インファクト

調査報道とファクトチェックで新しいジャーナリズムを創造します

コロナワクチン契約書の非公開問題 不開示不服の審査は1年間進まず【ワクチンのファクト⑲】

コロナワクチン契約書の非公開問題 不開示不服の審査は1年間進まず【ワクチンのファクト⑲】

新型コロナワクチンの供給契約書は全面的な「不開示」となっており、その内容は一切不明だ(ワクチンのファクト⑥)。InFactは、厚生労働省による契約書の「不開示決定」について不服申立てを行ったものの、審査は1年以上も何の音沙汰ない異様な状態が続いている。(田島輔)

「不開示決定」への不服申立て

InFactは、2021年9月17日付けで、ファイザー社、モデルナ社、アストラゼネカ社、武田薬品それぞれの新型コロナワクチン供給に関する契約書について、情報公開請求を行った。

しかし、契約書の一切は「不開示」となっており、その詳細は全く不明な状態だ。

情報公開請求への「不開示決定」を変更させる方法としては、裁判所に「不開示決定」の取消しを求めて訴訟を提起する以外にも、「審査請求」という厚生労働大臣へ不服を申立てる制度がある(参照)。

「審査請求」があった場合、厚生労働大臣は、情報公開・個人情報保護審査会に対して審査請求に対する諮問を行う。情報公開・個人情報保護審査会は、第三者的立場から公平・中立的に「不開示決定」の当否を審査し、不開示が不当と判断された場合は情報公開決定がなされる(参照)。

新型コロナワクチンについては、供給量といった既に公表済みの情報がある。それにもかかわらず、一部黒塗り等ではなく、契約書の全てが完全に「不開示」というのは、あまりに不合理だ。
そこでInFactは、2021年12月28日付けで審査請求を行い、新型コロナワクチン供給契約書の「不開示決定」に対して不服を申し立てた。

1年以上音沙汰なし

しかし、2021年12月28日に審査請求を行った後、1年以上待ったものの、2023年になっても審査会へ諮問した旨の連絡がInFactに来ることはなかった。

審査請求があった後、厚生労働大臣は情報公開・個人情報保護審査会に諮問し、その旨を審査請求した者に連絡しなければならないにもかかわらずだ(情報公開法19条)。

そのため、2023年2月2日、審査請求の状況について厚生労働省情報公開室に問い合わせを行った。
コロナワクチン契約書不開示決定への審査請求について、情報公開室の回答は以下の旨だった。

健康局(※ワクチン供給契約を所管する部署)で審査請求を受けている件数が多いもので、進捗すべくやっております。
コロナワクチン契約書の審査請求については、2月中には審査会に諮問する予定です。

2023年2月に情報公開審査会への諮問を実施する予定ということだが、2021年12月の請求から審査は進んでいなかったということだ。
請求から1年が経過しても審査会への諮問すらしていないというのは、時間がかかりすぎなのではないか。

「諮問」までの期間

そこで、InFactは2022年度に情報公開・個人情報保護審査会が厚生労働大臣の諮問に対して回答した111件について、審査請求から諮問までの期間を調査した。

結果は以下のとおりだ(参照)。

諮問までに1年以上かかったのはわずか2件だ(最長は549日だが、関連した訴訟も提起されており、異例なものと思われる(参照))。
全111件の内、107件が200日以内に諮問されていた。すなわち、約96%(107件)は審査請求から200日以内に審査会へ諮問されているということだ。
したがって、審査請求から1年以上経過して、コロナワクチン契約書に関する諮問を行っていないのは、かなり例外的と言えるだろう。

さらに、諮問に対して審査会からの回答があるまでにも、かなりの期間を要するようだ。2022年度の厚生労働省に関連する審査請求111件について、諮問を受けてから審査会が回答するまでの期間は、平均で480日だった(最長で1428日(参照))

そうすると、仮に2023年2月に厚生労働省が情報公開審査会に諮問を行ったとしても、契約書の開示に関し、審査会の回答があるのは2024年以降になる可能性が高い。

信頼確保のためには「透明性」が必要

コロナワクチンの契約書については、製薬会社に著しく有利な条件であったり、「ワクチン」の利用について制約があるのではないかといった、様々な「噂」が流れている。

こういった「噂」が本当かどうか、コロナワクチンの契約書が一切開示されない状況では、確認することが出来ない。

コロナワクチンに関する情報公開に、政府・厚労省が消極的であることも、ワクチンに関する様々な「陰謀論」が拡散する原因になっている。
「陰謀論」に対処するためには、ワクチンに関する情報公開を進め、「透明性」を高めることで、信頼を構築する必要があるはずだ。

厚労省は、コロナワクチン契約書を「不開示」とした理由の説明書を添付して、情報公開審査会へ諮問するという。
理由説明書はInFactにも送付されることになっている。理由説明書が届き次第、再度、内容を検証する。

Return Top