小池氏が4年前の選挙公約で「ダイバー・シティ」の9番目として掲げたのは「『ペット殺処分ゼロ』を実現」である。「ペット殺処分ゼロ」は「7つのゼロ」公約の一つでもあり、東京都や小池氏はこの公約は達成したと主張しているが、実際はどうか。(田島輔)
検証対象の公約内容
「ペット殺処分ゼロ」を実現。
(2016年都知事選の公約「ダイバーシティー」(9))
検証
小池氏は当選後、「2020年までの殺処分ゼロを目指して着実に進んで、歩んでまいりたいと思います」と語り(平成28年第四回都議会定例会知事所信表明)、具体的な方策として、①引取数減少、②譲渡機会の拡大、③動物愛護相談センターの機能の強化を挙げていた(都民ファーストでつくる「新しい東京」~2020年に向けた実行プラン~)。
東京都独自の定義で「殺処分ゼロ」と発表
東京都は、2019年度の動物殺処分ゼロの目標を掲げ、2018年度には「殺処分ゼロ」を達成したと発表している。
しかし、東京都では、保護・収容された動物の致死処分を、次の3つの分類のうち③だけを「殺処分」と表現しており、①②の殺処分はゼロになっていない(東京都福祉保健局、2020年3月「保護・収容動物の適正な取扱い・譲渡の促進に向けたガイドブック」第5章より)。
②引取り・収容後に死亡したもの
③それ以外の致死処分
もっとも、上述の「殺処分」の定義は、小池都政以前の2015年度から使用している定義だが、東京都独自のものだ(東京都福祉保健局健康安全部環境保健衛生課に確認)。
国の定義に従えば未達成
国の定義では、治癒の見込みがない病気や攻撃性がある動物の処分も含め、上記の①と③を「殺処分」と表現している(環境省「動物愛護管理をめぐる主な課題への対応について(論点整理)」p.25、動物愛護管理行政事務提要の「殺処分数」の分類)。
この国の定義に基づけば、東京都では2018年度も「動物福祉等の観点から行った致死処分」が146件存在している。
他方、福井県では、上記①に該当する、治癒の見込みがない病気や攻撃性がある動物も含めて「殺処分ゼロ」を達成している(環境省作成の「犬・猫の引取り及び処分の状況」・「負傷動物等の収容及び処分の状況」)。神奈川県も、負傷動物ではない、犬・猫については、①も含めた「殺処分ゼロ」を実現している。そのため、「動物福祉等の観点から行う致死処分」をゼロとすることも不可能ではないだろう。
返還・譲渡の割合も微増
「殺処分」を減少するためには、東京都が引き取った動物を譲渡する機会を拡大する必要がある。
小池氏は、情報サイト「ワンニャンとうきょう」の開設や、負傷動物の譲渡を受けた団体に対し物品を提供することで、動物の譲渡機会の拡大を図っていることを、自身の「実績」として誇っている。
しかし、小池都政以前と小池都政以後の犬及び猫の返還・譲渡率を比較すると、2015年が54.8%(2015年)であるのに対し、57.1%(2016年)、59.4%(2017年)、55.2%(2018年)と、譲渡・返還率の増加率は微増であった(前出の東京都福祉保健局のガイドブック )。
したがって、小池都政において、動物の譲渡機会拡大のための施策を行っていることは確かであるものの、大きな成果があったとまではいえない。
結論
小池都政下においては、動物福祉等の観点から行う致死処分・引取り・収容後に死亡したものを除けば「殺処分ゼロ」を達成しているが、国の「殺処分」の定義に従えば、達成していない。この点、国の定義に従って「殺処分ゼロ」を達成した他県とは異なる。また、小池都政下における譲渡機会の拡大は微増に留まっている。
よって、東京都での「殺処分ゼロ」達成の発表はミスリードである上、譲渡機会の拡大も大きな成果はみられないため、評定は「可」とした。