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小池都政 公約検証[16] 都独自の給付型奨学金を拡充し、英語教育を徹底したか?

小池都政 公約検証[16] 都独自の給付型奨学金を拡充し、英語教育を徹底したか?

小池百合子都知事が2016年の立候補時に掲げた「都独自の給付型奨学金を拡充し、英語教育を徹底する」という公約。その実施状況を調べたところ、給付型奨学金の新設や小学校英語教科の先行実施などが行われていたことが確認できた。(楊井人文)

検証対象の公約内容

都独自の給付型奨学金を拡充し、英語教育を徹底する。
2016年都知事選の公約「ダイバーシティー」(8)

小池都政検証シリーズについて

検証

独自の給付型奨学金制度を導入

小池氏の知事就任後、東京都では、新たな教育施策大綱を策定(2017年1月)。その中に「誰もが安心して学び、持てる可能性を最大限伸ばすことができるよう、都独自の給付型奨学金制度を創設します」との方針が盛り込まれた。

その方針通り、東京都では独自の給付型奨学金制度が導入されている。低所得家庭の都立・国公立高校生を対象に、英検の費用など「選択的教育活動に参加するための必要な経費」を保護者の代わりに都が負担する制度だ。これとは別に、東京都には「奨学のための給付金事業」というものが小池知事就任前に導入されているが、これは教科用図書購入費など「授業料以外の教育に必要な経費」を支給するもので、給付対象が異なるため、「拡充」と言ってもいいだろう。

私立高校の無償化も導入

給付型奨学金制度とは異なるが、私立高校の無償化も段階的に適用範囲を拡大している。小池氏は「実績」としてこちらを強くアピールしている。

2017年度:世帯年収760万円未満世帯について私立高校の授業料を無償化
2018年度:通信制高校を対象に追加
2020年度:世帯年収910万円未満世帯に対象を拡大

「英語教育の徹底」はどうだったか

英語教育については、2017年策定の教育施策大綱で、次のように掲げていた。

方針1 「生きた英語」を学ぶ環境を充実します
○ 指導力のある教員による小学校英語教科化の先行実施により、子供たちの英語力を身に付ける基盤となる力を早期に育成します。
○ 中学校英語において、実践的な英語力を育成する効果的な少人数・習熟度別指導をより一層推進します。
○ JETプログラムの活用等により、学校において授業以外でも日常的に子供たちが生きた英語に触れる場を高校に創設し、英語によるコミュニケーション能力を向上させます。
○ 高校において、実践的な英語力を身に付けるためのマンツーマンのオンライン英会話学習を推進します。
○ 小・中・高校の教員の英語力・指導力の向上を図る取組を推進します。
○ 子供たちに海外生活や異文化を疑似体験させ、英語の楽しさや必要性を体感させる「英語村(仮称)」を開設します。

まず、小学校の英語教科化は、文部科学省の方針として2020年度からスタートすることになっていたが、東京都では2016年から推進地域として10地区を指定。教員研修などの準備を進め、全ての地域でないが、英語教科化の先行実施を行っていた(世田谷区など)。

中学校の少人数指導に関しても、東京都教育委員会が2017年にガイドラインを定め、それに則った英語教育が実施されていると見られる。

JET活用に関しては、外国人指導者の配置の拡充などの取り組みはなされたようだ。

「英語村」構想は、小池知事就任前の2016年に構想が練られたものだが、実現している。2018年9月「TOKYO GLOBAL GATEWAY」が開設された。

まとめると、英語教育の推進に力を入れてきたことは認められるが、「小学校の英語教科先行実施」など、一部実現していないこともある。

結論

新たな給付型奨学金は公約通り導入され、教育施策大綱で定めた英語教育強化の取り組みも行われてきたことは評価できる。よって、本公約の評定は「優」とした。

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