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小池都政 公約検証[9] 女性活躍政策は効果を上げたか?

小池都政 公約検証[9] 女性活躍政策は効果を上げたか?

「ガラスの天井を突き破り」女性初の都知事に就任した小池百合子氏。彼女自身が政策を体現する存在ともいわれている。4年前に掲げた女性政策に関する公約は、漠然としたイメージであり、公約というよりキャッチフレーズだったが、「女性活躍」推進と解釈して、検証を行った。(西村健)

検証対象の公約内容

女性が健やかに希望を持って、生き、学び、働き、愛し、子供を産み、育む社会を実現する。
2016年都知事選の公約「ダイバーシティ」(1)

小池都政検証シリーズについて

検証

東京都管理職の女性割合20%は目標達成

第一に、おひざ元の公的部門から見てみる。内閣府の「女性職員の活躍に関する各種情報の公表状況」のデータ、知事部局に限定してみると

・管理職の女性割合:公表あり、数値目標あり、2019年3月時点で20.0%と目標達成
・各役職段階の職員の女性割合:公表なし、数値目標なし
・取組内容:女性管理職の経験やノウハウの共有、各種支援講座の実施

といった状況である。

都は、女性活躍推進施策の数値目標として基本になっている「管理職の女性割合」を設定して進行管理を行っており、「20 %」という数値は他道府県と比較すると、それなりに高い数値と言える(以下図参考)。

(内閣府「女性職員の活躍に関する各種情報の公表状況」より)

管理職の中でも、特に局長級(理事)は2016年の3.0%から2019年の7.4%へと2倍以上増えていた。また、会計管理局長であった猪熊純子さんを副都知事に任命するなど女性を登用した実績もある(22年ぶり)。

ただ、局長級以外の管理職は、階層別にみても、小池知事の就任前から増加傾向にあり、小池知事の就任によって増加傾向に大きな変化が生じたとまでは言えないだろう(以下のグラフ)。

(東京都生活文化局、東京の男女平等参画2020のグラフより)

管理職以外の女性職員の割合も、ほぼ横ばいで推移している(以下の表参照)。

東京都ホームページの資料より

様々な女性活躍推進イベントを実施

第二に、都政としての具体的な取組みレベルでは、東京都男女平等参画推進総合計画(東京都女性活躍推進計画、東京都配偶者暴力対策基本計画から構成)を2017年3月に策定し、様々な女性活躍推進事業を展開している。

東京都女性活躍推進白書」を策定したり、特に、啓発の意味で「東京都女性活躍推進大賞」のようなものに都知事が参加したり、女性活躍TOKYO懇話会を開催したり、都度大きなアピールを狙っている。その成果は測定できないものの、公約で掲げた女性活躍を推進する取り組みはしている。

あるイベントで都知事は「できない理由を探すよりも、どうやったらできるかを探すことに喜びを感じるんです」と発言して報道されるなど、その発言のアナウンス効果は、これまでそうした発言が政治家から語られることもなかったという意味では絶大と言えよう。

民間企業の女性登用に大きな変化なし

第三に、東京都における民間企業の女性割合を見てみよう。「東京の男女平等参画データ2020」によると、女性管理職を有する事業所の割合は、「令和元(2019)年度に係長相当職で 54.4%、課長相当職で56.4%、部長相当職で 32.6%、役員相当職で 21.7%」となっている。小池都政の前と後で大きな変化は見られない(以下のグラフ)。

(東京都生活文化局、東京の男女平等参画2020グラフより)

最後に、東京都における女性の活躍度についての各指標を以下にまとめておく。

●「希望を持って、生き、学び」→女性の大学進学率は69.51%とトップレベル
●「働き」→所定内給与額の女性の男性に対する割合は令和元(2019)年には 73.3%と男女間の格差は緩やかに縮小しているものの、全国74.3%と比較して相対的に低い(つまり、男女の給与に差がある)
●「愛し、子供を産み」→合計特殊出生率は1.2と全国と比較して相対的に低い(つまり、少子化)
●「育む」→育児休業取得率は男性11.8%、女性95.6%。全国と比較して相対的に高いが、待機児童問題は解決していない。

結論

公約内容はぼやっとしていて、日本社会の課題に取組みます!というレベルの記載しかない。また、一部の数値が向上したり、全国と比べて相対的に良い数値とはいっても、東京都のもともとの数値ゆえでもあるし、メディアや社会的なムーブメントもあったため、小池都政の取組の成果なのかどうかは判別しにくい。

様々な課題はあるが、積極的に施策を進めたことは認められ、都の管理職の女性登用は一定の進展があったので、この公約についての小池都政の取り組みは「良」と評定した。

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