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【FactCheck】「補欠選挙で不正が行われた疑い」は根拠不明

【FactCheck】「補欠選挙で不正が行われた疑い」は根拠不明

今年4月の衆議院選挙千葉県第5区の補欠選挙で不正が行われた疑いがあるとの指摘が、X(旧ツイッター)などで拡散されているが、選挙管理委員会は不正を否定しており、根拠不明だ。

対象言説 「ラスト1分で6000票が入り英利アルフィア氏が当選。日本でも不正選挙あるんだよ!」

結論 【根拠不明】

InFactはレーティングをエンマ大王で示している。
問題のツイートは「根拠不明」であり、これは2エンマ大王となる。

エンマ大王のレーティングは以下の通り。

  • 4エンマ大王 「虚偽」
  • 3エンマ大王 「誤り」
  • 2エンマ大王 「ミスリード」「不正確」「根拠不明」
  • 1エンマ大王 「ほぼ正確」

InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。

ファクトチェックの詳細

問題が指摘された千葉県第5区は、有権者が多い市川市の大部分と有権者がその半分の浦安市全域で成り立っている。開票の中間発表を調べると発信者が言及している6000票の伸びが見られたのは市川市なので、浦安市ではなく市川市の開票状況を見ていく。

開票はどのように行われたのか。まず投票用紙が入った投票箱は、開票所に運ばれて、一斉に開けられる。投票用紙はそこで混ぜられる。そしてまず候補者ごとに仕分けする作業が行われる。

作業では仕分けをする自動読み取り機が使われる。ここで書かれている氏名が分かりにくいものははじかれて、「疑問票」として別に回される。

次に計算する作業に入る。投票用紙は束にまとめられ、候補者ごとに集められる。

疑問票が有効か判断するのは、選挙管理委員会が選んだ開票管理者だ。各陣営から参加した開票立会人の意見を聞きながら疑問票が有効か判断する。

開票の中間結果は30分ごとに発表される。千葉県選挙管理委員会の発表では、市川市の場合、午後11時30分発表の開票率が85%の段階で、▲矢崎氏が2万6000票余り、▲英利氏が2万7000票余りだった。ところが午前0時発表の開票率が90%の段階で、▲矢崎氏の票が伸びていないのに対して▲英利氏は3万3000票余りとなっていた。英利氏の得票は終盤の30分間で6000票も伸びたことが、X上で拡散する指摘の根拠だ。

これについて市川市選挙管理委員会に確認した。市は、県に対して中間結果を30分ごとに報告している。このうち、英利氏の票だけ極端に伸びたのは、わざと票を貯めるなど意図的なものではなく、たまたまその時、県への報告が多くなっただけだと説明する。その上で、英利氏の疑問票が多かったことを指摘し、疑問票の審査に時間がかかるなどの影響があったのではないかと話している。

公職選挙法では第67条で「その投票した選挙人の意志が明白であれば、その投票を有効とするようにしなければならない」と定めている。疑問票があれば、公職選挙法の趣旨を踏まえて審査しなければいけない。

疑問票の審査はある程度、開票が進んだ段階から開票所の立ち合いにも交えて行われる。開票が進むに従って疑問票も多くなり、法律の趣旨を踏まえて審査に時間もかかっていく。このため多くの疑問票の審査は、どうしても開票がほぼ終わった最終盤になってしまう。英利氏の場合、疑問票がかなりあり、その多くが有効票となったため、開票の最終版になって一気に開票結果に影響を与えたということだ。

民主主義国家において、その根幹たる選挙について厳しい目を向けることは重要だ。InFactはXで拡散した指摘を批判する考えはない。しかし今回の件で不正を疑うには根拠が明確ではない。加えて選挙管理委員会の説明には合理性が有る。従って不正があったのではないかという主張は、誤りと判断しても良いレベルの根拠不明と判断する。

(清水竜太郎)

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