新型コロナウイルスの感染をほとんど抑え込んでいたといえる中国だが、5月21日から南部の広東省で、感染拡大が再発した。5月31日に、同省内で海外からの流入を除く新規感染確認は10人。いずれも省都、広州市の感染者だった。中国当局はすでに同日午後10時から同市からの人の流出を制限する措置を採っている。(宮崎紀秀/写真は広州市政府の公式アカウントより)
広東省の衛生健康委員会の発表によれば、5月30日、同省内で、海外からの流入を除き新たに20人の感染が確認された。そのうち18人は広州市、2人が仏山市で、感染は広州に集中した。
ちなみ同日、中国では広東省を除けば、海外からの流入以外の新規感染は確認されておらず、この点からも中国が国内でコロナをほぼ抑え込んできたことが分かる。
広東省での感染再発は今月21日から始まった。30日までに海外からの流入を除く新規感染者は26人。この数は、日本では少ないが、今の中国では多い。それ故に感染が他の地に飛び火しないように人の移動を先ず制限した。
広州市は人口1800万人以上を有する同省の省都。感染拡大を受け、広州市は5月31日午後10時から、市民が同市を離れることを厳しく制限する措置を採った。
具体的には、市内の空港、鉄道駅、バス停などから同市を離れる旅客に対し、健康コードでの緑色コードの提示に加え、72時間以内に受けたPCR検査での陰性証明を求める。PCR検査の結果が間に合わなくて、出発時に示すことができない人は、無料でチケットの払い戻しや日程変更ができる。
車で広州から省外に出る人に対しても、72時間以内のPCR検査の陰性証明の所持を求める。
上に触れた健康コードとは、中国ではすっかり汎用されるようになった仕組みで、感染者への接触歴、隔離の必要性、感染リスクの高い地域への訪問歴などの有無が反映されるスマホのアプリ上に示される。いわばその人の安全度が分かるシステムで、緑コードは、安全である証となる。商業施設やレストランが利用客に対し、緑コードの提示を求めることも多い。
広州市は、同時に、貨物車両の正常な運行を確保するために、トラックドライバーのためのPCR検査場所を設置し、無料で検査を行うとも発表した。市外への移動制限によって生じる市民の不安を見越した措置だろう。
市外への移動を厳しく管理すると共に、市内では住民の生活も厳しく制限する措置に出た。具体的には以下のような措置を発表した。
感染者に関わりが深いと見られる地域では、全ての人は自宅待機を基本とし、日常生活以外の活動を一切停止。一家で1日に1人、生活必需品の買い物に行く以外に、その他の人は外出してはいけない。
娯楽場所や屋内の文化体育施設の営業停止。飲食店での店内飲食は禁止。学校では校内に寮があるなどの条件を満たす中学3年生と高校3年生以外は、登校での授業を見合わせ、自宅でのオンライン授業に切り替える。
そしてこれらの地域では、31日から住民の封鎖式管理を始めた。全ての公共スペースを閉鎖し、人の立ち入りを禁止する。住民は、自宅から外に出ず、生活必需品は、地元のコミュニティが届ける、というもの。
地元政府は、正統な理由なく協力せず、防疫対策を妨害したり、重大な結果をもたらしたりした場合には、法的責任を負うと警告している。
感染拡大した都市からの人の流出を抑え、市内では封鎖式管理によって住民の移動を制限する。この方法は、最初に感染拡大を招きながら、今や日常生活をほぼ取り戻した武漢をはじめ、これまで中国がコロナの抑え込みに用い、効果的と考える対策である。
中国は、ワクチン接種が行き渡る以前に、この強い人の移動制限によってコロナをほぼ抑え込んだ。国情の異なる中国と日本はそこが違う。