能率向上を図る必要があるいう意見もある。意見の対立する問題であり、独立法人化をもって地域医療支援が後退したと直ちに評価することはできない。
結論
健康寿命は日本全体であがっているので、それが都政の成果なのかは微妙なところである。地域医療機関の支援については評価しようがない。
ただ、予防医療の推進、受動喫煙対策の条例化など、公約を一部実行したことは間違いないので、この公約についての小池都政の取り組みは「良」と評定した。