3月25日に福島県から始まった東京オリンピック聖火リレー。コロナ禍でマスク着用や「3密」回避などが叫ばれる状況で、スポンサー企業らが大々的な演出を行う運営方式には批判の声も挙がっている。こうした中Twitterで拡散したスポンサー企業のスタッフが大勢出てマスク無しで聖火リレーをしているかのような写真(冒頭画像)について、検証を行った。(藤 華子)
コカコーラのイメージめっちゃ悪くなった。元々ほとんど飲まないけど永久に飲みたくない感じ。
(Twitter一般ユーザー、2021年3月29日の画像付き投稿)
【ミスリード】 投稿に添付された写真は約1年前に行われた聖火リレーのリハーサルの様子を撮影したものである。
3月25日に始まり現在日本各地で行われている東京オリンピックの聖火リレーに関しては、コカ・コーラや日本生命といったスポンサー企業の宣伝用のトラックが走り、そのトラックの上ではDJが大音量で音楽を流したりするなど、まるで「お祭り騒ぎ」であるとして、リレー自体やスポンサー企業に対して批判が起きている。
上記の批判は東京新聞記者の原田遼氏の聖火リレーを撮影した動画から広まり始め(契約の関係から現在は削除済み)、約1.9万リツイート、1.8万いいねといった多くの反響があった。この件は記事化もされ、その「お祭り騒ぎ」ぶりが批判的に報じられている。このように聖火リレー批判は当時、ネット上で大きなトピックになっていた。
対象言説のツイートでは、添付写真が目下行われている聖火リレーのものだという明確な記述はないものの、一連の聖火リレー批判と捉えることが自然なためファクトチェックを行った。
写真はいつ撮影されたか
この写真の出典は、2020年3月10日付毎日新聞の「聖火リレーはナチス統治下のベルリン五輪で始まった その理由とは」という記事である(当該写真部分の閲覧は有料)。
写真の説明には、「聖火リレーのリハーサルでランナーの前を走り沿道を盛り上げるスポンサーの車やスタッフ=東京都羽村市で2020年2月15日、梅村直承撮影」とある。すなわち、これは現在行われている聖火リレーではなく、2020年に行われたリハーサルの写真である。
2021年3月29日時点で十分な説明無く約1年前の写真を添付した投稿は、あたかもこれが先日始まった聖火リレーで撮影された写真であるかのように読み手に誤解を与える可能性がある。
聖火リレー本番との比較
では、目下行われている聖火リレーのスポンサー車の横を歩く人はマスクを付けいていないのか。
この写真は東京新聞によって3月25日に福島県いわき市で撮影されたものだ。観客に近いスポンサー車の横を歩く人々はマスクをしている。
調査対象となっているツイートの写真はマスクをせずに走るスポンサー企業のスタッフが歩いている。一方、聖火リレー本番の写真を確認すると彼らはマスクをしている。つまり、スタッフがマスクをしていなくてイメージが悪くなったという趣旨の投稿文章は間違った印象を与えるものとなっている。
結論
当該ツイートの添付写真は目下行われている聖火リレーではなく、昨年(20年)2月に開催されたリハーサルの様子を撮影したものだ。ツイートは、それ自体に誤った内容が含まれているわけではないが、マスク着用が日常化した中で現在行われている聖火リレーと誤解させる可能性が高く「ミスリード」と判定する。