
高市首相は衆議院選挙で当選した300人余の自民党議員に一人あたり約3万円のカタログギフトを配布した点を国会で質問され、党支部から政治家個人へ贈ったものなので法的な問題は無いと答弁した。それは確かに法的には問題は無いが、無いからこそ逆に問題とも言える。それはどういうことなのか。
ファクトチェックの形式で書いているが、これはファクトチェック記事ではない。ファクトチェックの形式を用いてファクトを基に問題点をまとめた解説記事と理解して頂きたい。
対象言説
「政党支部から議員個人への寄付として法令上も問題無いものと認識を致しております。」
参議院本会議(2026年2月25日 田名部匡代議員の代表質問に対して)での発言。該当する全発言は以下。
「総選挙後、党所属の衆議院議員全員に対して今回の大変厳しい選挙を経て当選したことへの労いの気持ちも込め、今後の議員としての活動に役立てて頂きたいと考え奈良県第二選挙区支部として品物を寄付したものでございます。品物は本体価格プラス、システム料、プラス送料に消費税をかけまして一人分約3万円で、合計315人分になります。私が支部長を務める奈良県第二選挙区支部の政治資金からの支出となります。政党支部から議員個人への寄付として法令上も問題無いものと認識を致しております。」
結論
「法令上問題無いもの」は正しいが、政党支部から政治家への寄付は政治資金規正法で例外的に認められる点について法律自体に問題があることがかねて指摘されている。また、政党支部には自民党本部から多額の寄付金が払われている。自民党本部が税金である政党交付金を毎年受けていることを考えると、法令上の問題は無いものの、政党支部から政治家への寄付が問題ないとは必ずしも言えない。
ファクトに基づく解説
この問題は週刊文春が報じて明らかになった。報道を受けて立憲民主党の田名部幹事長が2月25日の参議院の代表質問で事実関係を問いただした際に、計315人に対して一人当たり約3万円のカタログギフトを配布したことを認めた。総額は約945万円となる。その際、高市首相は自身が代表を務める党奈良県第二選挙区支部の政治資金から支出したと説明し、「政党支部から議員個人への寄付」なので法に抵触しないとの考えを強調した。
これについて政治資金規正法を確認する。まず、政治資金規正法の21条2には以下のように書いてある。
「何人も、公職の候補者の政治活動(選挙運動を除く。)に関して寄付(金銭等によるものに限るものとし、政治団体に対するものを除く。)をしてはらない。」
つまり、政治家個人が寄付を受けてはいけない。では、なぜ法に抵触しないと高市首相は言えるのか?それはこの条文に続きがあるからだ。この政治家個人への寄付を禁じた21条2には、更に続きの2が有るからだ。
「前項の規定は、政党がする寄付については、適用しない。」
この「適用しない。」という一文が加わっているために、高市首相が代表を務める自民党奈良県第二選挙区支部から政治家個人に行う寄付は法の適用外となっているということだ。
実は政治資金規正法では政治家個人が寄付を受け取ってはいけないという21条2の条文に基いて作られている。だから報告の義務付けは政治団体に対してであり(第12条)、政治家個人には報告の義務を課していない。あくまで政治団体が報告するというのが法律の建付けだ。
高市首相は政党支部から政治家への寄付ということで違法ではないという主張で、それは間違いない。ただ、受け取った政治家個人はその収支について報告の義務がないことから、「前項の規定は、政党がする寄付については、適用しない。」の条文についてはかねてから抜け道との指摘がある。つまり、違法ではないが問題がないわけではない。
加えて、政党支部が支払っているということは、その原資は何かという問題もある。下は2024年の支部の収支報告書の一部だ。総額で3300万円が自民党本部から交付されていることがわかる。

その前年の2023年には1270万円、2022年には1400万円が自民党本部から交付されている。
高市首相は自身のXに、政党交付金は今回のカタログギフトの購入には「一切使用することはありません」と書いている。政党交付金には別途、その為の収支報告書の提出が求められるので、当然、そこにはカタログギフトの購入が記載されることはないだろう。ただ、それがどこまで実態を明確にしたものかにはかねてから疑問があるのも事実だ。例えば、自民党奈良県第二選挙区支部の2024年の政党交付金の収支報告書には次のような記載がある。

740万円余が高市首相個人に寄付されているというものだ。政党から政治家個人への寄付は政治資金規正法の適用外となっており、また政治家個人は受け取った寄付について報告する義務はないので、これ自体は違法な行為ではない。ただし、高市首相が政党支部から受け取った740万円をどう使ったかは明確ではない。
因みに政党交付金の収入には3300万円と記載されており、これは自民党本部から得た資金をそのままこちらに記載していると考えて良いだろう。
前述の通り高市首相自身が「一切使用することはありません」と明言している以上、カタログギフトの約945万円については政党交付金の収支報告書にではなく、支部の収支報告書に記載されることになる。そうであれば問題無いという指摘が出ることは予想できる。しかし、その説明で十分とはならない。
例えば政党交付金で支部の事務所経費などを払っていることがその収支報告書でわかるが、そうした支払いを支部の予算枠から払わなくて良い点において支部の経費負担は減るわけで、結果としてカタログギフトを購入する原資をねん出することが可能になっているとも考えられる。つまり、政党交付金を形式的に使用しないことはできるが、仮に「一切使用することはありません」というのであれば、受け取った交付金を自民党本部に全額返却する以外に無い。

ところで、こうした事実関係を現時点で確認することはできない。このカタログギフトの約945万円が記載された収支報告書が提出されるのは2027年であり、それが公表されるのは同年11月になるからだ。こうした公表の遅さも法の問題として指摘されている。
問題点を指摘してきたが、最後のもう1つ。この記事はファクトチェックの原稿の形式をとっているが、ファクトチェックの記事ではない。高市首相が主張した「法令上も問題無いもの」をファクトチェック記事にすれば、「正しい」と指摘して終わるものになるだろう。しかしそれではこの問題の本質は見えてこない。この問題の本質とは何か。それは、法律を作る国会議員である高市首相が、かねてより不備を指摘されている政治資金規正法を盾に自身の行為を正当化している点にある。高市首相は就任後に行われた2025年11月26日の党首討論で政治資金規正法の改正についての質問に「そんなことより(衆院)定数削減を」と発言するなど、政治資金規正法の改正を軽視するかのような発言もしている。
高市首相は後にこの発言については陳謝しているものの、この法律の問題に向き合う姿勢は示していない。こうした中で、一般の人には理解できない総額1千万円近い贈答品を公金から支出して購入し、「法令上も問題無いものと認識を致しております」の一言で切り抜けることは許されてはならない。これは誰が首相であろうとも、政党、立場がどうであろうとも、明確にされなければならない点だ。

