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小池都政 公約検証[7] 「島嶼での命と安全を守る」で何をしたのか

小池都政 公約検証[7] 「島嶼での命と安全を守る」で何をしたのか

東京都の小池百合子知事は4年前の選挙公約で「環境に配慮しつつ、島嶼での命と安全を守る」という公約を掲げていた。具体性に欠ける公約だが、都議会の所信表明で言及した「島嶼での災害対策」についても、知事就任前の計画が進められただけだった。(楊井人文)

検証対象の公約内容

環境に配慮しつつ、島嶼での命と安全を守る。
2016年都知事選の公約「スマートシティー」(7)

小池都政検証シリーズについて

検証

まず、東京都の島嶼(とうしょ)について確認しておきたい。東京都の島嶼は伊豆諸島と小笠原諸島で構成される。このうち民間人が暮らすのは、伊豆諸島9島(23,469人)、小笠原諸島2島(3,022人)、合計11島(26,491人)である(2019年の東京市町村自治会報告書より)。

小池氏が就任後の所信表明で、公約に掲げた島嶼の「命」「安全」に関わる施策について述べた部分を調べると、次のような発言があった(平成28年第三回都議会定例会知事所信表明)。

多摩・島しょ地域の特性を踏まえた災害対策も忘れてはなりません。土砂災害については、斜面の崩壊対策、警戒区域指定による避難体制の整備など、ハード・ソフトの両面から取り組んでまいります。また、土砂崩れや大雪で道路が寸断されることによる地域の孤立化を防ぐため、ダブルルートの確保も進めてまいります。津波のおそれのある島しょ地域では、津波到達までに避難が困難な港における避難施設の整備や、安全な場所への誘導標識の設置などを推進いたします。(太字は筆者)

既存事業は進めてきたものの、小池都政の独自策が不明

2019年3月までに、島しょ部の土砂災害防止法に基づく「土砂災害警戒区域」等の指定が完了した。この指定により、警戒避難体制の整備、ハザードマップの配布などの対策が行われることになった。

伊豆諸島の一つである神津島では、2港を結ぶ都道のダブルルート化の工事が今年2月に完了した。ただ、これは小池知事就任前から整備が進められてきたもので(事業期間は平成23年度から)、小池氏による実績とは言い難いだろう(就任前の2016年4月に一部開通、大島支庁発表)。父島でも、都道の未整備区間のルート設定について検討が進められ、2018年にルートの合意に至ったが、整備は完了していないようだ。

伊豆大島の岡田港では、2019年に避難施設が完成し、小池知事も完成式典の出席していた。東京都港湾整備部に問い合わせたところ、他の3つの避難施設も完成した。ただ、いずれの整備計画も舛添要一前知事時代に策定された「東京都長期ビジョン」(2014年12月)で盛り込まれていたもので、小池都政になって始まった事業ではない。つまり、小池知事が実現したものとは言い難い。

小池氏自身「実績」をアピールしたページでも、「島しょの命と安全」にかかわる実績については何も記述がなかった。

結論

島嶼での災害対策として港の避難施設の整備などに取り組んできた点は「島嶼での命と安全を守る」につながるものだが、小池都政前に決まった計画通りに進めてきただけのようだ。独自の取り組みの成果が不明で、公約があまりに漠然として具体性に欠ける点も考慮し、「評定不能」とした。

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